労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成28年(不)第46号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社・Y2会社 
命令年月日  令和元年8月16日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、Y2会社らが、①組合員1名を、有期雇用契約制度を導入して有期雇用契約とした上で雇止めとしたこと、②雇用期間中に、同組合員に対し、工場への立入りを禁止し、タイムカードを撤去し、トラックからの私物の回収等を求め、自宅待機を命じたこと、③組合に対し、同組合員の工場内での言動について従業員らが署名及び押印した嘆願書を提出したこと、④申立外警備会社又は警察に働きかけて、同警備会社の警備員に対する暴行を理由に同組合員を逮捕させたこと、⑤警察による組合事務所の搜索等に協力したこと、が不当労働行為であるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労働委員会は、Y2会社に対し、組合に対する不利益取扱い・支配介入の不当労働行為とし、文書の手交を命じ、Y1会社に対する申立て及びY2会社に対するその余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y2会社は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。

 年 月 日
組合
執行委員長 A1様
Y2会社      
代表取締役 B

 当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

(1)平成27年11月10日、貴組合員A2氏に対し、工場への立入りを禁止し、タイムカードを撤去し、トラックからの私物の回収等を求め、自宅待機を命じたこと(1号該当)。
(2)平成27年11月18日、貴組合に対し、貴組合員A2氏の工場内での言動について、当社従業員等が署名及び押印した「嘆願書」と題する書面を提出しこと(3号該当)。

2 申立人の被申立人Y1会社に対する申立て及び被申立人Y2会社に対するその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 Y1会社は、A2組合員の労働組合法上の使用者に当たるか。
 A2組合員が雇用契約を締結しているのはY2会社であって、Y1会社とA2組合員との問に直接の雇用関係がない。
 両社がY1会社の一定の影響力の下に連携して業務を遂行していたとみることができるとはいえ、Y2会社には財産面、会計面及び業務の指揮命令系統においてY1会社からの独立性が認められるのであるから、両社が実態において同一の会社であるということはできない。
 また、Y2会社が雇用する労働者の労働条件を、Y1会社が、現実的かつ具体的に支配・決定していたと認めるべき事情の疎明もない。
 したがって、Y1会社は、A2組合員の労働組合法上の使用者に当たるとはいえず、Y1会社に係る申立ては、棄却する。

2 Y2会社らが、A2組合員に対し、平成27年1月に契約社員制度を導入して有期雇用契約とした上で、本件雇止めとしたことは、正当な組合活動をしたが故の不利益取扱いに当たるか。
 Y2会社がA2組合員に対し、平成27年1月に契約社員制度を導入して有期雇用契約とした上で、本件雇止めとしたことは、正当な組合活動をしたが故の不利益取扱いに当たるとはいえず、この点に係る組合の申立ては棄却する。

3 Y2会社らが、平成27年11月10日、A2組合員に対し、工場への立入りを禁止し、タイムカードを撤去し、トラックからの私物の回収等を求め、自宅待機を命じたことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか。
 平成27年11月10日にY2会社が本件自宅待機命令等をしたことは、組合の抗議行動をけん制するためになされた不利益取扱いであるから、組合員であるが故の不利益取扱いに当たり、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為である。

4 Y2会社が、組合に対し27.11.18嘆願書を提出したことは、組合に対する支配介入に当たるか。
 平成27年11月18日付けでY2会社が組合に対し、両社の従業員らの署名及び押印のある27.11.18嘆願書を提出したことは、Y2会社の従業員の組合への加入を思いとどまらせるものであるとともに、A2組合員による組合活動を抑止する効果を持ち、組合の活動を萎縮させるものであるから、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。

5 27.12.2逮捕について、Y2会社らは、警備会社又は警察に働きかけを行ったといえるか。いえる場合、A2組合員が逮捕されたことは、組合に対する支配介入に当たるか。
 会社側と警察が結託していた、又は27.12.2逮捕に会社側が深く関わっていたということはできない、
 したがって、27.12.2逮捕についてY2会社側が警備会社又は警察に働きかけを行ったとはいえず、その余について判断するまでもなく、この点に係る組合の申立ては棄却する。

6 Y2会社らが、平成28年2月17日、警察による組合事務所の捜索等に協力したことは、組合に対する支配介入に当たるか。
 Y2会社側が、平成28年2月17日、警察による組合事務所の捜索等に協力したことは、組合を嫌悪してなされたものとも、組合に打撃を与えて組合を解体しようとしたものともいえない。
 以上のとおりであるから、Y2会社側が、平成28年2月17日、警察による組合事務所の捜索等に協力したことは、組合に対する支配介入に当たるということはできず、この点に係る組合の申立ては棄却する。 
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約703KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。