労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成29年(不)第41号
申立人  X組合(組合) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  令和元年7月5日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、組合との団体交渉において、①交渉を途中で投げ 出して退席したこと、②(i)概ねの合意があった議題についての交渉を、理由もなく反故にしたり、(ii)組合員のシフト変 更要求を、正当な理由なく拒否したり、(iii)職場の安全確保について、 一旦は相談するとした回答を変更し、事実上の交渉拒否を行ったり、(iv)賃金改定要求について合理的説明を拒否し、 義務がないとのみ回答するなどの対応を行ったこと、が不当労働行為に当たるとして申し立てられた事件である。
 大阪府労働委員会は、会社に対し、誠実な団体交渉に応じるとともに、文書の掲示を命じた。  
命令主文  1 被申立人は、①保管ボックスの設置要求、②組合の組合員A2のシフト変更要求、③ステップ台及び通路のレーンの改善並びに空調の設置要求、④賃金改定要求、に係る団体交渉 に、 誠実に応じなければならない。
2 被申立人は、 申立人に対し、下記の文書を速やかに手交するとともに、縦2メートル、横1メートル大の白色板に下記の文書と同文を明瞭に記載して、被申立人の本社正面玄関付近の見やすい 場所に、及び、縦1メートル、横50センチメートル大の自色板に下記の文書と同文を明瞭に記載して、 日本赤十字社大阪赤十字病院内にある被申立人の休憩室内の従業員の見やすい場所に、 それぞれ1か月間掲示しなければならない。

 年 月 日
組合
執行委員長 A1 様
会社       
代表取締役 B
当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、 労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、 このような行為を繰り返さないようにいたします。

(1) 平成29年4月26日の貴組合との団体交渉において、保管ボックスの設置要求に対して、不誠実な対応をしたこと。
(2) 平成29年4月26日及び同年6月27日の貴組合との団体交渉において、 貴組合員A2氏及び当時貴組合員であったA3氏のシフト変更要求に対して、不誠実な対応をしたこと。
(3) 平成29年5月23日及び同年6月27日の貴組合との団体交渉において、 ステップ台及び通路のレーンの改善並びに空調の設置要求に対して、不誠実な対応をしたこと。
(4) 平成29年6月27日及び同年9月21日の貴組合との団体交渉において、賃金改定要求に対して、 不誠実な対応をしたこと。
(5) 平成29年8月16日の貴組合との団体交渉において、途中で追席したこと。 
判断の要旨  1 29.8.16団交で会社が途中退席したことは、不誠実団交に当たるか。
 29.8.16団交において、会社が交渉開始後わずか10分で途中退席したことは、不誠実であったと言わざるを得ず、 労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
2 団交における会社の一連の対応は、不誠実団交に当たるか。
(1) 29.4.26団交における、鍵のかかるボックス設置に係る会社の対応
 会社は、 自ら提案し、検討することを約束した保管ボックスの設置を拒否するに当たって、具体的な検討内容ではなく、便宜供与の法的義務は無いといった抽象的な説明をするのみで、組 合の理解を得られるような具体的な理由や検討した内容を一切示すことなく、これまでの交渉を唐突に反故にした、と言わざるを 得ない。
 したがって、29.4.26団交における保管ボックスの設置に係る会社の対応は、不誠実である。
(2) 29.4.26団交及び29.6.27団交における、組合員のシフト変更要求に係る会社の対応
 会社には、団交における組合からの要求に対し、合意あるいは譲歩する義務まではないが、29.6.27団交における会社の 対応は、前回の交渉で十分検討する旨述べたことに対して、 個人の評価にもつながることなのでこの場では回答できないとか、組合員本人が直接会社に間い合わせれば対応すると述べるのみで、真撃に検討した結果を組合に回答していると は到底いえない。また、そもそも組合員個人の評価等に係る事項であっても、組合が、本人の了承を得て労働条件に係るものとし て団交の場で交渉を求める場合は当然に義務的団交事項になるのであるから、本人が会社に直接問い合わ せれば詳細な理由を本人に伝えるとして、組合に説明や回答はしないとしたのは、 正当な理由なく組合への説明を拒む不誠実な対応である。
 したがって、29.4.26団交及び29.6.27団交における、組合員のシフト変更要求に係る会社の対応は、不誠実である。
(3) 29.5.23団交及び29.6.27団交における、ステップ台及び通路のレーンの改善並びに空調の設置に係る会社の対応
 ステップ台及び通路のレーンの改善並びに空調の設置についてなど、労働環境の改善についての要求は、26.8.8要求書で 組合が要求し、29.2.15団交で議題となり、その後、会社は29.5.18回答書で組合に回答し、これを踏まえて、 29.5.23団交及び29.6.27団交が行われていることが認められる。
  このことについて、会社が一旦は「病院と相談する」と回答しながら、 次の交渉では 「何もしない」 と回答を変更し、 事実上の交渉拒否を行った旨組合が主張する一方、会社の主張は採用できない。
 したがって、29.5.23団交及び29.6.27団交における、ステップ台及び通路のレーンの改善並びに空調の設置に係 る会社の対応は、不誠実である。
(4) 29.6.27団交及び29.9.21団交における、賃金改定要求に係る会社の対応
 賃金改定要求については、29.6.27団交及び29.9.21団交において交渉され、いずれの団交においても会社は、 この要求には応じない旨回答している。
 これに関して、①29.6.27団交については、組合が、会社は時間給制であるので変えることができないなどと回答になら ない回答を行っている旨、②29.9.21団交については、組合が、数字を挙げて説明を求めても、会社が最終的には総合的に 決めているとの回答を行つたり、 会社側のメリットの説明を求めること自体不誠実である旨、主張する一方、会社の主張は採用できない。
 したがって、29.6.27団交及び29.9.21団交における、賃金改定要求に係る会社の対応は、不誠実である。
 以上のとおりであるから、(1)29.4.26団交における、鍵のかかるボックス設置に係る会社 の対応、(2)29.4.26団交及び29.6.27団交における、組合員のシフト変更要求に係る会社の対応、 (3)29.5.23団交及び29.6.27団交における、ステップ台及び通路のレーンの改善並びに空調の設置に係る会社の 対応、(4)29.6.27団交及び29.9.21団交における、賃金改定要求に係る会社の対応は、 いずれも不誠実団交に当たり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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