労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成29年(不)第33号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  法人Y(「法人」) 
命令年月日  平成31年2月22日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   法人は、法人が運営するB2高校において社会保険の適用のある有期限雇用者である職員(契約制職員)を対象とする希望退職者を募集したが、募集定員に達しなかったことから、募集定員に達しない人数については、契約制職員の契約を更新しないこととし、組合の書記長である契約制職員A2を雇止めとした。
 本件は、法人が、上記の理由により、1年を雇用期間とする嘱託契約を6年間にわたり締結していた組合の書記長Aを雇止めとしたことが不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、法人に対し、A2の雇用契約が更新されたものとしての取扱い、バックペイ及び文書手交を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人組合員A2に対し、同人との間で平成28年3月30日付けで締結した雇用契約が、同29年4月1日以降も更新されてきたものとして取り扱い、同人を同28年度に就けていた職又はその相当職に就けなければならない。
2 被申立人は、申立人組合員A2に対し、平成29年4月1日以降、同28年度に就けていた職又はその相当職に就けるまでの間、同人が就労していれば得られたであろう賃金相当額と既支払額(同29年5月10日付けのB2嘱託雇用契約書による支払額を含む)との差額を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。

年 月 日
組合
委員長 A1様
法人       
理事長 B1

 当法人が貴組合員A2氏を平成29年3月31日をもって雇止めとしたことは大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 
判断の要旨  1 不利益性について
 A2組合員は平成23年度から嘱託職員となり、同年度から同28年度までの各年度について、法人との間で、4月1日から翌年3月31日を雇用期間とする月給制の嘱託雇用契約が毎年4月1日頃に締結されていたこと等が認められ、雇用期間を1年間とする契約が相当長期にわたって更新されてきたといえ、A2組合員が、平成29年度以降も契約が更新されることを期待するのには合理的な理由がある。
 法人は契約制職員を対象に本件希望退職を実施し、しかも、その退職条件には、退職加算金として基本給の3か月分の金銭の支給が含まれていることからすると、法人も、A2組合員のような契約制職員について、特段の事情がなければ雇用契約を更新することを前提に扱っていたというのが相当である。
 このような状況下での雇止めは、解雇に準ずる不利益性を有することは明らかである。
2 雇止めの必要性及び合理性について
 B2高校において、本件希望退職の定員に達しなかった人員数を雇止めにしたことについて、経営再建のために人件費の削減が必要であったとしても、他の手段による削減の努力が尽くされていない上、慎重な検討やA2組合員や組合に対する十分な説明を行うといった適正な手続を経たものということもできず、その合理性や必要性について疑わざるを得ない。
3 組合員であることを理由にしたものであるかについて
  組合の書記長、交渉窓口担当者であるA2組合員が、組合活動の中心人物であることは明らかであること、平成26年10月29日、組合は、当委員会に対し、法人が交渉窓口担当者(A2組合員)の交代を求め、それができない場合は、当面、窓口対応を取りやめるとの対応を行ったことは支配介入に当たるとの点を含む26-64事件の不当労働行為救済申立てを行い、同28年11月24日、当委員会は支配介入に該当すると判断した命令を発し、同年12月7日、法人はこの命令について再審査申立てを行ったこと、この救済命令が発せられた後の同29年1月12日に、法人は、A2組合員を対象者に含む本件希望退職を発表したこと、法人は、同年3月6日の臨時教職員会において、3.6団交の開催前であるにもかかわらず、A2組合員を同年度末の退職者として発表したこと等が認められる。
 以上のことから、法人は、A2組合員とその組合活動を好ましからざるものとみていたと推認することができ、法人が、本件希望退職の定員に達しなかった人員数を雇止めにすることにし、その対象にA2組合員を含めたことは、A2組合員が組合員であることを理由にしたものというのが相当である。
4 結論
 したがって、法人が、A2組合員を平成29年3月31日をもって雇止めとしたことは、組合員であるが故の不利益取扱いであるとともに、組合活動の中心的人物を排除することにより組合の弱体化を図ったものと判断され、かかる法人の対応は、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する。 
掲載文献   

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