労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  兵庫県労委平成29年(不)第5号
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社、Y2会社 
命令年月日  平成31年4月25日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   申立外C社の従業員として、C社とY1会社との請負契約等に基づき就労していたA1らが、同契約終了に伴い、平成29年3月30日、C社を解雇され、同年4月1日からY1会社Y3工場の巾木工程及び化成品工程に従業員を派遣することとなったY2会社は、Y3工場の上記工程等で就労する派遣労働者を採用するに当たり、組合員であるA1らのみを不採用としたため、組合は、Y1会社に対して、Y3工場での就労継続等を議題とする団体交渉を、Y2会社に対して、不採用理由の説明等を議題とする団体交渉をそれぞれ求めたが、Y1会社及びY2会社はいずれも拒否した。
 そこで、組合は、かかるY1会社及びY2会社による団体交渉の拒否が労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号の不当労働行為に当たり、Y2会社によるA1らの不採用が同条第1号の不当労働行為に当たるとして、本件救済申立てを行った。
 兵庫県労働委員会は、Y2会社に対し、A1らを採用したものとして取り扱うこと等を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y2会社は、申立人の組合員であるA1、A2、A3、A4及びA5を平成29年3月20日の面接時に提示した条件で同年4月1日に採用したものとして取り扱い、その後の労働契約の更新については、同日にY1会社Y3工場の巾木工程及び化成品工程に派遣した者と同様に行わなければならない。
2 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 Y1会社は、組合からの平成29年3月24日付け「団体交渉要求書」に係る団体交渉に応じるべき「使用者」に該当するか(争点1)
(1) Y1会社でのA1らの就労状況について
 C社は、独立した体制で請負業務を実施しており、Y1会社は発注者として必要な指示をする以上に、C社の従業員である組合員の労働条件に対して、C社と同視しうる程度に現実的かつ具体的な支配力をもっていたという事実は認められない。
(2) Y1会社が、Y2会社への移籍及び労働条件について働きかけたことについて
 Y2会社がC社の従業員を採用するに際して、説明、面接、合否通知等全てY2会社が手続を行っており、その一部でもY1会社が行ったとは認められないことから、Y1会社がY2会社に代わって採否を決定していたとまでは認められない。このためY1会社がC社の従業員について知り得た事情や要望をY2会社に伝えていたということをもって、Y2会社によるA1らの採用について、Y1会社が現実的かつ具体的に支配、決定できる地位にあったということはできない。
(3) したがって、Y1会社は組合からの平成29年3月24日付け団体交渉要求書に係る団体交渉に応じるべき使用者といえず、Y1会社が上記団体交渉を拒否したことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。
2 Y2会社は、組合からの平成29年4月1日付け「抗議及び団体交渉要求書」に係る団体交渉に応じるべき「使用者」に該当するか(争点2)
(1) 本件において明らかにされた事実をもっても、適性テスト及び面接によりA1らとY2会社との間で労働契約が成立したとの組合の主張を根拠づける事実を認めることはできない。
(2) Y2会社の採用決定過程をみると、少なくともA1らが面接を受けた平成29年3月20日までは、A1らを含むC社の全従業員を採用することは、Y2会社において既定の方針であったと推認される。このような事情を踏まえると、Y2会社はA1らとの関係において、近い将来において労働契約関係が成立する可能性が現実的かつ具体的に存在するので、労組法における使用者に当たるということができる。
(3) 以上のことから、Y2会社が組合からの平成29年4月1日付け「抗議及び団体交渉要求書」に係る団体交渉を拒否したことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
3 Y2会社が、A1ら5人を採用しなかったことは、組合員であることを理由とした不利益取扱いに該当するか(争点3)
(1) 不利益取扱い
 C社の従業員が、C社との労働契約関係の下で従事していた業務と同一の業務を、C社からY2会社への事業の引継ぎによって、Y2会社との労働契約関係の下で行うという労働契約関係の移行過程で採用拒否がなされた事案において、Y2会社がC社の従業員で結成された労働組合の組合員であることの故をもってA1らを不採用としたと認められる場合には、最高裁判決(JR北海道・日本貨物鉄道事件判決)のいう「特段の事情」がある場合に該当し、労組法第7条第1号の不当労働行為が成立するというべきである。
(2) 不当労働行為意思
 申込みみなし制度の承諾書の到達及び兵庫労働局の立入調査が、A1らをY3工場から排除したいという思いをY1会社に抱かせる動機となり、このY1会社の意向を慮ったY2会社がA1らを組合の組合員であるが故に不採用と決定したと推認するのが合理的である。
 以上のことから、Y2会社によるA1らの採用拒否は、組合の組合員であることの故をもって不利益取扱いをしたものであり、労組法第7条第1号の不当労働行為に該当すると判断する。 
掲載文献   

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