労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成29年(不)第85号
西武観光バス不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合・X2組合 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和元年10月15日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   会社のC1営業所に勤務していた運転士であるA3分会長、A4ら4名は、平成29年9月上旬にX1組合、同月9日にX2組合に加盟した上、同月12日、X2組合の分会を結成し、会社に対し、分会結成を通知した。
 本件は、9月14日、会社の管理部次長であるB2次長が、C1営業所の運転士であるC2運転士に対し、A4に組合に加入したことについて話をしてほしい等と求め、同月16日、C2運転士が、A4に対し、B2次長から話をしてほしいと頼まれたと述べた上で、(組合に加入すると)「運転士従業員は将来がなくなっちゃうんだよ。」等と発言した一連の行為(「本件行為」)が、会社による支配介入に当たるか否かが争われた事案である。
 東京都労働委員会は、会社に対し、支配介入の不当労働行為に該当するとして、組合運営への支配介入の禁止とともに、文書の交付・掲示を命じた。 
命令主文  1 被申立人会社は、申立人X1組合及び同X2組合の組合員らに対し、脱退勧奨をするなどして、申立人組合らの運営に支配介入してはならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を、申立人組合らに交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートルX80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、被申立人会社のY1営業所の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
 年 月 日
X1組合
執行委員長 A1 殿
X2組合
執行委員長 A2 殿
会社         
代表取締役 B1

 当社の職制が、貴X1組合及び貴X2組合の組合員に対し、脱退勧奨を行ったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は、文書を交付又は掲示した日を記載すること。)

3 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 
判断の要旨  1 本件行為が組合活動の弱体化を企図したものに当たるか
 平成29年9月16日、C2運転士は、A4に対し、「もういま、まぁ、まあ、そういうに加入しちゃってはいるんけど、ま、早いうちに、まぁ、そうではなく、こうに、あのお、してくれればいい、ま、よしてくれればいいなぁっつんでさ。」、(組合に加入していると)「会社側としても、そういう運転士従業員は将来がなくなっちゃうんだよ。良いことは一つもない。」、「会社側は区別するよ。」等と発言している。
 これらの発言は、A4が組合に加入しているが、早いうちに脱退してほしいという意向を述べたものである。また、組合加入によって会社から不利益な取扱いを受けること、を示唆するものであり、脱退勧奨発言であると認められる。
 C2運転士が個人的にA4へ脱退勧奨を行う動機や、B2次長から脱退勧奨の指示があったとする虚偽の発言をする動機を推認させる事情は特段見受けられないことや、B2次長は、C2運転士の発言を知ってから、C2運転士に対し、事情を確認したり、発言の訂正を求める等の措置を講じていないことから、B2次長からC2運転士に対し、A4に脱退勧奨を行うよう指示があったものと認められる。
 B2次長の発言はC2運転士を介してA4に伝わっているが、C2運転士は、A4に対し、職責を有するB2次長に頼まれたと明示した上で、脱退勧奨発言を行っていること、発言内容には会社の立場を示すものが含まれていることから、組合員として組合活動を続けることについて大きな威嚇的効果があり、組合活動が阻害されるおそれは大きいといえる。
 したがって、本件行為は、会社から不利益な取扱いを受けることを示唆しての脱退勧奨に当たり、組合活動の弱体化を企図したものといえる。

2 本件行為が会社の行為に当たるか
 B2次長が管理部次長兼管理部管理課長という立場で、C2運転士に対し、会社の意向に沿う脱退勧奨の指示を行っており、C2運転士が、同指示に基づき、A4に対し、脱退勧奨発言を行っていることから、本件行為は、会社の行為に当たると認められる。

3 以上のとおり、本件行為は、組合活動の弱体化を企図したものであり、会社の行為に当たるから、組合の組織運営に対する支配介入に該当する。 
掲載文献   

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