労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成29年(不)第15号
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社(「会社」) 
命令年月日  令和元年5月28日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   会社と契約を締結した教室指導者は、学習塾である教室の運営等を行い、生徒から徴収した会費の一定割合をロイヤルティとして会社に支払っている。
 教室指導者が結成した組合は、平成27年4月20日付けで会社に対し団体交渉を申し入れた。
 5月24日、組合と会社とは、会合を行い、主に教室指導の在り方について議論したが、話題がロイヤルティのことに移ると、会社は、この場は団体交渉ではないので、ロイヤルティについては話さない旨を述べた。
 その後も、組合が会社に対し団体交渉を申し入れる都度、会社は、会合の場で意見は聴くが団体交渉には応じない旨を回答し、会合において組合が新設教室の設置に関する保障(既存教室の近隣の一定範囲内に教室を新設しないことを指す。)や教室指導者の収入に言及すると、それらのことについては話さない旨や意見としては聴く旨を述べた。
 組合は、28年12月26日付けで、会社に対し、ロイヤルティの減額等を交渉事項として、団体交渉を申し入れた。これに対し、会社は、29年1月17日付けで、従前の話合いに準ずる形で意見を聴くが団体交渉には応じない旨を回答した。 1月25日に行われた会合において、組合がロイヤルティの減額や新設教室の設置に関して要求すると、会社は、この場では意見を聴くが、意見に対する回答や交渉は行わない旨を述べ、会合は終了した。
 本件は、①教室指導者は、労働組合法上の労働者に当たるか否か、②教室指導者が労働組合法上の労働者に当たる場合、組合が28年12月26日付けで申し入れた団体交渉に会社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否かが争われた事案である。

 東京都労働委員会は、会社に対し、不当労働行為であるとして、誠実団交応諾とともに、文書の交付及び掲示を命じた。  
命令主文  1 被申立人会社は、申立人組合が平成28年12月26日付けで申し入れた団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートルX80センチメートル(新聞紙2頁大)の自紙に、楷書で明瞭に墨書して、会社Y2本社及びY3本社並びに各事務局内の従業員及び教室指導者の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。
 年 月 日
組合
執行委員長 A殿
会社        
代表取締役 B

 当社が、貴組合から平成28年12月26日付けで申入れのあった団体交渉に応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
(注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)

3 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 
判断の要旨  1 教室指導者は、労働組合法上の労働者に当たるか否かについて
 本件における教室指導者は、フランチャイズ契約におけるフランチャイジーであるが、ア)会社の業務遂行に不可欠な労働力として会社の事業組織に組み入れられており、イ)会社が本件契約の内容を一方的・定型的に決定しているということができ、ウ)教室指導者の得る報酬は、労務の提供に対する対価又はそれに類する収入としての性格を有しており、エ)実態上、会社からの業務の依頼に対してこれに応ずべき関係にあり、オ)広い意味で会社の指揮監督の下に業務を遂行していると解することができ、その業務の遂行については一定の時間的場所的拘束を受けているということができる一方、カ)顕著な事業者性を認めることはできない。
 これらの事情を総合的に勘案すれば、本件における教室指導者は、会社との関係において労働組合法上の労働者に当たると解するのが相当である。

2 教室指導者が労働組合法上の労働者に当たる場合、組合が28年12月26日付けで申し入れた団体交渉に会社が応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否かについて
 教室指導者は、労働組合法上の労働者に当たると解するのが相当であり、教室指導者により構成される組合は、労働組合法上の労働組合であると認められる。
 組合が28年12月26日付団体交渉申入書により申し入れた団体交渉における交渉事項は、教室指導者である組合員と会社との間の本件契約を前提とするロイヤルティの減額、新設教室の設置に関する300メートル保障、教室賃料等補助金の支給等であった。これらの交渉事項は、労働組合法上の労働者である組合員の労務の対価としての性質を持つ報酬に直接の影響を及ぼす事項であるから、労働条件に関する事項であり、また、会社が使用者としての立場で実質的に決定又は支配できるものであるから、義務的団体交渉事項に当たると解するのが相当である。
 したがって、会社が、教室指導者が労働組合法上の労働者に当たらないとして、教室指導者によって構成される組合が申し入れた団体交渉に応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。 
掲載文献   

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