労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  山梨県労委平成30年(不)第1号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  令和元年8月28日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、法人の代表役員Bが、Bの長女の配偶者として、寺に居住していた組合所属の組合員Aとの間の師弟関係を、平成29年12月11日付け徒弟離籍届により解消したことが労働組合法第7条第1号の不当労働行為に当たるとして、組合が、29 年12月1日から30年6月18日までの間にA組合員の社会保険の加入ほか数項目を議題とする計5回の団体交渉を申し入れたところ、法人は、A組合員は労組法上の労働者に当たらないこと等を理由に団体交渉を拒否したことが同条第2号の不当労働行為に当たるとして、30年10月4日、山梨県労働委員会に救済申立て(「当初申立て」)がなされ、その後、法人がA組合員に毎月支払っていた15万円の金員につき、支払いを止めたことが、同条第4号の不当労働行為に当たるとして、31年3月12日に追加申立てがなされた事案である。
 山梨県労働委員会は申立てを棄却した。  
命令主文  本件申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 A組合員は、労組法上の労働者に当たるか。
 以下のとおり、労働者性を判断する諸要素を総合的に考慮すると、A組合員は、労働契約によって労務を供給する者又はそれに準じて団体交渉の保護を及ぼす必要性と適切性が認められる労務供給者には該当せず、法人との関係において、労組法上の労働者に当たるとはいえない。
(1)契約内容の一方的・定型的決定
 法人等との間で雇用契約書等が作成されたことはなく、業務内容等は家族の話合いにより決められ、交渉の余地があったと認められる。また、師弟関係は、労務の供給に関する契約と同視することは困難である。そうすると、法人等が、A組合員の労働条件や業務内容を一方的・定型的に決定していたとする事情は認められない。
(2)報酬の労務対価性
 本件金員は、実質的には、親族関係を基礎として、寺での生活に要する費用もしくは小遣いとして渡されていたものと見るべきであり、労務供給の対価として支払われていたということはできない。
(3)顕著な事業者性
 A組合員は、雇用等に関する権眼を有していた上、法人の施設等を自由に使用して事業活動を行うこと等が可能であって、法人に帰属すべき事業収入を同人の収入にすることができたことからすると、法人の事業との関係において、事業者性を有していたと認められる。
(4)業務に応ずべき関係
 師弟関係がそもそも、労務の供給に関する契約と認められないことから、契約関係に基づき、業務の依頼に応ずるよう求められていたものとはいえない。また、業務の依頼の有無に関わらず自己の都合により自由に行動していたことが認められ、間接的にも業務の依頼に応じるよう求められていたことはなかったと判断できる。
(5)広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束
 A組合員は、いつ、どこで、どのような活動をするか、同人の意思で自由に決めることができたなど、日常的に業務上の指示、命令、勤務時間の管理がなされていたとは認められず、A組合員が、広い意味で法人等の指揮監督の下に労務を供給していたと認めることはできず、また、一定の時間的場所的拘束を受けていたということもできない。
(6)相手方の事業組織への組入れ
 A組合員は、労働契約等の労務供給の契約の相手方として法人等の事業組織に組み入れられた者ではなく、婚姻により経営者であるBの家族となり、法人等の事業に経営者の一員としての立場で組み入れられた者と評価するのが相当である。

2 Bが、A組合員との師弟関係を解消したことは、同人が組合に加入したことを理由とする不利益取扱いに当たるか。
2-2 法人が、本件団交申入れを拒否したことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか。
2-3 法人が、本件金員の支払いを止めたことが、組合が当初申立てをしたことを理由とする報復的不利益取扱いに当たるか。
 1のとおりA組合員は、法人との間において労組法上の労働者とは認められない。
 したがって、本件申立ては、労組法第7条の不当労働行為が成立する要件を欠くものといえ、Bが、A組合員との師弟関係を解消したこと、法人が、本件団交申入れを拒否したこと、法人が、本件金員の支払いを止めたことは、いずれも労組法第7条に該当しない。 
掲載文献   

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