労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成31年(不)第24号
ジャパントラスト債権回収不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社・Y2会社 
命令年月日  令和2年1月21日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、A2に対する、①平成31年1月21日の面談における B2部長の発言、②同月22日の面談におけるY1会社B1社長の発言及び③同月23日の面談におけるB1社長の発言が、それ ぞれ組合の運営に対する支配介入に当たるか否かが争われた事集である。
 東京都労働委員会は、Y1会社に対し、①及び②について支配介入に当たる不当労働行為であるとして、支配介入の禁止ととも に、文書の交付を命じ、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y1会社は、申立人組合の組合員に対し、同組合に加入 したことを非難するなどして、組合の運営に支配介入してはならない。
2 被申立人Y1会社は、申立人組合に対し、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を交付しなければならない。
 年 月 日
組合
執行委員長 A1 殿
Y1会社         
代表取締役 B1
 平成31年1月21日に当社の部長が、同月22日に当社の代表取締役が、貴組合の組合員に対し、貴組合に加入したことを非 難するなどしたことは、それぞれ東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注:年月日は文書を交付した日を掲載すること。)
3 被申立人Y1会社は、前項を履行したときは、当委員会に速やかに文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 平成31年1月21日のB2部長のA2に対する発言が、組合の運営に対する支配介入に当たるか否かについて(争点1)
ア 会社らは、面談時のB2部長の発言について、職位を離れ、友人として個人的に話をしており、支配介入の意思はなく、組合 の運営や活動等に影響を与える可能性も存しないと主張する。
 しかし、B2部長はY1会社の部長職でB1社長を補佐する立場にあるところ、A2に、B1社長への謝罪と損害賠償請求訴訟の 和解の必要性を説き、「組合を立てた時点で、もうこいつは、というふうに思われてるのよ、あなたは。あなたが上の経営者だっ たらどう思う。」、「それを、例えば、感情が高ぶってね、あいつは、みたいに思われているところに、それに輪を掛けたのが、 その、第三者を入れたということだと思うよ、その、しかも、第三者も悪いと思うよ、私は、性質が。企業にとって。」といった 発言をしている。
 これらの発言は、組合加入や組合を介した交渉がA2に悪影響を及ぼすことを示唆し、同人に対し、暗に組合からの脱退を迫る もので、これが、同人をY1会社の会議室に呼び出した上で行われていることをも踏まえれば、職位を離れた個人的な話であった とは認め難く、Y1会社による組合の弱体化を図る支配介入行為に当たるというべきである。
イ なお、組合は、B2部長の発言はY1会社のみならず、Y2会社による支配介入でもあると主張する。
 確かに、A2は、Y1会社に入社し、Y2会社に出向しているから、Y1会社及びY2会社は、いずれも同人の使用者に当たる ということができるのであり、B2部長が、Y2会社の取締役を兼務している事実も認められる。しかし、 1月21日の面談は、Y1会社の会議室で行われ、その発言の対象は、A2とY1会社の完全子会社であるC会社との訴訟に関するものであるから、B2部長の発言は、Y1会社 の部長としてなされたものとみるべきであり、Y2会社による支配介入とはいえない。
2 1月22日のB1社長のA2に対する発言が、組合の運営に対する支配介入に当たるか否かについて(争点2)
ア 会社らは、B1社長の発言について、会社らが設けた面談ではないから、支配介入の意思はなく、組合の運営や活動等に影響を与える可能性も存しないと主張する。
 しかし、1月22日の面談は、前日のB2部長との面談において、同部長が勧めて実現したものであり、実質的に会社らが設定 した面談である。
イ B1社長は、A2に対し、「(組合に)いろんな相談乗ってもろうたという義理もあるんかもしれんけど。そんなものも含め てもさ。結局、何の得があった。」、「組合に駆け込んで、いろいろ相談乗っていただいて」、「何の得があった。」、「組合か らしてみたらさ、100万か200万か分捕って、分捕ってそこから2割か3割さ、上前はねてさ、成功報酬でさ。終わりにした いわけですよ。組合からしてみたら、思うよ、重荷やと思いますよ、銭にならへんねやから。」、「ただ、毎月ね、いくらか金も ろうてるわけやから、会費で、何もせんわけにいかんと。」、「個人の感想から言うけど、こりゃ金になりそうやなというときは ね、こうやって出てきてね、こりゃちょっと金にならへんぞ、となったらね、もう、そっちでうまいこと話してみたら1回、と、 こんな感じでしょ。」、「多分あなたは組合に頼んでるから、組合の方がね、その話うまく進むぞと、半分嫌がらせも込めて さ」、「組合に頼むというのは、半分嫌がらせみたいなもんやんか。」などと述べている。
 これらの発言は、組合に加入し、組合に頼んで話を進めたA2の対応を半分嫌がらせみたいなものと非難し、同人に対し、暗に 組合からの脱退を迫るもので、Y1会社による組合の弱体化を図る支配介入行為に当たるというべきである。
ウ なお、組合は、B1社長の発言はY2会社による支配介入でもあると主張するが、同社長は、Y1会社の代表取締役であっ て、Y2会社の身分を有しておらず、その発言の対象は、A2とY1会社の完全子会社であるC会社との訴訟に関するものである から、Y2会社による支配介入とはいえない。
3 1月23日のB1社長のA2に対する発言が、組合の運営に対する支配介入に当たるか否かについて(争点3)
 当日の面談の席において、B1社長が、組合が主張するような内容の発言をしたと認定するまでの証拠はないから、支配介入に 該当する行為があったとは認められない。 
掲載文献   

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