労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成30年(不)第35号・30年(不)第57号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和元年12月10日 
命令区分  棄却・一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①組合が組合員1名の加入を通知し、団体交渉を 申し入れた後、同組合員を就労させなくなったこと、②当該組合員に対し就労証明書を作成し交付することを拒否したこと、③申 立人が送付した書面を受領しなかったこと、④団体交渉申入れに応じなかったこと、が不当労働行為であるとして申し立てられた 事件である。
 大阪府労働委員会は、会社に対し、③について支配介入、④について正当な理由のない団交拒否に当たる不当労働行為であると して、団交に応じることとともに、文書の手交を命じ、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人が平成30年8月24日付け書面により申し 入れた団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。

 年 月 日
組合
執行委員長 A1 様
会社        
代表取締役 B

 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。


(1) 貴組合が送付した平成29年11月18日付け書面及び同30年6月4日付け書面を、受領しなかったこと(3号該 当)。
(2) 貴組合が平成30年8月24日付け書面により行った団体交渉申入れに対し、正当な理由なく、応じなかったこと(2号 該当)。

3 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 A2組合員は、会社との関係において労働組合法上の労働者に当 たるか。(争点1)
ア A2とC会社との間で、契約書は作成されていないものの、平成28年3月までは、C会社はA2の日雇手帳に印紙を貼付し 消印していたのであるから、少なくとも、同月までは、外形上は、C会社とA2との問は、雇用関係にあったとみるのが相当であ る。そして、同年4月以降、C会社は、日雇手帳への印紙の貼付及び消印を行わなくなったものの、A2の業務内容等には変化が なかったのであるから、外形的な面からみると、引き続きA2とC会社の関係は雇用関係にあったと考えられる。
イ この点について、会社は、契約の実態は、形式的にではなく、実質的に判断されるべきであり、実態としては、請負契約関係 である旨主張し、労働基準法における労働者性の判断基準に基づいて主張している。しかし、本件で争点となっているのは、労働 組合法上の労働者であるか否かであるため、以下、労働組合法上の労働者性判断基準に従って検討する。
ウ A2が、C会社との関係において、労働組合法上の労働者に該当するか否かの諸要素をみると、基本的判断要素については、 ①事業組織への組入れがなされており、②契約内容について、C会社が一方的・定型的に決定しており、③報酬についても、労務 対価性が認められる。また、補充的判断要素のうち、④業務の依頼に応ずべき関係については、ある程度は、諾否の自由があった ものの、自らが自由に応諾するか否かを決定できたとまではいえず、⑤広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的 拘束についても、これらがあったと認められるところである。そして、消極的判断要素としての⑥顕著な事業者性について、A2 がこれを有しているとはいえない。
 これらのことを総合して判断すれば、A2は、C会社との関係において、労働組合法上の労働者に当たるとみるのが相当であ る。
エ ところで、平成30年2月5日、会社とC会社は、会社を存続会社、C会社を消減会社として合併したことが認められるので あるから、C会社の法的地位は、会社に引き継がれており、A2は、C会社との関係で労働組合法上の労働者に当たるのであるか ら、C会社との関係においても、労働組合法上の労働者に当たるといえる。
オ 以上のとおりであるから、A2は、会社との関係において労働組合法上の労働者に当たる。

2 会社が、平成29年12月1日以降、A2組合員を就労させなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとと もに、組合に対する支配介入に当たるか。(争点2)
ア 平成29年12月1日以降A2が就労していないのは、C会社及び会社が生コン運搬業務を行っていないことによるものであ り、しかも、A2についてのみ、殊更、就労させなかったとみることはできないのであるから、組合員であるが故に、同日以降、 C会社及び会社がA2を就労させなかったとはいえない。
イ したがって、会社が、平成29年12月1日以降、A2を就労させなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当た らず、組合に対する支配介入にも当たらず、この点に関する組合の申立ては棄却する。

3 会社が、平成29年11月以降、A2組合員に対し、就労証明書を作成し交付することを拒否したことは、組合員であるが故 の不利益取扱いに当たるか。(争点3)
ア ①平成29年11月14日、監査役は、C会社は廃業する旨発言したこと、②平成29年12月1日以降、C会社は生コンの 販売及び運搬業務を行っていないこと、③平成29年11月にA2が作成を求めた就労証明書は、平成30年4月以降の保育園利 用希望者の提出書類の一つであったこと、④A2が作成を求めた就労証明書の書式は、前年までと大きく異なっていたこと、⑤本 件審問において監査役は、就労証明書を作成しなかった理由について、同30年4月以降であれば、C会社は廃業しており、ミキ サ一乗務員の業務がないので作成できないことを説明した旨陳述していることが認められ、また、C会社の廃業が一時的なもので あるとまではいえない。そうすると、就労証明書の作成を拒否したのは、C会社の廃業によるものとの会社の主張は不自然とも不 合理ともいえない。
イ さらに、C会社が、就労証明書には、平成29年11月現在の状況を記載すれば足りると認識していながら、廃業を理由に作 成を拒否したのであれば、組合員であるが故に拒否したとみる余地があるところ、C会社が、就労証明書には、平成29年11月 現在の状況を記載すれば足りると認識していながら、廃業を理由に作成を拒否したとまではいえない。
ウ 以上のことからすると、C会社が、平成29年11月以降、就労証明書の作成を拒否したのは、A2が組合員であるが故であ るとまで認めることはできない。
エ したがって、会社が、平成29年11月以降、A2に対し、就労証明書を作成し交付することを拒否したことは、組合員であ るが故の不利益取扱いに当たるとはいえず、この点に関する組合の申立ては棄却する。

4 組合が送付した29.11.18組合通知書及び30.6.4組合通知書を、会社が受領しなかったことは、組合に対する支 配介入に当たるか。(争点4)
ア C会社及び会社が、組合からの書面を受領しない正当な理由があったとはいえない。
イ 以上のとおりであるから、組合が送付した29.11.18組合通知書及び30.6.4組合通知書を、会社が受領しなかっ たことは、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

5 組合が、30.8.24組合書面により行った団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるか。 (争点5)
ア 組合が申し入れた団交議題は、A2の会社における就労に関する事項であって、義務的団交事項に当たることは明らかであ る。
イ 会社は、正当な理由なく、組合が30.8.24組合書面により行った団交申入れに応じていないのであるから、かかる会社 の対応は、正当な理由のない団交拒否であり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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