労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成28年(不)第95号
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和元年9月17日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①会社が、組合に対し、C1工場、C2工場及びC3工場(「3工場」)の組合掲示板貸与及び休憩室の就業時間外の利用を認めないことが、組合活動に対する支配介入に当たるか否か、②28年度冬期一時金、29年度夏期一時金及び29年度冬期一時金について、A2分会長及びA3に減額支給したことが、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合活動への支配介入に当たるか否か、③C3工場のパート従業員への発言が、組合脱退を勧奨する等の支配介入に当たるか否か、が争われた事案である。
 東京都労働委員会は、会社に対し、②について不利益取扱い及び支配介入、③について支配介入、にそれぞれ当たるとして、不利益取扱いの撤回及び支配介入の禁止とともに、文書の交付・掲示を命じ、その他の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人会社は、申立人組合の組合員A2に対し、平成28年度冬期一時金、29年度夏期一時金及び29年度冬期一時金について、マイナス査定をなかったものとし、かつ、29年度夏期一時金についての支給額のベースが1か月であったものとして取り扱い、既に支払った額との差額を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、申立人組合の組合員A3に対し、28年度冬期一時金及び29年度冬期一時金について、マイナス査定がなかったものとし、かつ、29年度夏期一時金についての支給額のベースが1か月であったものとして取り扱い、既に支払った額との差額を支払わなければならない。
3 被申立人会社は、申立人組合を誹謗中傷し、同組合の組合員に対し、同組合からの脱退を勧奨する等の言動をして、組合の運営に支配介入してはならない。
4 被申立人会社は、申立人組合に対し、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートルX80センチメートル(新聞紙2頁大)の大きさの白紙に、楷書で明瞭に墨書して、会社内の従業員の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。

 年 月 日
組合
中央執行委員長 A1 殿
会社        
代表取締役 B

 当社が、①貴組合の組合員A2氏及び同A3氏に対して、平成28年度冬期一時金、29年度夏期一時金及び29年度冬期一時金について、減額支給をしたこと、②貴組合を誹謗中傷し、貴組合の組合員に対し、貴組合からの脱退を勧奨する等の言動をしたことは、いずれも東京都労働委員会において、不当労働行為であると認定されました。
 今後このようなことを繰り返さないように留意します。
(注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)

5 被申立人会社は、第1項、第2項及び前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
6 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 会社が、組合に対し、3工場の組合掲示板貸与及び休憩室の就業時間外の利用を認めないことが、組合活動に対する支配介入に当たるか否かについて(争点1)
 会社が、組合掲示板貸与及び休憩室の就業時間外の利用という便宜供与を実施することについて組合との合意に至らず、便宜供与を認めていないことが、便宜供与は労使合意に基づいて行われるものであることを踏まえた相当な対応といえる範囲を逸脱して組合を弱体化させる行為に当たるとまでいうことはできない。
 したがって、会社が便宜供与をしなかったことが、不当労働行為に当たるとまでいうことはできない。

2 28年度冬期一時金、29年度夏期一時金及び29年度冬期一時金について(争点2)
 組合結成後に組合員が大幅な減額査定を受けており、組合結成が査定に影響したことが強く疑われること、減額査定についての合理的な根拠が示されているとはいい難いこと、C1工場とC2工場の支給ベース引下げも組合員を狙い撃ちにした対応であると強く疑われることと、当時の対立的な労使関係とを考慮すれば、会社が、A2及びA3について低い査定を行い、また、当時は、A2及びA3を含む組合員の8割以上が所属していた工場のベースを低くしたのは、28年7月に分会が結成されて以降、急激に組織拡大し、36協定の締結等にも影響力を持った組合の力を減殺するために行ったものとみざるを得ず、組合員に対する不利益取扱いに当たるとともに、それを通じて組合の活動を萎縮させる支配介入にも当たる。

3 C3工場のパート従業員への発言について(争点3)
① 29年6月25日のC3工場のパート従業員に対するB2マネージャーの発言
 6月25日にB2マネ一ジャーがC3工場に赴いたのは、パート従業員からの電話の内容について事実確認をするためであるとされているのであるから、事実確認の方法としては、まず、率先して悪口を言ったとして具体的に名前の挙がっている従業員に個別に聞き取りを行った上で、その結果を照合して事実を確認するのが一般的であると考えられるところ、会社は、そのような事実確認を行う前に、匿名電話の内容を記録した文書を読み上げており、極めて不自然な対応であるといわざるを得ない。
 そして、読み上げた内容には、「組合に入る入らないは自分の意思でいい。」といった内容もあるが、「組合に入らずにいたため、陰で悪ロを言われ、もう限界です。」等、組合のいじめにより退職を余儀なくされた旨が主な内容になっているのであるから、いじめに関する説明会と称するものの、その実態は、従業員に対し、事実確認を行う前に、組合のいじめにより退職を余儀なくされた従業員のいることを、確認された事実であるかのように印象付けるものである。このような発言は、組合ないし組合員を不当に非難し、従業員に対して組合に悪印象を抱くよう誘導する行為であり、組合の弱体化を企図した組合に対する支配介入であるといわざるを得ない。
② 29年7月16日及び同月23日のC3工場のパート従業員との面談でのB2マネージャ一及びB3マネージャーの発言
 7月16日の面談におけるB3マネージャーの「A2さんについて行って、10年来の私たちを信じない。」との発言は、組合員に対し、組合加入をしたことを快く思っていないことの表明といえる。また、B2マネージャーとB3マネージャーの「変な考えにならなきゃいいなと思っている。」及びB2マネージャーの「外部の組合に頼るのって、ほかに何かあるの。」との発言は、組合員に対し、組合加入を快く思っていないことの表明といえる。
 したがって、 7月16日の面談におけるマネージャーらの発言は、組合員らが組合員で在り続けることをけん制し、これを妨害する意図の下になされたものといわざるを得ず、組合に対する否定的な言動をすることで組合活動を萎縮させる効果を狙った、組合の組織運営に対する支配介入である。
 なお、7月23日の面談については、脱退勧奨を促した等と認めるに足りる具体的な発言の疎明はないことから、同日の会社の発言については、支配介入に当たるということはできない。
③ 29年6月7日及び7月5日のC3工場のパート従業員に対するB4事務員の発言が、組合脱退を勧奨する等の支配介入に当たるか否か
(ア) 29年6月7日の発言
 B4は、一般の従業員ではあるが、業務として各工場を巡回している最中に、複数の組合員に対し、組合費が高いと述べたり、別の組合員が組合を辞めたいと言っていると述べている。これらの発言は、組合員らに、組合加入について動揺をもたらし、組合脱退を促す発言といえる。
(イ) 7月5日の発言
 パート従業員である組合員が、業務として工場を巡回しているB4に対し、「会社はどう考えているの?」と会社としての見解を求めたのに対し、B4は、個人的な見解であると前置きをすることもなく対応し、「窓ロじゃないけど、やりたいんだけど。」等と発言している。また、「(会社名)っていう人たちだけでうまくしていきたいと思って」、「外部に組合が入ると混乱するんじゃないかなと思います。」、「じゃ辞めてみますか?」などと、組合を快く思っていないことを伝えるとともに脱退を勧奨しているとも受け取られる発言をしている
(ウ) B4の発言は、(a)業務として工場を巡回している際に行われているものであること、(b)会社の見解を尋ねられた際に個人の考えであると断ることなく会社の立場で答えており、また、自分が組合に対する会社側の窓ロとなりたい旨の発言もしているなど、会社の立場からなされたとみられる内容を含んでいるものであること、(c)上記①、②のマネージャーらによる支配介入発言と同時期に行われていること等から、会社の意を受けて行われたものと推認せざるを得ず、同人の発言は、組合の運営に対する支配介入に当たる。 
掲載文献   

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