労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成29年(不)第2号
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年2月4日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、組合と会社との間において、以下の点が争われた事案である。
(1)会社が、A1に対し、平成28年12月9日付休職通知を送付して休職期間満了時に自然解職となる休職を命じたことが組合員であるが故の不利益取扱いに、29年1月31日付休職期間満了通知を送付したことが組合員であるが故の又は不当労働行為救済申立てをしたが故の不利益取扱いにそれぞれ当たるか。(争点1)
(2)会社が、A1に対し、賃金を低下させた事実が認められるか。認められる場合、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか。(争点2)
(3)会社が、下記①ないし④を行った事実が認められるか。認められる場合、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか。(争点3)
①会社はA1が起こした事故について2種類のポスター( 「本件ポスター」)を作成し、社内に掲示した。
②B1常務は、担当車両変更を求めるA1の申入れを無視した。
③B3所長代理はA1に対し、乗務停止処分を命じた。
④B1常務は、A1による乗車拒否のDVDを作成して映像を公開し、事故審議会の開催を決定した。
(4)下記①ないし⑧の事実が認められるか。認められる場合、会社による支配介入に当たるか。(争点4)
①C3がA1に対し電話を掛け、組合活動をやめるよう求める内容の話をした。
②C2は、C4に対し、俺は組合を潰すためにここに来たなどと発言した。
③C2はA1に対し、乗務員控室において組合活動をやめるよう求める内容の話をした。
④C2はA2に対し、組合脱退届を書かせ、組合活動をさせないようにした。
⑤C2はA3の自宅において同人に暴行した。
⑥B2所長代理は、全員懇談会後にA1が団体交渉内容を説明しようとしたことを制止した。
⑦B1常務とC2は、A5に対し、組合に情報を流すなという内容の発言をした。
⑧会社は、C1に対する休職通知について通知の日付を遡って作成するなどして、争点1の不当労働行為を隠蔽した。
 東京都労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文  本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 休職に関する不利益取扱い(争点1)
ア 休職通知の送付について
(ア) 就業規則では、業務外の傷病により欠勤が引き続き1か月を超えたときは私傷病休職として休職が命じられ、休職期間は1か月と定められている。A1は、遅くとも11月10日から欠勤するようになり、会社は欠勤から1か月が経った12月9日にA1に休職通知を送付していることから、会社の対応は就業規則の定めに従ったものといえる。
(イ)会社が(やむを得ない対応であった)C1に対して欠勤から1か月経過後も休職通知を送付しなかったという事実のみをもって、会社が長期欠勤者に休職を命じていなかったと認めることはできないといわざるを得ず、会社がA1に対してのみ恣意的に就業規則に従い休職を命じたと認めることはできない。
(ウ)したがって、会社が、A1が組合員であることを理由に同人について非組合員と異なる取扱いをしたと認めることはできず、会社がA1に対し休職通知を送付して休職期間満了時に自然解職となる休職を命じたことは組合員であるが故の不利益取扱いに当たらない。
イ 休職期間満了通知の送付について
(ア) 休職期間が満了した場合の取扱いについて、就業規則では、休職期間中に乗務員が復職願及び診断書を提出し、会社が就業可能と認めたときには復職が命じられ、休職期間満了までに復職を命じられないときには自然解職になると定められているところ、A1は、29年1月9日の休職期間満了時まで復職願を提出しなかったことから、1月9日をもって退職となった。会社が1月31日に送付した休職期間満了通知は退職となった事実を通知するものであり、同通知の送付によりA1に退職の効果が生じるものではない。
 したがって、休職期間満了通知の送付自体が不利益取扱いとなることはない。
(イ) したがって、会社が組合に対し休職期間満了通知を送付したことは、組合員であるが故の又は不当労働行為救済申立てをしたが故の不利益取扱いには当たらない。
2 賃金に関する不利益取扱い(争点2)
ア ①無線委員会からの排除について
 組合は、会社がA1を無線委員会の説明会から排除し無線委員会に加入させなかったため、同人は無線業務を行うことができず賃金が低下しており、これは組合員であるが故の不利益取扱いに当たると主張する。
 確かに、A1以外に無線委員会の説明会への参加を希望して参加できなかった者はいなかった。
 しかし、会社が説明会へのA1の参加を認めなかったのは、無線委員会の説明会に先立ち、会社が加入のための書類に氏名等を記載することを全乗務員に求めたところ、A1だけが署名を拒否したためであり、A1も他の乗務員と同様に署名をすれば説明会に参加できる状況にあった。もっとも、A1が説明を聞いてから加入の書類に署名すると述べたのは理解できるところであり、他方、署名してからでなければ説明会への参加を認めないとした会社の対応には疑問を感じざるを得ない。しかしながら、無線委員会加入後の脱退が認められていなかったとの疎明もないし、会社はA1に対してのみこのような対応をしたのではなく、その場にいた全乗務員に対しても同様の対応をしていることから、会社が組合員であることを理由にA1の参加を拒否したとまで認めることはできない。
 したがって、4月23日に会社がA1を無線委員会の説明会に参加させず、同委員会に加入させなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たらない。
イ ②労働時間の規制について
 組合は、B1常務が5月27日頃にA1に対して始業点呼後19時間以降の営業を禁止LたためA1の賃金が低下しており、これは組合員であるが故の不利益取扱いに当たると主張する。
 しかし、会社はA1に対し、成城でしか営業しないのであれば出庫から19時間後には営業をやめて会社に向かわなければ会社が定める20時間以内の帰庫時間には間に合わないだろうと指摘しただけであり、A1に対して始業点呼後19時間以降の営業を禁止したものではない。
 また、A1は、日頃、会社から車で1時間程度の距離にある成城学園前駅付近で営業することが多く、最後まで同駅付近で営業して帰庫時間に遅れることがあり、5月27日にはA1は同駅付近で営業して1時間40分も遅れて帰庫している。それに対して会社が指導することは当然であるし、その内容も特に不合理なものではない。そして、会社は、帰庫時間に遅れた乗務員に対して始末書を提出させるなど、帰庫時間遅れについて他の乗務員にも指導しており、A1に対してだけ殊更指導したとも認められない。そうすると、会社のA1に対する指導は、同人が組合員であることを理由になされたと認めることはできない。
 したがって、会社がA1に対して始業点呼後19時間で営業を打ち切るように命じた事実は認められず、会社がA1に対して出庫から19時間後には営業をやめて会社に向かわなければ帰庫時間には間に合わない旨の指導をしたことも、組合員であるが故の不利益取扱いに当たらない。
ウ ③代車要請命令について
 組合は、会社がA1に対して、乗客の目的地が遠距離などのために帰庫時間に遅れることが予想できる場合には会社に対して代車を要請するように命じて就労を制限したために、同人の賃金が低下しており、これは組合員であるが故の不利益取扱いに当たると主張する。
 確かに、5月27日、B1常務は、A1に対し、帰庫遅れが予想できる場合は会社に連絡して代車を要請するようにと述べている。しかし、B1常務がA1に対して代車を要請するように述べたのは、A1が帰庫すべき時間から1時間40分遅れて帰庫したからである。労働時間に関する就業規則等の定めに大幅に違反した乗務員に対して会社が指導するのは当然のことであるし、B1常務の指導の内容も不合理なものとはいえない。また、前記イでも述べたとおり、会社は帰庫時間遅れについて他の乗務員にも指導しており、A1に対してだけ殊更指導したとも認められない。そうすると、B1常務がA1に対して代車を要請するように述べたことは、同人が組合員であることを理由になされたと認めることはできない。
 したがって、B1常務がA1に対して代車を要請するように述べたことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たらない。
エ ④休憩時間の取得指示について
 組合は、会社はA1に対してのみ休憩時間について他の乗務員とは異なる指示を行ったと主張するが、A1に対して指示した事実は認められない。
オ ⑤5月分の賃金について
 28年5月分の賃金に係る申立てについては除斥期間が問題になっているところ、組合が、28年5月の研修時間が労働時間に算入されていないこと及び同月の労働時間が短く記録されていることを初めて主張したのは、29年6月12日に当委員会に提出した準備書面(3)においてである。したがって、組合の28年5月分の賃金に係る申立ては、29年6月12日にされたと判断せざるを得ない。そして、28年5月分の賃金の支払日は同年6月10日であり、組合の主張する不当労働行為の行為日を各事実の中で最も遅い5月分の賃金支払日であると考えたとしても、5月分の賃金に係る申立ては行為の日から1年を経過している。
 したがって、この点は本件の審査対象とはならない。
カ ⑥7月分の賃金について
 会社が研修や適性検査の時間を基本給計算の際に用いられる実労働時間に算入しなかったことは問題である。しかし、その当否は別にして、会社は全乗務員を対象にこの方針を採っているのであるから、A1が7月2日に受けた適性検査の時間が労働時間に算入されなかったのは、同人が組合員であることとは関係がない。
 したがって、会社がA1に対し、7月2日に行われた研修の時間を労働時間に算入せず、それに基づき算定した7月分の賃金を支払ったことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たらない。
キ ⑦C2の駐車場待機について
 組合は、会社がC2を駐車場に待機させたため、A1は身の危険を感じたと主張するが、8月21日に会社がC2を駐車場で待機させた事実は認められない。
ク ⑧サングラスに対する指導について
 組合は、9月10日にB2所長代理がA1を25分間叱責し続けたためA1の出庫時間が通常よりも1時間ほど遅延したと主張するが、9月10日にB2所長代理がA1に対しサングラスを着けていたことを注意したためA1の出庫時間が1時間遅れた事実は認められない。
ケ まとめ
 以上のとおり、⑤5月分の賃金については本件の審査対象とはならない。
 また、④休憩時間の取得指示、⑦C2の駐車場待機及び⑧サングラスに対する指導については、組合が主張する事実自体が認められない。①無線委員会からの排除、②労働時間の規制、③代車要請命令及び⑥7月分の賃金については、会社の行為は組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとはいえない。
3 その他の不利益取扱い(争点3)
ア ①本件ポスターの掲示について
 組合は、会社が本件接触事故について本件ポスターを掲示したことは組合員であるが故の不利益取扱いに当たると主張する。
 本件接触事故は、A1が会社から、接触した、かすった等は全て交通事故であり、交通事故を起こした時はすぐに会社へ電話すること等が記載された本件カードを受け取り、説明を受けた当日からの勤務時に起こしたものであり、 それにもかかわらず、A1はその場で会社に連絡をしなかった。それゆえ、会社がこの事実を重く受け止め、本件接触事故について、緑十字ポスターにおける記載を枠が多少他の枠にはみ出る形で記載し、未報告の事実を問題視した内容の別のポスターを掲示したりしたとしても、その表現方法が適切とはいい難い面はあるものの、やむを得ない面もあるといわざるを得ない。また、別の乗務員による5月3日の事故は、人にけがをさせる危険はあったものの実損が生じたものではなく、その場で警察にも連絡されていることから、本件接触事故について、会社が未報告の事実を重視して別の乗務員の事故と異なる取扱いをしたとしても、それが不合理であるとまではいえない。
 さらに、本件接触事故と同様の未報告の物損事故について、会社がA1と非組合員とで異なる取扱いをしていたという事実の疎明もない。
 以上を考慮すると、会社が組合員であるA1を嫌悪して本件ポスターを掲示したと認めることはできないといわざるを得ず、会社が本件ポス ターを掲示したことは組合員であるが故の不利益取扱いには当たらない。

イ ②担当車両変更申入れについて
 組合は、A1が担当車両をプリウスからクラウンに戻すように申し入れたがB1常務がこれを無視したと主張するが、28年9月24日頃にB1常務が担当車両の変更を求めるA1の申入れを無視した事実は認められない。

ウ ③乗務停止処分について
 A1に対する会社の対応は、10月26日のA1の乗客対応や、問題点を指摘されてもなお自分は間違っていなかったなどと述べるその後のA1の態度を踏まえて行われたものであり、その内容も不合理であるとはいえないことから、A1が組合員であることを嫌悪してなされたとは認められない。
 したがって、B3所長代理がA1に対し乗務停止を指示したことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たらない。

エ ④事故審議会の開催について
(ア) 組合は、A1が組合員であるという理由で、会社は10月26日のA1の乗客対応についてD V Dを作成して班長らに公開しており、これは不利益取扱いに当たると主張する。
 しかし、会社がD V Dを班長らに見せたのは、10月26日のA1の乗客対応を受けて、今後の対応を検討するためのものであり、A1が組合員であることを嫌悪してなされたものとは認められない。
 したがって、会社が10月26日のA1の乗客対応についてD V Dを作成して班長らに見せたことは組合員であるが故の不利益取扱いに当たらない。
(イ) 組合は、会社が事故審議会の開催を決めたことも組合員であるが故の不利益取扱いであると主張する。
 しかし、前記ウで述べたとおり、10月26日のA1の乗客対応には問題があったといわざるを得ないところ、同人は自身の対応は間違っていなかったと述べ、同じことが起きた場合にどうするか尋ねられても単純な話ではないとだけ答えて明確な回答をしていない。会社が問題視している乗務員の行為について、本人が問題ないと明言する状況の中で、会社としてどのように対応すべきか管理職だけではなく管理職を補佐する立場の従業員である班長なども交えて協議することは、会社の対応としてあり得るものであり、事故審議会の開催が組合員であることを理由に決定されたとまで認めることはできない。
 したがって、会社が事故審議会の開催を決定したことは組合員であるが故の不利益取扱いには当たらない。

オ まとめ
 以上のとおり、②担当車両変更申入れについては、組合が主張する事実自体が認められない。①本件ポスターの掲示、③乗務停止処分及び④事故審議会の開催については、会社の行為は組合員であるが故の不利益取扱いに当たらない。

4 支配介入 (争点4)
ア ①C3班長からの電話について
(ア) 組合が分会ニュース第1号を発行した5日後の4月7日に、C3班長はA1に電話し、仲間にビラを配ったりすることをしないように、また新しい会社になってみんな一生懸命やろうというところに水を差すようなことをしないようになどと述べている。かかるC3班長の発言は、A1が組合に加入し分会ニュースを発行したことに対してやめるように求めるもので、組合活動に介入する発言であるといえる。
(イ) 班長は、従業員の選挙によって選出され、従業員の意思を代弁する立場にあり、管理職の業務を補佐する役割も併せ持つてはいるものの、会社の職制としての立場にあったということはできない。したがって、C3が班長であったということから直ちに同人の電話が会社の指示によるものだと認めることはできない。また、C3班長が、会社の運営方針に反対する内容の分会ニュース第1号を見て、個人的に電話でA1に抗議したとしても不自然とはいえないし、 同人の発言内容をみても会社からの指示があったことをうかがわせるものはない。他に、会社がC3班長に指示等をしたと認めるに足りる疎明もないことから、C3班長の電話が会社の指示によるものであったと認めることはできない。
(ウ) したがって、C3班長がA1に電語を掛けて組合活動をやめるよう求める内容の話をしたことは、会社による支配介入に当たらない。

イ C2の発言及び行動について (②③④⑤について)
(ア) ②ビラ配布の際のC2の発言について
 C2は、4月23日に組合がビラ配布をしていた際に、組合とかそういうものを潰すために来ている、組合は作らせないなどと述べている。このC2の発言は、組合組織を潰すことを予告し組合の弱体化を図るものであり、組合の組織及び運営に対する介入行為といえる。
(イ) ③乗務員控室におけるC2の発言について
 C2は、7月22日に乗務員控室でA1と話をした時に、会社が不当労働行為を行っているとA1が主張することで会社が乗務員の時間管理などを締め付けるようになっており、A1の活動は邪魔になるなどと述べ、A1が組合をやめろと言いたいのか尋ねるとそうだよなどと答えている。このC2の発言は、A1に対して組合活動をやめること及び組合を脱退することを求めるものであり、組合の組織及び運営に対する介入行為といえる。
(ウ) ④A2の組合脱退について
 組合は、C2がA2に組合脱退を強要したと主張するが、C2がA2に組合脱退を強要した事実は認められない。
(エ) ⑤A3に対する暴行について
 組合は、C2がA3に暴行したと主張するが、C2がA3の自宅において同人を暴行した事実は認められない。
(オ) 会社による支配介入といえるか
 組合は、②ビラ配布の際のC2の発言はB1常務の監視の下で行われていたこと、③乗務員控室でのC2の発言は会社幹部しか知り得ない行政機関の対応等の情報が含まれているとともにB1常務の監視下で行われていたことなどから、上記②③のC2の発言は会社の指示によるものである旨主張する。
 C2はB1常務の面前でも組合に対する介入発言をしたことがあったこと、C2は組合への介入行為を4月23日及び7月22 日の二度行っていること、C2が入社直後からこれらの言動を行っていること等を考えると、C2の言動に会社の関わりがあったのではないかとの疑念もあるが、会社がC2に対してかかる介入行為を指示した又は黙認していたと認めるに足りる具体的な疎明はないといわざるを得ない。よって、C2の上記②及び③の発言が会社の指示又は黙認の下によるものであったとまではいえず、会社による支配介入と認めることはできない。
(カ) 小括
 したがって、 ④C2がA2に組合脱退を強要した事実及び⑤C2がA3を暴行した事実は認められず、②C2がC4に対し俺は組合を潰すためにここに来たなどと発言したこと及び③C2がA1に対し乗務員控室において組合活動をやめるよう求める内容の話をしたことは、事実は認められるものの、会社による支配介入には当たらない。

ウ ⑥団体交渉内容の説明妨害について
 会社の事務所で行われた全員懇談会終了時にA1が、出席していた乗務員に対して団体交渉で話した内容について説明しようとしたところ、B2所長代理はこれを止めている。会社では、会社の施設を利用して会社の許可なく労働組合活動をすること、演説等及びそれに準ずる行為を会社の許可なく行うことは就業規則上禁じられているところ、A1が事務所内で団体交渉内容を説明することについて事前に会社の許可を得ていた事実は認められない。B2所長代理は、会社施設内における許可なき組合活動という就業規則上禁じられた行為を止めただけであり、同所長代理がA1の発言を止めたことが支配介入であるということはできない。
 したがって、B2所長代理が全員懇談会後にA1が団体交渉内容を説明しようとしたことを止めたことは、支配介入に当たらない。

エ ⑦A4に対する発言について
 組合は、 会社がA4に対して組合に情報を流すななどと圧力を掛けたと主張するが、B1常務とC2がA4に対し組合に情報を流すなという内容の発言をした事実は認められない。

オ ⑧不当労動行為の隠蔽について
 組合は、会社は休職に関する就業規則の規定をA1に適用するまで他の従業員に適用してこなかったことを組合から追及されることを恐れて、C1に対する休職通知を日付を遡って作成するとともに、C1に退職届への署名を強要し、それによりA1に対する休職通知及び休職期間満了通知の送付という不当労働行為を隠蔽したと主張する。
 確かに、証拠等をみると、会社がC1に対する休職通知を作成した経緯やC1が退職届を作成した経緯に疑問がないではない。
 しかし、前記1のとおり、会社がA1に対して休職通知及び休職期間満了通知を送付したことは不利益取扱いに当たらないことから、会社がC1に対する休職通知の日付を遡って作成したりC1に退職願への署名を強要したりした事実があったとしても、その当否は別として、A1に対する不当労働行為を隠蔽したとはいえず、組合の組織・運営に対する支配介入に当たるということもできない。
 したがって、組合の主張は失当であり、会社による支配介入は認められない。
カ まとめ
 以上のとおり、④A2の組合脱退、 ⑤A3に対する暴行及び⑦A4に対する発言については、 組合が主張する事実自体が認められない。①C3班長からの電話、②ビラ配布の際のC2の発言、③乗務員控室でのC2の発言及び⑥団体交渉内容の説明妨害については、組合主張の事実は認められるものの、会社による支配介入には当たらない。⑧不当労働行為の隠蔽については、組合が主張する事実があったとしても会社による支配介入は成立し得ない。 
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