労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成30年(不)第54号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年3月13日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①会社が、組合の組合員1名を解雇したこと、②団体交渉 において、会社代理人弁護士が、組合に不適切な発言をしたこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件であ る。
 大阪府労働委員会は、会社に対し、労組法第7条第1号及び第2号に該当する不当労働行為であるとして、原職復帰及びパック ペイとともに、文書の交付を命じた。 
命令主文 
1 被申立人は、申立人組合員A2に対する平成30年7月26日付け解雇がなかったものとして取り扱い、同人に対し、解雇の日から就労させるまでの間、同人が得られたであろう 賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。

年  月  日
 組合
 執行委員長 A1 様

会社
代表取締役 B
 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1)貴組合員A2氏を平成30年7月26日付けで解雇したこと。(1号該当)
(2)平成30年7月26日に開催された団体交渉において、当社の代理人弁護士らが6月12日の段階では団体交渉の申入れが されていない旨発言したこと及び組合の権限をめぐるやり取りに際して不誠実な対応をしたこと。(2号該当)  
判断の要旨  1 争点1(本件解雇は、組合員であるが故の不利益取扱いに当たる か。)
ア 会社は、平成30年7月26日にA2組合員を解雇したことが認められるところ、解雇がA2組合員にとって不利益取扱いに 当たることは明白である。
イ 会社が解雇理由証明書で示した5つの解雇理由については、A2組合員の勤務態度及び勤務成績が不良であり、かつ、それら が解雇という会社から排斥すべき程度に重大なものであったと認めることができず、したがって、本件解雇には合理的な理由があ るとまではいえない。
ウ 会社は、A2組合員の勤務成績や勤務態度を組合加入前から問題視し、それを理由に退職を求めていたものの、組合が未払い 残業代の支払い要求、パワハラへの抗議、他の社員分の残業代請求と、組合活動を活発化させた時期に本件解雇の予告に踏み切っ たとみるのが相当である。
エ A2組合員の業務内容について、仕事の取上げはパワハラであるとして抗議する組合と、遂行可能で支障がない仕事を任せざ るを得ないとする会社とが、その当時対立していたことは明らかである。
オ 以上のことを総合すると、本件解雇については、会社が解雇理由証明書で示した5つの解雇理由について具体的な疎明がなく、また、会社は、A2組合員の組合加入後、組合活動 が活発化し、組合との関係が対立する中で、本件解雇を行ったとみるのが相当である。よって、会社が平成30年7月26日付け でA2組合員を解雇したことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たり、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為で ある。
2 争点2(30.7.26団交における会社の対応は、不誠実団交に当たるか。)
ア 「6月12日の段階では団体交渉の申入れをされてませんね。」、「6月12日の段階では委員長から団体交渉の申入れとい うのはなされていません。」と述べた会社代理人弁護士C1の発言は、30.3.19団交申入れが30.6.12会社回答書提 出の段階においても維持されていたにもかかわらず、熟慮することなく発せられ、しかも、執行委員長から「代理する権限ないの に団体交渉しとるわけ?」と反論されたことに対して正面から答えず、団交の円滑な進行を妨げる誠実性を欠くものであったとい わざるを得ない。
イ そもそも労働組合は、組合員の労働条件の維持改善等を主たる目的として組織された団体であるところから、組合員の利益を 代表して自らが当事者として活動することができるところ、会社代理人弁護士C2が執行委員長に「労働組合は代理権があるとい うご見解ですか。」と確認したのに対し、執行委員長が「当然や。」と答え、「だから団体交渉してるわけや。」と述べているこ とからすれば、このとき執行委員長が団交の当事者として交渉に当たろうと意図していることは明らかであり、同人が代理人と当 事者又は代理権限と交渉権限について混同して使用している可能性は、会社の代理人弁護士らにも容易に認識できる状況であった といえる。
 そうすると、30.7.26団交における会社の代理人弁護士らの説明は、執行委員長の誤解の可能性を容易に知り得たにもか かわらず、それを整理して団交を進めるべく誠実な説得を尽くしたものとは言い難い。
 さらに、会社の代理人弁護士らの非弁行為に係る発言についても、報酬を得る目的や、業とすることの有無に言及することな く、あたかも弁護士資格のない者が法律事件に関して代理等の法律事務を行うことが直ちに全て非弁行為に当たるかのような、弁 護士法第72条について正確性に欠ける説明を行っており、このことが交渉を妨げる原因となっているといえる。
 以上のことからすると、30.7.26団交において、会社の代理人弁護士らが組合の権限をめぐるやり取りに際し、組合に代 理権はない旨、弁護士資格がない者が紛争に介入すると非弁行為に該当する旨述べた一連の対応は、不誠実な対応であったことは 明らかである。
ウ 以上のとおり、30.7.26団交における、会社の代理人弁護士らによる6月12日の段階では団体交渉の申入れが行われてない旨の発言及び組合の権限をめぐるやり取りの際 の一連の対応は不誠実というほかなく、かかる会社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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