労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  愛知県労委平成30年(不)第6号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和元年11月11日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、会社のB1郵便局長が、組合からの平成30年3月15日付けの団体交渉の申入れに対し、団交会場として第三者所有の部外施設(「第三者施設」)の使用料を労使折半とすることに固執してこれに応じなかったことが、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして、同年7月30日に申し立てられた事件である。
 愛知県労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文  本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  (争点)B1郵便局長の対応は、組合からの平成30年3月15日付け団交申入れを拒否したと評価できるか。B1郵便局長の当該対応は、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たるか。

1 組合からの本件団交申入れに対してB1郵便局長は、組合からの30年春闘要求について事前に回答を送付し、組合側の要望である当該要求の全てを団交の議題とすること及び出席者の数について了承し、29年和解協定に基づき団交会場となる第三者施設について団交時間として2時間確保できる予約可能日を調べた上で3か所の施設を候補として挙げたといえる。また、同局長は、団交会場となる第三者施設の使用料について組合に対して労使折半を求めながらも、1時間当たりの使用料が定められている施設における団交が1時間以内であった場合にはその全てをB1郵便局の負担とすることを提案しており、当該提案の趣旨について同局のB2総務部長が団交を何回重ねても1時間分であれば同局が毎回負担する趣旨である旨証言していることを踏まえれば、組合に当該使用料の負担が生じることなく団交を開催できる可能性のある提案をしたといえる。
 これに対し、組合は、組合のA執行委員長が第三者施設の使用料を労使折半するということそのものが組合の団体交渉権をないがしろにするものと考えている旨及び社外で団交を開催するならば使用料を会社側が全額負担をしなければならないという方針を会社が認めない限りは組合として団交はしないという方針だった旨証言しているように、第三者施設の使用料に係る労使折半を受け入れることはできないという考え方に基づいて、本件団交申入れ以降になされた同局長からの第三者施設の使用料に係る提案を全て拒否したといえる。
 以上を総合的に勘案すれば、同局長の一連の対応は、組合からの第三者施設の使用料も含めた様々な条件について議歩できるところは讓歩する姿勢を示して本件団交申入れに係る団交の開催に向けて合意達成の可能性を模索していたもので、真摯な対応であったと評価するのが相当である。

2 組合は、B1郵便局による第三者施設の使用料についての提案は団交時間を不当に制限するものである旨主張する。
 組合と同局との間に団交時間を2時間とすることについての取決めがあったとの疎明はなく、また、平成28年9月21日に開催された組合と同局との間の団交が予定の1時間30分を超えて約2時間で終了したことが認められるが、組合と同局との間で開催された団交は当該1回のみであることから組合と同局との間に団交時間を常に約2時間確保する慣行があったとはいえない。
 加えて、B1郵便局長は団交時間を2時間確保できる施設を提案するとともに、団交時間が1時間以内であった場合には組合に第三者施設の使用料の負担が生じない提案をしており、また、同局長が団交の回数に上限を設けたとの事情も見当たらない。
 そうすると、同局による提案は団交時間を不当に制限するものとまではいえず、組合の当該主張は採用できない。

3 組合は、会社が団交開催に係る第三者施設の使用料を負担した事例、郵便局内において団交が開催された事例等があることからB1郵便局長の提案内容には合理性がない旨主張する。
 会社において団交を開催するための第三者施設の使用料の負担に関する内規はないことが認められ、また、B1郵便局が組合との団交を第三者施設において開催することを内容とする29年和解協定を締結したこと、他の郵便局が団交を第三者施設で開催して当該郵便局がその使用料を負担した事例があったこと及びB1郵便局が同局内で団交を開催した事例があったことが認められることからすれば、各郵便局が団交を開催するに当たり、その会場を当該郵便局内とするか又は第三者施設とするかという点及び第三者施設で開催する場合における第三者施設の使用料の負担をどうするかという点に係る判断は、各郵便局長に委ねられていたといえる。
 そうすると、B1郵便局長が、29年和解協定の存在等の組合との過去からの労使関係がある中で、団交時間を2時間確保できる施設を提案するとともに、第三者施設の使用料の負担について労使折半を求めながらも団交時間が1時間以内であった場合には組合に第三者施設の使用料の負担が生じないという提案をしたことは直ちに合理性がないとまではいえないことから、組合の当該主張は採用できない。

4 したがって、B1郵便局長の対応は、組合からの本件団交申入れを拒否したとはいえず、労組法第7条第2号及び第3号の不当労働行為に当たらない。 
掲載文献   

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