労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成30年(不)第29号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和2年1月7日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、会社が組合員1名に対し、医師の診断書に配慮せず、一方的な懲戒処分を行ったこと、組合と会社の子会社が当事者となった別事件の審査において、当該子会社が、ねつ造した弾劾証拠を提出したことが、それぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文  本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点1(会社が、A組合員に対し、本件懲戒処分を行ったことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか。)
ア 会社は平成30年4月24日に本件懲戒処分としてA組合員をけん責処分としたことが認められるところ、けん責処分は直ちに経済的な不利益を伴うものではないが、けん責を受けることは精神的苦痛を伴うものであること、会社の社員就業規則第93条によれば、けん責処分が再度におよぶ場合、けん責処分よりもさらに重い懲戒処分である出勤停止の処分を受ける可能性があることや、職歴にも残ることを鑑みると、その不利益性は明らかである。
イ 会社がA組合員に対し、本件処分理由書に記載されている①、②及び③の理由により本件懲戒処分を行ったことは、合理的な理由がないとはいえず、本件懲成処分には処分理由が不存在である旨の組合の主張は採用できない。
ウ 会社らは、A組合員に求める内容を具体的に記載した書面を複数回にわたり手交し、面談を実施しており、A組合員に対し、注意・指導を積み重ねていたといえ、会社らによる本件懲戒処分に至るまでの経緯に問題があったとはいえない。
エ また、組合は、C会社に出向して以降、A組合員が組合を通じて配転要求を行ってきたことを挙げ、会社に組合嫌悪意思があり、本件懲戒処分が行われた旨主張するが、本件懲戒処分が不合理とまではいえない一方、それが組合嫌悪によるものであると認めるに足る具体的な疎明はないといわざるを得ない。
オ 以上のことからすると、組合の主張にはいずれも理由がなく、会社がA組合員に対し、本件懲戒処分を行ったことは、組合員であるが故の不利益取扱いであるとはいえず、この点に係る組合の申立ては棄却する。

2 争点2(28.11作業内容報告書が作成されたことは、会社によるA組合員に対する組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか。)
ア 28.11作業内容報告書には、A組合員が指示に従わない旨、営業マンとして不適切であると考える旨、A組合員に仕事を任せられない旨等が記載されていたことが認められる。仮に組合の主張どおり、28.11作業内容報告書がねつ造されたものであれば、事実に基づくことなくA組合員の営業マンとしての適性や能力を否定するものであって、社内における低い評価に繋がるおそれがあるとともに、A組合員に精神的な不利益を与えるものといえる。
イ そこで、28,11作業内容報告書の作成が、会社による行為であるといえるかについてみる。
 組合は、①C会社が会社の100パーセント出資の子会社であること、②会社の社員がC会社の取締役であること、③会社がC会社が提出した報告書をもとにA組合員を懲戒処分としており、両社の関係は密接かつ一体であることを理由に、C会社が28.11作業内容報告書を作成したことは、会社による行為である旨主張する。
 28.11作業内容報告書は、C会社営業部のC2部長が作成したとされ、 29-11事件の審問手続の際にC会社が提出したものであることが認められるが、28.11作業内容報告書の作成に会社が関与していたとの疎明はない。
 また、仮に組合が主張するように、①C会社が会社の100パーセント出資の子会社であり、②会社の社員がC会社の取締役であっても、そのことのみをもってC会社が28.11作業内容報告書を作成したことを、すなわち会社が行った行為であるとまでみることはできない。
 さらに、組合は、③会社がC会社の報告書をもとにA組合員を本件懲戒処分としており、両社の関係は密接かつ一体である旨主張するが、会社はA組合員の出向元であるのだから、A組合員の出向先であるC会社の報告書をもとにA組合員を本件懲戒処分としたとしても、不自然なことではなく、そのことをもって両社が一体として28.11作業内容報告書を作成したとまではいえない。
 したがって、28,11作業内容報告書が作成されたことは、会社の行為であるとはいえず、組合の主張は採用できない。
ウ 次に、28.11作業内容報告書がねつ造されたものといえるかについて検討する。
 組合は、28.11作業内容報告書がねつ造であると主張する理由として、①C2部長が作成していないと述べていること、②会社が28.11作業内容報告書の原本であるとしているものは、実際に29-11事件において弾効証拠として提出された28.11作業内容報告書と印鑑の大きさが異なっており、原本ではないこと、③C2部長の電子印が押印されているのは不自然であることを挙げている。
 しかしながら、組合の主張にはいずれも、それらを裏付ける事実の疎明がないことから、組合の主張は採用できない。
エ 以上のことから、28.11作業内容報告書の作成は、そもそも会社の行為とはいえない上、28.11作業内容報告書がねつ造であるともいえない。
 したがって、28.11作業内容報告書が作成されたことは、会社によるA組合員に対する組合員であるが故の不利益取扱いであるとはいえず、この点に係る組合の申立ては棄却する。 
掲載文献   

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