事件番号・通称事件名 |
大阪府労委平成30年(不)第65号
不当労働行為審査事件 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
令和2年2月10日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、組合員1名に対し、組合加入通知の1か月半後に
配置転換を行い、草刈り作業等に従事させたことが、不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
大阪府労働委員会は、会社に対し、不利益取扱い及び支配介入に当たる不当労働行為であるとして、文書の交付を命じ
た。 |
命令主文 |
申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
組合
執行委員長 A1 様
会社
代表取締役 B
当社が、貴組合員A2氏に対し、平成30年8月20日付けで太陽光発電事業部からメンテナンス事業部への配置転換を行い、
同日以降に草刈り作業等に従事させたことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労
働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 |
判断の要旨 |
(争点)会社が、A2組合員に対し、平成30年8月20日付けで、太陽光発電事業部からメンテナンス事業部への配転を行い、同日以降に草刈り作業等に従事させたことは、組
合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか。
1 本件配転命令の不利益性の有無について、会社は、本件配転において賃金の減額はなく、また、メンテナンス事業部において
草刈り作業は重要な業務であり、A2組合員以外の従業員も普通に行っている業務であり、A2組合員に待遇面での不利益性は皆
無である旨主張するので、以下、この点について検討する。
本件配転によって、A2組合員に賃金の減額等の経済的損失があったと組合が主張しているのか否かは判然としないが、①A2
組合員は、平成26年に入社した時から、太陽光発電事業部で営業業務を行っていたこと、②本件配転命令時、A2組合員の役職
は太陽光事業部統括部長であったこと、⑧同30年8月17日、社長は、A2組合員に本件配転命令を行い、仕事は、草刈りであ
る旨述べたこと、④同月18日、社長は、A2組合員に対し、C社員が直属の上司になる旨連絡したこと、⑤C社員は、本件配転
命令の時点では外部委託業者であったこと、が認められ、これらのことからすれば、A2組合員は、入社後一貫して営業職に従事
していたにもかかわらず、本件配転命令によって、それまでの知識や経験とは無関係の草刈り業務に従事することになったのであ
り、しかもそれまで部長職であったにもかかわらず、外部委託業者であった者が直属の上司になったことも考慮すれば、本件配転
命令が、A2組合員にとって精神的不利益性を有するものであったことは否定できない。
2 次に、本件配転命令の理由の合理性についてみる。
会社の主張はいずれも採用できず、本件配転命令に合理的理由があると認めることはできない。
3 最後に、当時の労使関係についてみる。
本件配転命令当時、組合と会社は、少なからず対立関係にあったことが推認できる。
4 以上を総合的に判断すると、本件配転命令には合理性がなく、A2組合員が組合に加入して分会長として会社の方針に反対す
るなど積極的に組合活動を行っていたことを会社が嫌悪して行った、同人が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるといわざる
を得ず、またこれにより、組合活動を萎縮させ、組合の弱体化を企図したものということができる。
したがって、会社が、A2組合員に対し、平成30年8月20日付けで太陽光発電事業部からメンテナンス事業部.への配転を
行い、同日以降に草刈り作業等に従事させたことは、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であ
る。 |
掲載文献 |
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