労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成29年(不)第24号
日本郵政不当労働行為審査事件 
申立人  X1・X2 
被申立人  日本郵政株式会社(「日本郵政」)・日本郵便株式会社(「日本郵便」) 
命令年月日  令和元年8月27日 
命令区分  却下・棄却 
重要度   
事件概要   旧郵政省の郵政事業の実施に関する部門は、平成13年1月6日、総務省郵政事業庁となり、郵政事業庁は、15年4月1日、日本郵政公社(「公社」)となった。16年4月1日、公社は、有期雇用である時給制契約社員に、習熟レベル等を評価し賃金に反映させるスキル評価制度を導入した。
 17年10月に郵政民営化法等が公布され、18年1月には日本郵政が設立され、19年10月1日に公社は解散し、同日、その事業は、日本郵政を持株会社とする郵便事業株式会社、郵便局株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぼ生命保険の四つの事業子会社に分割され(「民分化」)、日本郵政グループが発足した。その後、24年10月1日、郵便局株式会社は、郵便事業株式会社を吸収合併し、商号を日本郵便株式会社に変更した。
 28年10月1日、日本郵便は、時給制契約社員等を無期雇用に転換する無期転換制度等を導入した。時給制契約社員の契約期間は6か月以内であるところ、同日以降に採用された時給制契約社員(一部を除く)は、通算契約期間が4年半を超えた日以後における最初の契約更新の際に、直近のスキル評価結果が、契約更新の要件の一つとなった。
 X1及びX2は、本件申立時において、日本郵便の社員であり、C組合の組合員である。
 本件は、①公社が、スキル評価制度を導入したことが、組合運営に対する支配介入に当たるか否か(争点1)、②日本郵便が、有期雇用である時給制契約社員を無期雇用に転換するに当たって、スキル評価制度の結果に基づきこれを運用していることが、組合運営に対する支配介入に当たるか否か(争点2)、③日本郵政が、労働組合法上の使用者に当たるか否か、使用者に当たる場合は、日本郵便が、有期雇用である時給制契約社員を無期雇用に転換するに当たりスキル評価制度の結果に基づきこれを運用していることが、日本郵政による組合運営に対する支配介入に当たるか否か(争点3)が争われた事案である。
 東京都労働委員会は、①に係る申立てを却下し、②・③に係る申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人日本郵政及び同日本郵便の前身である公社が平成16年4月1日にスキル評価制度を導入したことに係る申立てを却下する。
2 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 公社が、スキル評価制度を導入したことことが、組合運営に対する支配介入に当たるか否かについて(争点1)
 被申立人らの前身である公社が、スキル評価制度を導入したのは、16年4月1日である。一方、本件は、29年4月3日に申し立てられ、本件申立ては同制度導入から1年以上経過しており、この制度導入が労働組合法第27条第2項にいう「継続する行為」とも認められない。
 したがって、スキル評価制度の導入に係る申立ては、行為の日から1年を経過した事件に係るものであり、却下せざるを得ない。

2 日本郵便が、有期雇用である時給制契約社員を無期雇用に転換するに当たって、スキル評価の結果に基づきこれを運用していることが、組合運営に対する支配介入に当たるか否かについて(争点2)
 日本郵便が、動続5年に達する前の契約更新や早期無期転換制度の適用に、スキル評価の結果を反映させていることは、労働組合の団結権を侵害する行為であるとは認められず、組合運営に対する支配介入には当たらない。

3 日本郵政が、労働組合法上の使用者に当たるか否かについて(争点3)
ア 申立人らは、日本郵政が日本郵便の従業員の労働組合法上の使用者に当たる理由として、日本郵政は、日本郵便の発足前から日本郵便の労務政策を準備・企画していることを挙げている。
 確かに、日本郵政は、民分化の実施に先立ち、民分化後の職員の労働条件について、各労働組合と交渉をした事実が認められる。しかしながら、この交渉は、民分化により事業子会社に承継される労働者の労働条件の早期確定を図ることを目的とした郵政民営化法第171条の規定に基づくものであり、交渉当時はともかく、承継会社の設立後は、労使交渉の相手方としての立場は、承継会社に引き継がれている。
イ また、申立人らは、日本郵政が日本郵便の従業員の労働組合法上の使用者に当たる理由として、日本郵便発足後は、日本郵便の100%出資の親会社である日本郵政の管理監督の下、日本郵便が無期転換制度等を導入していることを挙げている。
 確かに、日本郵政は、日本郵便の100%出資の株主であり、事業子会社に対し、①グループ経営戦略の企画・立案・実施、②グループ代表としての対外対応・調整・情報提供、③グループ経営・各社経営に関する助言・情報提供等の役務を包括的に提供しているが、申立人らの業務遂行について指示をしたことはなく、民分化後に、日本郵便の従業員の労働条件等について団体交渉をしたり、無期転換制度等についての日本郵便とC組合との労働協約締結に当たり具体的に関与したり、日本郵便の従業員のその他の労働条件の決定に関与したと認めるに足りる事実の疎明もない。
 したがって、日本郵政の上記関与が、部分的にも日本郵便の従業員の基本的労働条件について、日本郵便と同程度に現実的かつ具体的な支配力を及ぼしていると評価することはできない。
 以上のとおりであるから、日本郵政は、日本郵便の従業員である申立人らの労働組合法上の使用者に当たるとはいえない。
ウ 上記のとおり、日本郵政は、日本郵便の従業員の労働組合法上の使用者に当たらないから、その余の争点については判断を要しない。 
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