労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成29年(不)第30号・30年(不)第5号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1法人(「法人」) 
命令年月日  令和元年9月17日 
命令区分  一部救済(29不30)、全部救済(30不5) 
重要度   
事件概要   本件は、①職員の大多数が組合員である部門の役職者を法人の会議に出席させず、この部門に施設長を配置しようとしたこと、②会議への出席や施設長配置を議題とする団体交渉に応じないこと、③職員の手当等を議題とする団体交渉において、責任ある立場の者を出席させず、不誠実な対応を続けたこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労働委員会は、法人に対し、誠実な団交とともに、文書の手交を命じ、その他の申立を棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人との間の下記の議題についての団体交渉に、被申立人の人事・労務施策に関する十分な知識や情報を持ち、実質的な交渉権を有する者を出席させ、必要に応じて資料を提示するなどし、誠実に応じなければならない。


(1)Y2介護すてーしょんへの施設長の配置と介護事業部の代表者を構成員とする会議へのY2介護すてーしょんの管理者の出席について
(2)病院勤務の介護職の資格手当について
(3)平成29年度冬の一時金の査定について

2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。

 年 月 日
組合
執行委員長 A 様
法人      
理事長 B

 当法人が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。


(1)貴組合からの平成29年6月15日付け団体交渉申入れに対し、正当な理由なく、応じなかったこと。
(2)平成29年3月21日、同年4月25日、同年8月30日、同年10月31日及び同年12月4日に開催された団体交渉における下記の事項に関する協議において、実質的な交渉権を付与されていない者のみを出席させ、貴組合の理解を得ようとする努力を欠き、貴組合からの要求や主張を無視ないしは軽視した不誠実な対応を行ったこと。


ア 病院勤務の介護職の資格手当について
イ 考課表について
ウ 冬の一時金の査定について

3 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 法人が、①平成28年8月4日以降、介護施設事務長会議にY2介護すてーしょん(「すてーしょん」)の科長を出席させないこと及び②同すてーしょんに施設長を配置しようとしたことは、同すてーしょんの科長を含め職員の大多数が組合員であるが故に行われた不利益取扱いに当たるとともに、組合に対する支配介入に当たるか。(争点1)
① そもそも使用者は、原則として自由に、内部の会議を企画し、その目的に応じて出席者を選定でき、また、法人が、すてーしょんの科長を介護施設事務長会議の出席者としなかったことをもって不当ということはできない。
 したがって、法人が介護施設事務長会議にすてーしょんの科長を出席させないことが、すてーしょんの大多数が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとも、組合に対する支配介入に当たるともいうことはできず、この点に係る組合の申立ては棄却する。
② 使用者は、原則として自由に、管理職のポストを設置し、自ら任命した者にその職務を遂行させることができるというのが相当である。
 また、施設長のみならず、平成25年11月20日以降、介護事業部長も空席なのであるから、法人がすてーしょんに施設長を置こうとすることに理由がないとまではいえず、法人がすてーしょんに施設長を配置しようとしたこと自体を不当とまでいうことはできない。
 したがって、法人がすてーしょんに施設長を配置しようとしたことは、すてーしょんの大多数が組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとも、組合に対する支配介入に当たるともいえず、この点に係る組合の申立ては棄却する。

2 法人が、平成29年6月15日付け団体交渉申入れに対し、義務的団交事項ではなく、既定の方針を変更する考えはないとして、団交に応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否に当たるか。(争点2)
 使用者は、原則として自由に、管理職のポストを設置し、自ら任命した者にその職務を遂行させ、また、内部の会議を企画し、その目的に応じて出席者を選定できるとはいえ、6.15団交申入れが行われた状況下では、すてーしょんへの施設長の配置間題と代表者会議へのすてーしょんの管理者の出席問題は、いずれも労使関係に影響を及ぼす可能性のある事項であり、義務的団交事項に当たることから、法人は、団交申入れに応諾し、団交において、組合に対し、その理由を十分説明し、理解が得られるよう努力すべき義務が生じているというのが相当である。
 以上のとおりであるから、法人の6.15団交申入れへの対応は、正当な理由なく団交に応じなかったものと判断され、かかる行為は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。

3 平成29年3月21日、同年4月25日、同年8月30日、同年10月31日及び同年12月4日に開催された団交における以下の事項に係る法人の対応は、不誠実団交に当たるか。(争点3)
① 病院勤務の介護職の資格手当について
② 考課表について
③ 冬の一時金の査定について
④ 決定権を持つ理事や経営責任者を出席させなかったことについて

① 団交において、組合が、病院と介護事業の仕組みの違いを理解した上で、病院の介護職の資格手当の見直しを求めていたのに対し、法人は、客観的な資料を提示することもないまま、現状を変えないという結論のみを繰り返したというべきで、かかる対応は、協議において、相手方の理解を得ようとする努力を欠き、組合からの要求や主張を無視ないしは軽視した不誠実なものという他はない。
 以上のとおりであるから、3.21団交、4.25団交、8.30団交、10,31団交及び12.4団交における病院動務の介護職の資格手当に係る法人の対応は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
② 10.31団交及び12.4団交において、法人側出席者は、考課表の作成の進捗状況について十分に把握しないまま、団交に向けての準備を怠り、実質的な協議を行う姿勢を欠いた対応をしたというべきである。
 かかる法人の対応は、団交における組合からの要求や主張を無視ないしは軽視した不誠実なものという他はなく、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
③ 12.4団交において、法人側出席者は、冬の一時金の査定について、実質的な協議を行う姿勢を欠いた対応をしたというべきである。
 かかる法人の対応は、団交における組合からの要求や主張を無視ないしは軽視した不誠実なものという他はなく、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
④ 法人が、3.21団交、4.25団交、8.30団交、10.31団交及び12.4団交に、実質的な交渉権を付与されていない者のみを出席させ、決定権を持つ理事や経営責任者を出席させなかったことは、実質的な協議を行う姿勢を欠いた不誠実なものであって、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。 
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