労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  兵庫県労委平成30年(不)第12号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年2月13日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、組合が、会社に対し、平成30年9月20日及び同月29日付けで組合員Aの労働災害の被災等について団体交渉を申し入れたところ、会社が団体交渉に応じなかったことが、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事案である。
 兵庫県労働委員会は、申立てを棄却した。  
命令主文  本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 会社は、A組合員との関係で労組法第7条の使用者に該当するか。(争点1)
ア A組合員は、平成29年3月3日にC1(会社の三次下請け事業者)の従業員として、C2(会社の二次下請け事業者)を通じて、さらにその委託元のC3(会社の一次下請け会社)が会社から請け負う業務に従事していた。
イ A組合員と会社との間に直接の雇用関係がなく、会社が労働契約上の使用者でないことは明らかであるが、会社が、A組合員の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、会社は使用者に当たると解されることになる。
ウ なお、組合は、A組合員の被災について、安全配慮義務違反に起因する損害賠償責任を団体交渉の協議事項と想定していることが、会社の使用者性を根拠づける旨の主張をしているとも考えられる。
 確かに、会社は、民事上の安全配慮義務や労働安全衛生法に基づく元請事業者の責任を負う可能性はある。
 しかし、民事上の安全配慮義務は、労働契約法第5条に規定されている義務ではあるものの、その義務を負うものは労働契約関係にある使用者だけではなく、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間に広く、当該法律関係の付随義務として信義則上課される義務である。したがって、仮にある者に安全配慮義務が認められるからといって、そのことが直ちに労組法上の使用者性を根拠づけることにはならない。
 また、安衛法上の責任については、行政法上の責務を負うものにとどまり、労組法上の使用者性と直接関係するものではない。
エ 本件において、会社が、A組合員に対する就労の管理、作業の割当て、指揮監督を行っていたとは認められないし、このほかに、A組合員の労働条件を、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に支配、決定していたといえる事実も認められないことからすると、会社は、労組法第7条の使用者とはいえない。
2 平成30年9月20日及び同月29日付け団体交渉申入書に記載の申入れ事項は、義務的団体交渉事項に該当するか。(争点2)
3 平成30年9月20日及び同月29日付け団体交渉申入れに対し、会社が拒否した行為は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するか。(争点3)
 1のことから、争点2及び争点3について判断するまでもなく、会社が前記団体交渉を拒否したことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。 
掲載文献   

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