労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]

概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成29年(不)第43号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  令和元年11月26日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、法人が、①和解協定書において、団体交渉申入れから3週 間程度で団体交渉を開催する旨約しているにもかかわらず、同期間内に団体交渉の申入れ及び分会交渉の申入れに応じなかったこ と、②団体交渉において、組合事務室移転等に関して、詳しい説明を行わないなど誠実に対応しなかったこと、③組合事務室移転 前には設けられていた組合掲示板について、移転後には設置しなかったこと、④Cキャンパスの1号館の入館に必要となった入館 用カードを組合に貸与しなかったこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労働委員会は、会社に対し、①の分会交渉申入れに速やかに応じなかったこと及び③について不当労働行為に当たるとし て、文書の手交を命じ、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなけれ ばならない。

 年 月 日
組合
執行委員長 A1 様
法人      
理事長 B

 当法人が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められまし た。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

(1) 平成29年7月10日付け及び同月18日付けの分会交渉申入れに対し、速やかに応じなかったこと(2号及び3号該 当)
(2) 平成29年9月の組合事務室移転後、申立人の組合掲示板の設置を速やかに行わなかったこと(3号該当)

2 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点1-1(29.6.8団交申入れに対し、平成29年8月1 日に団交が開催されたことは、団交を「概ね3週間以内」に開催するよう記載した28.6.2和解協定書に反し、組合に対する 支配介入に当たるか。)
 29.6.8団交申入れの後、組合と法人は、継続して労働時間管理の問題について、メール等でやり取りを行っており、その 後、29.7.14事務折衝において労使間で調整して、29.6.8団交要求書のみならず、29.5.24団交要求書その 2、29.5.24団交要求書その3、29.7.3団交要求書及び29.7.7要求書に係る要求も団交議題とし、同年8月1 日に団交を開催することを取り決めたという経過があったとみることができる。また、同年6月8日から同年7月28日の間、組 合は、断続的に団交要求書等を法入に提出しているが、これらにおいて、特に29.6.8団交申入れに係る団交の開催を早期に 行うことを催促していた事実も認められないことからすれば、団交開催日が同年8月1日となったことについては、ある程度組合 も承認していたものと推認され、法人が故意に、又は怠慢により団交の開催を遅らせたとまでみることはできない。そうであると すれば、結果的に29.6.8団交申入れから29.8,1団交が開催されるまでの期間が2か月近くかかったのは事実ではある が、このことをもって、法人の行動が、団交開催遅延による組合に対する支配介入に当たるとまで認めることはできない。
 以上のとおりであるから、29.6.8団交申入れに対し、平成29年8月1日に団交が開催されたことは、28.6.2和解 協定書に反し、組合に対する支配介入に当たるとはいえず、この点に係る申立ては棄却する。

2 争点1-2(29.6.8団交申入れに係る29.8.1団交における法人の対応は、不誠実団交に当たるとともに、組合に 対する支配介入に当たるか。)
 29.8.1団交における法人の対応は、不誠実団交とはいえず、したがって、組合に対する支配介入に当たると認めることも できず、この点に係る組合の申立ては棄却する。

3 争点2(29.7.10A1分会交渉申入れ及び29.7.18A2分会交渉申入れに対する法人の対応は、労働組合法第7 条第2号及び第3号の不当労働行為に当たるか。)
 法人は、組合から、29.7.10A1分会交渉申入れ及び29.7.18A2分会交渉申入れを受けてから、その3か月後の 29.10.18団交までの約3か月の間、上記分会交渉に係る日程調整や議題の調整などは行っていなかったといわざるを得な い。
 そうすると、本件申立てがあった同年10月25日まで、29.7.10A1分会交渉申入れ及び29.7.18A2分会交渉 申入れに対して、分会交渉を開催しなかった法人の対応は、正当な理由のない団交拒否に該当するといわざるを得ない。
 以上のことからすれば、教学事項についての要求にとどまらず、組合員の労働条件等が要求事項に含まれた29.7.10A1 分会申入れ及び29.7.18A2分会申入れに対し、平成29年11月まで分会交渉を開催しなかった法人の対応は、 28.6.2和解協定書の解釈いかんにかかわらず、労働組合法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に該当する。

4 争点3(平成29年9月の組合事務室移転後の、組合の組合掲示板の設置に係る法人の対応は、組合に対する支配介入に当た るか。)
 平成29年9月の組合事務室移転後の、組合の組合掲示板の設置に係る法人の対応は、組合掲示板の貸与という便宜供与の一方 的な廃止であり、かつ、掲示板が労働組合活動にとって、情報伝達や主張の宣伝のために重要な意義をもつものであることを考慮 すれば、このような法人の対応は、組合の存在を軽視し、その活動を弱体化させるものであるといえ、労働組合法第7条第3号の 支配介入に該当する不当労働行為である。

5 争点4(法人が組合に対し、Cキャンパスの新本館の入館に必要な新本館入館カードの貸与をしないことは、組合に対する支 配介入に当たるか。)
 組合事務職員が新本館に自由に出入りできなくなったのは、単に、全ての新本館入館者に適用される新入館ルールに沿った手続 を行う必要からであるといえ、したがって、法人が、組合を嫌悪して、ことさらに組合事務職員に対してのみ不便を強いているわ けでないことは明らかである。
 確かに、清掃業者には貸与されている「入館カード(MAS TER)」が、組合事務職員には貸与されておらず、その点に違いがあるとはいえるが、法人が清掃業務を委託する清掃業者の清掃員は、新本館自体やその中の各部屋に入る目 的、法人との関係などが、組合事務職員とは全く異なる上、別組合の組合事務職員に入館カードが貸与されているとの事実も認め られないのであるから、当該清掃業者との扱いが異なることをもって、不当労働行為に該当する差別的取扱いであるということは できない。
 以上のとおりであるから、法人が組合に対し、Cキャンパスの新本館の入館に必要な新本館入館カードの貸与をしないことは、 組合に対する支配介入に当たると認めることはできず、この点に係る組合の申立ては棄却する。 
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約595KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダ ウンロードが必要です。