労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成30年(不)第19号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  令和元年9月2日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、法人が、団体交渉申入れに対し、組合員とは労使関係がないとして、団体交渉に応じなかったことが不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労働委員会は申立てを棄却した。  
命令主文  本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  法人が、団交申入れに対し、A組合員とは労使関係がないとして、団交に応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否に当たるか。
 以下のことからすると、A組合員は法人との関係で労働組合法上の労働者に当たると断定できない上に、29.12.9団交申入れも、8年以上も就業がなく、しかも5年半以上にわたり何らの間題提起もなされなかった事項に関するものであることを総合考慮すると、組合の29.12.9団交申入れに対する法人の対応は、正当な理由のない団交拒否とはいえず、本件申立ては棄却する。
(1)事業組織の組入れについて
 仕事を受注しているのは法人であるものの、受注の目的は法人設立の公益目的である会員に対する就業機会の確保にあるといえ、会員が受注した業務を円滑に遂行することで、結果的に法人の次の受注につながる面はあるものの、事業推進による収益確保を目的としない公益社団法人の性格からすれば、やはり、法人の会員たるA組合員は、法人の労働力を確保するために法人が就労を求めた存在とはいえず、法人の不可欠な労働力とも認められないなど、A組合員は、法人の組織に完全に組み入れられていたとの組合の主張は採用できない。
(2)契約内容の一方的・定型的決定について
 仕事の契約内容や仕事の配分金の基準について、法人には一定の裁量があったといえる余地があったとはいえ、法人の事業の性質や目的に照らせば、法人が、会員の労働条件や提供する労務の内容について、一方的、定型的に決定していたものと評価することはできない。
(3)報酬の労務対価性について
 A組合員は仕事を完成しないと配分金を受け取ることができなかったことや、一定額の配分金の支払が保証されていないことなど、法人からA組合員に対して支払われた配分金は、明らかに労務の対価であったとまではいえない。
(4)業務の依頼に応ずべき関係について
 A組合員からの苦情に対する報復として法人が仕事を紹介しなくなったと考えることはできないなど、A組合員と法人は、業務の依頼に応ずべき関係にあったとの組合の主張は採用できない。
(5)広い意味での指揮監督下の労務提供、一定時間の場所的時間的拘束について
 作業内容からみて複数の会員で作業するためには一定の広さの作業場の確保が必要であり、法人が便宜的に作業場を提供していたとしても不自然ではなく、そのことのみから、直ちにA組合員の作業場所が法人の作業場内に限定されていたとまではいえない。
 また、法人が、会員に対し、配分金を支払うに当たり、作業確認書の提出を求めて作業の完了を確認することは当然必要な手続であり、この事実のみをもって、A組合員が、法人に対して、広い意味で指揮監督の下に労務提供を行っていたと解することはできない。さらに、A組合員は、作業終了後は法人の了解を得ることなく帰っており、時間的に拘束されていたともいい難い。
 これらのことなどからすると、A組合員は、法人の広い意味での指揮監督の下に労務提供を行っていたと解することも、労務の提供に当たり、日時や場所について一定の拘束を受けていたともいえない。
(6)顕著な事業者性について
 A組合員が、法人から独立した事業者性を有していたとは直ちには認められない。しかしながら、そのことが、A組合員の労働者性を積極的に肯定できるまでの事情ともいえない。 
掲載文献   

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