労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  北海道労委令和元年(不)第9号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年4月10日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、組合が、会社に対し、組合員A2、A3及びA4に係る未払賃金の支払等を交渉事項とする団体交渉の申入れを、令和元年8月7日付け書面で行ったところ、会社が上記申入れに対し何ら回答をせず団体交渉に応じなかったことが、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案である。
 北海道労働委員会は、会社に対し、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、団交応諾とともに、文書の交付を命じた。 
命令主文 
1 被申立人は、申立人が令和元年8月7日付けで申し入れた申立人組合員A2、A3及びA4に係る未払賃金の支払等を交渉事項とする団体交渉を拒否してはならず、これに速やかに応じなければならない。
2 被申立人は、次の内容の文を、日本産業規格A4判縦長白紙にかい書で明瞭に記載して、申立人に対し、本命令書写しの交付の日から10日以内に交付しなければならない。
 当社は、貴組合の申入れを拒否し、団体交渉に応じませんでした。
 当社の行為は、北海道労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認定されましたので、今後、このような行為を操り返さないようにします。
 令和 年 月 日(交付する日を記載すること)
 組合
  執行委員長 A1 様

会社
 代表取締役 B  
判断の要旨  労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為の成否(争点)
1 本件では、組合員らが、元年7月25日に「会社が引越しする」などと告げられ、その後、賃金の支払がなかったことから、同年8月5日に組合に加入し、同月7日に組合が要求書等を会社及びB代表宅宛に郵送し、団体交渉の開催等を求め、その要求書等は、同月13日までにはそれぞれに配達されたことが認められる。
2 以上のことから、少なくともB代表は、前記1の「会社が引越しする」などの言渡しや賃金未払から近接した時期に、要求書等の内容を認識していたことが窺われる。
 したがって、要求書により、組合から会社に対して時機に後れず合理的な期間内に団体交渉の申入れがなされたと認めることができる。
3 組合の会社に対する要求書に記載された交渉事項は、労働の報酬に関する事項であり、義務的交渉事項であることは明らかである。
4 本件では、前記2及び3のとおり組合から会社に対して、義務的交渉事項について時機に後れず合理的な期間内に本件団交申入れがなされたものと認められ、会社は、正当な理由がない限り、使用者として団体交渉に応諾する義務を負う。
 しかしながら、本件団交申入れに対する会社の対応は、申入れに対し一切応答することなく、また、組合からB代表の携帯電話への電話についても返答しなかったこと、さらに、要求書で指定した日時及び場所に現れなかったことが認められ、こうした会社の対応は、組合の団体交渉の機会ばかりでなく組合が団体交渉の実施を説得する機会すら奪っていることは明らかであるから、団交拒否に当たる。
5 さらに、本件団交拒否について正当な理由があるかどうかを検討すると、組合の本件団交申入れに係る交渉事項が義務的交渉事項に該当することは前記3のとおりであるとともに、会社は、審査の過程で本件団交拒否について正当な理由があるという主張や立証をしておらず、本件審査で採用された証拠及び審査の全趣旨を考慮しても、本件団交拒否に正当な理由があると認めることはできない。
 以上によれば、本件団交拒否は、法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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