労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  栃木県労委平成30年(不)第3号
申立人  X(個人) 
被申立人  Y1会社・Y2会社 
命令年月日  令和元年12月12日 
命令区分  却下・棄却 
重要度   
事件概要   本件は、Y1会社がC組合の組合員であったXに対し、異物除去作業を命じたこと、10日間の出勤停止処分を行ったこと及び平成30年5月31日付けで解雇したことが労働組合法第7条第1号の不当労働行為であるとして争われた事案である。 
 栃木県労働委員会は、Y2会社に対する申立てを却下し、Y1会社に対する申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y2会社に対する申立を却下する。
2 被申立人Y1会社に対する申立を棄却する。 
判断の要旨  1 Y1会社に対する申立について
(1)Y1会社がXにゴミ拾い作業こと異物除去作業を命じたこと(「本件作業命令」)が、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に該当するか。(争点1)
ア 本件作業命令の不利益性
 Xは、それまで営業等の事務職の経験しかなかった。本件作業命令は、そのようなXに対し、いわゆる現場作業を行わせるものであり、大きな職種の変更を伴うものであって、Xにとっては一定程度の不利益性のある取扱いであることは否定できない。
イ 本件作業命令の合理性
 Xが腰痛を患っていたことを加味しても、異物除去作業がXにとって過酷であったとはいえない。
 Y1会社らが、Xに対し第1次解雇の撤回を通知したところ、Xは、第1仮処分事件の審尋期日において、Y1会社が違法な出荷業務を行っている旨の主張をした。Y1会社らがあえて解雇を撤回し、Xを復職させようとしているにもかかわらず、Xは、その会社が違法行為を行っているかのようにことさら主張し、敵対的ともいえる態度を見せたものであり、そのようなXを営業職に就かせた場合に、Y1会社が、Xの言動により顧客にY1会社の業務内容について誤解や不信が生じかねないことを懸念するのは当然である。
 また、Xは、出向先のY2会社(Y1会社の子会社)において勤務していた際、営業課長の職にありながら、Y2会社社長の指示を受けても正当な理由なく営業活動を行わなかったものであり、Y1会社が、このような者に、あえてまた営業職を担当させようと考えるはずはない。
 そして、本件では、Xは、Y1会社への入社前に、Y1会社が主に砕石・砕砂の生産及び販売を営んでいることを聞いていた一方、入社時の雇用契約等の取り決めにおいて具体的な職種や配属先の限定がなされているような事情は見受けられない。
 そもそも、一般的に会社には広範な配転命令権が認められ、Y1会社においても、就業規則の中で、異動を命じることがある旨定められているところ、Y1会社が、上記のことを踏まえた上でXに本件作業命令を行ったことは、不合理ではない。
ウ 以上のことからすれば、本件作業命令がXにとって不利益性のあるものであることは否定できないが、Y1会社の本件作業命令は不合理であるとはいえず、Xが主張するようなY1会社の組合嫌悪の念に基づくものである事を示す事実やその他当時の労使関係の悪化を示す事実も認められない。
 したがって、本件作業命令は不当労働行為に該当しない。
(2)Y1会社が平成29年5月8日から10日間の出勤停止処分を行ったこと(「本件処分」)が、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に該当するか。(争点2)
ア 本件処分は、Xの勤務懈怠という非違行為に対し、当初は解雇という極めて重い処分としていたものを撤回し、改めて10日間の出勤停止とすることは、処分の量定としても、Y1会社の就業規則上適正なものと思われ、不自然なものではない。
 さらに、本件処分では、本件処分に係る通知の日から本件処分による出勤停止の最初の日までの間にXの弁明の機会が設けられており、本件処分の手続に特段問題があったものではない。
 以上のことから、本件処分には合理性が認められる。
イ 以上のことからすれば、Y1会社の行った本件処分は合理性が認められる一方、Xが主張するようなY1会社の組合嫌悪の念に基づくものである事を示す事実やその他当時の労使関係の悪化を示す事実は認められない。
 したがって、本件処分は不当労働行為に該当しない。
(3)Y1会社が平成30年5月31日付けでXを解雇したこと(「第2次解雇」)が、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に該当するか。(争点3)
ア Y1会社は、腰を痛めたことが業務に起因する労働災害であるとして、平成29年5月25日付けで「療養補償給付たる療養の給付請求書」に証明していることから、同月26日からのXの休業について、当初は、業務上の負傷に起因するものと認識していたと考えられる。
 しかし、同年8月にXが別会社で勤務していることが明らかになったことから、この頃には、Y1会社の認識として、Xの休業が、業務上の負傷の療養のためのものではないと考えるに至ったとしても不自然ではない。また、一般的に見れば、砂利の山で単に転倒し負傷したことの療養のために10か月もの休業を要するとは考えられず、しかも本件では、Xの負傷は、受傷直後、遠方の病院まで自分で自家用車を運転して行ける程度のものだったというのであり、Y1会社は、平成30年4月17日付けで解雇予告通知を発出する時点では、Xの休業は当然業務上の負傷の療養のためのものではないと考えており、この休業中の解雇が労働基準法第19条第1項に違反するといった認識は持っていなかったものと思われる。
 Y1会社は、Xに出社を求めているものの、Xは、配転に不満があること以外の理由を示さないまま欠勤を続けた。係る状況の下、Y1会社が上記のとおり、Xの休業が業務上の負傷の療養のためのものではないとの認識をもって、「無断欠勤を行った」としてXを解雇したことは、客観的に見て不合理であるとは言えない。
イ 以上のことからすれば、Y1会社の行った第2次解雇は不合理であるとは言えず、Xが主張するようなY1会社の組合嫌悪の念に基づくものである事を示す事実やその他当時の労使関係の悪化を示す事実も認められない。
 したがって、第2次解雇は不当労働行為に該当しない。

2 Y2会社(Y1会社の子会社)に対する申立について
 本件において、不当労働行為であるとして申し立てられた行為は、本件作業命令、本件処分、第2次解雇であるが、これらの主体はいずれもY1会社であり、Y2会社ではない。
 したがって、Y2会社に対する申立は労働委員会規則第33条第1項第5号に該当し、却下を免れない。 
掲載文献   

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