労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成28年(不)第67号 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  令和元年10月1日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   27年2月、A2は組合のC1病院支部の新執行部に加入した。
 7月10日、A2がC1病院における宿日直勤務の現状等が労働基準法に違反する旨を労働基準監督署に申告すると、11月11日、同署は法人理事長及びC1病院長宛てに、是正勧告書及び指導票を交付した。
 28年6月28日、A2が、C1病院における同年4月以降の宿日直勤務に係る賃金の不払等が労基法に違反する旨を再び労基署に申告すると、7月5日、同署は、C1病院長宛てに、再び是正勧告書及び指導票を交付した。
 8月26日、法人は、A2に対し、10月1日付けで、職務の級2級の薬剤師(「一般薬剤師」)から職務の級3級の主任薬剤師(「3級主任薬剤師」)に昇任・昇格させる旨を命じた。同時に、法人は、A2に対し、10月1日付けで、C1病院からC2病院に配置転換する旨(「本件配転」)を命じた。
 本件は、法人による組合員A2に対する本件配転が、同人の正当な組合活動を理由とする不利益な取扱い及び組合運営に対する支配介入に当たるか否かが争われた事案である。
 東京都労働委員会は、法人に対し、不利益取扱い及び支配介入の不当労働行為に該当するとして、配転命令の撤回とともに、文書の掲示を命じた。 
命令主文  1 被申立人法人は、申立人組合のC1病院支部組合員A2に対する、平成28年10月1日付けの被申立人法人のC2病院への配転命令をなかったものとし、同人を、被申立人法人のC1病院薬剤科の職務の級3級の主任薬剤師として復帰させなければならない。
2 被申立人法人は、本命令書受領の日から1適間以内に、下記内容の書面を、55センチメートルX80センチメートル(新聞紙2頁大)の自紙に、楷書で明瞭に墨書して、被申立人法人本部の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。

 年 月 日
組合
中央執行委員長 A1 殿
法人       
理事長 B1

 当法人が、貴組合のC1病院支部組合員A2氏を、平成28年10月1日付けで当法人のC2病院へ配転したことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は、文書を掲示した日を記載すること。)

3 被申立人法人は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 
判断の要旨  1 本件配転の不利益性について
ア 経済上の不利益について
 本件配転が同人に明白な経済上の不利益を生じさせるものであったとまではいえない。そして、本件配転により経済上の不利益が生じたか否かはともかくとして、法人がそのような不利益を被らせる意図をもって本件配転を行ったとまでいうことはできない。
イ 組合活動上の不利益について
 A2は、27年2月にC1病院支部長A3による新執行部体制となり、同執行部に加入して以降、活動が停滞した支部を再建するため様々な活動を行っていた。その矢先に、支部活動の中心人物であったA2が他の病院へ配転されれば、再び同支部の活動が停滞する組合活動上の不利益があることは明らかである。そして、法人はそれを意図していたものとみざるを得ない。

2 本件配転の業務上の必要性について
ア C1病院薬剤科からの転出の必要性
 A2を本件異動候補者とし、同人が異動した場合の補充希望として副薬剤科長の配置を要求したのは、副薬剤科長の補充よりも、A2を転出させることに主眼があったのではないかとの疑問を抱かせる。
 法人は、一般薬剤師が昇任する際は他の病院へ異動するのが原則であると主張するが、本件配転時まで、そのような原則を示した規約等は存在しない。なお、「昇任については、病院間異動を伴うことを原則とする」と記された「法人組織の強化について」が通知されたのは、本件申立て後の30年3月30日である。そして、昇任の実例をみれば、むしろ異動昇任は特異なものであるといえる。
 本件異動候補者決定の手続をみても、27年5月にC1病院が、A2に昇任を推薦する旨を打診し、同人が辞退した経緯があり、同院は、同人に昇任の意向がないことを把握していたにもかかわらず、28年度の本件異動候補者決定の際には、同人が「職員カード」を提出する前に、本人の意向を確認しないまま決定している。
 このような本件異動候補者の決定は、手続的にも極めて不自然であり、本人の意向にかかわらず、A2を転出させなければならない別の意図があったのではないかとの疑問を抱かせるものである。
イ C2病院薬剤科への配置の必要性について
 C2病院が求めていたのは一般薬剤師であり、また、A2は、夜勤を免除されており、TPN調製の経験もないなど、同院が求めていた条件にかなっているといえないところもある。
 そうすると、C2病院への配置者がA2でなければならないという強い必要性があったとまではいえない。

3 本件配転当時の労使関係について
 法人は労基署への申告を契機とする宿日直勤務の間題に関する一連のA2の組合活動を嫌悪していたことが推認されるものであり、「29年度異動候補者名簿(C1)」の作成及びC2病院への配転対象者の決定はこれらと相前後する時期に行われたものであって、28年9月26日のB2統括部長らの発言に照らしてみても、本件配転は、A2の組合活動を嫌悪したが故とみるのが相当である。

4 結論
 上記1ないし3を総合的に勘案すると、本件配転は、法人が、A2の労基署への申告を契機とする宿日直勤務の間題に関する一連の組合活動を嫌悪し、同人をC1病院から排除することによって支部を弱体化させることを狙ったものとみざるを得ない。
 このような法人の行為は、正当な組合活動を理由とする不利益な取扱いに当たるとともに、組合運営に対する支配介入にも当たる。 
掲載文献   

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