労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  沖縄県労委平成30年(不)第2号
(福)祐愛会宮古の里不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合・X2組合 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  令和2年3月12日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、法人が、X2組合の執行委員長であるAに対し、平成29年12月28日付けで減給3,407円とする懲戒処分をしたことが、労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するとして、X2組合とその上部団体X1組合が、救済を申し立てた事件である。
 沖縄県労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文  申立人らの請求をいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 本件懲戒処分の労組法第7条第1号該当性(争点1)
(1) 懲戒事由該当性及び相当性について
 Aは、平成29年1月26日、同年2月13日及び同月14日と極めて短期間のうちに連続して就業規則に違反する各非違行為に及んだものである。その実質においても、本件懲戒処分は、介護職としてわきまえるべき当然の諸決定を独善的判断で無視するなどのAの所為を対象とするものであり、そこから窺われる情状は重い。これに対する本件懲戒処分の内容は、1回限り3,407円を減ずるにとどまり、その影響は限定的なものであったと認められる。加えて、法人は、それぞれの非違行為につき、いずれも慎重に複数回にわたって弁明書の提出を求めて、Aに対し十分な弁明の機会を与えている。この点につき、本件懲戒処分を科するに際し、法人は、Aに対して直接に事情聴取をすることなく、書面のやりとりのみで行っていることが手続の相当性に疑念を抱かせる余地がなくもない。しかしながら、面談での事情聴取を拒絶したAにおいて書面によるやりとりを強く希望し、法人がこれに応じたことによるものであるから、相当なものとして是認できる。
 これらを総合すると、減給という本件懲戒処分は、労働者に対し経済的な不利益をもたらす側面は否めないけれども、Aの所為に比して決して重過ぎるということはなく、社会通念上相当な範囲内にあるものというべきである。
(2)本件懲戒処分の不合理性と不当労働行為意思の存否について
 法人は、X2組合が結成された直後にAら組合員を解雇又は雇止めにし、訴訟において不当労働行為と認定され、その後も、Aに対し、降給、賞与不支給といった不利益な処過を繰り返していることからすれば、組合結成以来、組合らと法人との間では対立関係が継続し、本件懲戒処分の時点においても、X2組合と法人との労使関係は必ずしも良好ではなかったといえる。
 もっとも、Aは、就業規則に違反する非違行為を短期間のうちに繰り返し行ってきたものであって、これを理由とする本件懲戒処分は相当なものと認められる。かかる非違行為に対しては、仮にAが組合員でなかったとしても、本件懲戒処分と同様の処分を科すことが想定されるところであり、かつ是認されよう。
 以上から、組合らと法人との関係が必ずしも良好ではなかった事情を考慮しても、本件懲戒処分を不合理ということはできず、不当労働行為意思の存在を認めることはできない。
(3)結論
 以上のとおり、本件懲戒処分は、労組法第7条第1号には該当しない。
2 本件懲戒処分の労組法第7条第3号該当性(争点2)
 上記1のとおり、法人がAの非違行為に対して本件懲戒処分をしたことについては、相当性の範囲内にあり、正当なものと認められることから、X2組合に対する支配介入とはいえず、労組法第7条第3号には該当しない。  
掲載文献   

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