労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成30年(不)第50号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和元年7月19日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①組合が組合加入通知と同時に申し入れた組合員1名の解雇通告の撤回等についての団体交渉に応じなかったこと、②組合員2名を出勤停止の懲戒処分としたこと、③組合が不当労働行為救済申立てを行ったところ、同組合員らに懲戒解雇の予告通知をしたこと、④組合が、福祉事業廃止の方向性等について団体交渉を申し入れたところ、申立人の申入れを無視し、団体交渉に応じなかったこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 大阪労働委員会は、会社に対し、それぞれ不当労働行為であるとして、文書の手交を命じた。  
命令主文  被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。

 年 月 日
組合
執行委員長 A1様
会社       
代表取締役 B

 当社が行った次の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

(1)平成29年12月7日に貴組合から申入れのあった団体交渉に応じなかったこと。(第2号該当)
(2)平成29年12月9日、貴組合員A2氏及び同A3氏に対し、出勤停止の懲戒処分をしたこと。(第1号及び第3号該当)
(3)平成29年12月25日、貴組合員A2氏及び同A3氏に対し、懲戒解雇予告通知をしたこと。(第1号、第3号及び第4号該当)
(4)平成30年5月28日、同年6月5日及び同月25日に貴組合から申入れのあった団体交渉に応じなかったこと。(第2号該当) 
判断の要旨  1 29.12.7団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるか。
 組合が義務的団交事項を議題とする団交を申し入れている以上、会社には、団交をすることを了承しているか否か及び組合の要求内容が使用者にとって一方的と感じられるものであるか否かに関わりなく、団交に応じる義務があるのであるから、会社が29.12.7団交申入れに応じていないことについて、正当な理由があるとはいえない。
 また、会社は、平成30年4月5日付準備書面の提出時点において、当初は団交に応じる意味が不明であったが、現在は団交に応じると主張したものの、その後、会社が29.12.7団交申入れについて、団交に応じたと認めるに足る事実の疎明はない。
 したがって、29.12.7団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

2 会社が、両組合員を本件懲戒処分としたことは、正当な組合活動をしたことを理由とする不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。
(1)本件懲戒処分の理由
 本件懲戒処分の理由として会社が挙げる根拠事実は、実質的に、両組合員の正当な組合活動であり、本件懲戒処分は正当な組合活動を理由とするものであったというほかない。
(2)本件懲戒処分の手続き
 会社は、両組合員に対し、非違行為及び懲戒の理由を実質的に通知していないものといえ、したがって、本件懲戒処分は、就業規則の規定に従わずに行われたものと言わざるを得ない。また、就業規則第77条に、懲戒処分に先立って必要な指導及びロ頭注意を行う旨規定されていることが認められるところ、会社が、本件懲戒処分の通知に先立って、両組合員に対し、何らかの指導を行ったと認めるに足る事実の疎明もない。これらのことからすると、本件懲戒処分は、正当な手続を欠いたものといわねばならない。
(3)本件懲戒処分がなされた時点における労使関係
 会社は、本件懲戒処分を通知した日の前日に、組合の団交申入れに対して正当な理由なく団交を拒否し、かつ組合が団交を申し入れている要求事項について、組合の頭越しに両組合員との直接交渉をしようとしたのであるから、本件懲戒処分がなされた時点において、会社が組合を嫌悪していたことは明らかである。
 以上のことを併せ考えると、会社が両組合員を本件懲戒処分としたことは、正当な組合活動をしたことを理由とする不利益取扱いに当たり、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為である。
 また、会社が両組合員を本件懲戒処分としたことは、それにより組合員らの組合活動を萎縮させる効果を持つものであるから、組合に対する支配介入にも当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

3 会社が、両組合員に対して本件懲戒解雇予告通知をしたことは、正当な組合活動をしたことを理由とする不利益取扱い、組合に対する支配介入及び不当労働行為救済申立てを行ったことを理由とする不利益取扱いに当たるか。
(1)不利益性
 本件懲戒解雇予告通知は、両組合員に就労の継続について不安を抱かしめるとともに、将来における両組合員の労働契約上の地位を危うくするものであるから、不利益性を有するものであることは明らかである。
(2)本件懲戒解雇予告通知の理由
 会社は、両組合員に対して解履の予告を通知しているのであるから、本件懲戒解雇予告通知は、本件懲戒解雇を本件懲戒処分と一連の処分として通知したものとみることができる。そうすると、本件懲戒処分が正当な組合活動をしたことを理由としたものであるから、本件懲戒解雇予告通知もまた、正当な組合活動をしたことを理由としてなされたものとみるのが相当である。
(3)本件懲戒解雇の手続き
 会社が、本件懲戒解雇予告通知に先立って、両組合員に対して非違行為及び懲戒の事由を通知したとは評価できず、また、本件懲戒解雇予告通知に先立って、両組合員に対して弁明の機会を付与したとも認めるに足る事実の疎明はない。したがって、本件懲戒解雇に係る手続は、正当性を欠いたものであったと言わさるを得ない。
(4)本件懲戒解雇予告通知がなされた当時の労使関係
 本件懲戒処分がなされた時点において会社が組合を嫌悪していたことは明らかであり、このことに、本件懲戒処分による出勘停止期間中の平成29年12月12日に組合が申し立てたことが認められることを併せ考えると、本件懲戒解雇予告通知がなされた時点において、会社が組合を嫌悪していたことは、容易に推認できる。
 以上のことを併せ考えると、会社が両組合員に対し本件懲戒解雇予告通知をしたことは、正当な組合活動をしたことを理由とする不利益取扱いに当たり、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為である。
 また、会社が両組合員に対し本件懲戒解雇予告通知をしたことは、それにより組合員らの組合活動を萎縮させる効果を持つものであるから、組合に対する支配介入にも当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
 さらに、本件懲戒解雇予告通知は、組合が不当労働行為救済申立てをしたことを理由になされた不利益取扱いとみるほかなく、労働組合法第7条第4号に該当する不当労働行為である。

4 30.5.28団交申入れ、30.6.5団交申入れ及び30.6.25団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるか。
 30.5.28団交申入れ、30.6.5団交申入れ及び30.6.25団交申入れの要求事項は、いずれも福祉事業の廃止に関するものであるところ、福祉事業が廃止になれば、両組合員はA型サービスを受けられなくなり、サービス利用契約に基づく雇用契約の存続にも重大な影響を及ばすことになるのであるから、これら団交申入れの議題は両組合員の労働条件に関するものであり、したがって、義務的団交事項である。
 それにもかかわらず、会社は、団交申入書を全て受領しておきながら、これら団交申入れに対して、団交に応じないばかりか回答すらしていない。また、会社は、本件審査において、団交に応じない正当理由について主張、立証すべきところ、何ら主張せず、30.5.25調査以降は当委員会の期日に出頭すらしていない。
 かかる会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるというほかなく、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。  
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