概要情報
事件番号・通称事件名 |
東京都労委平成28年(不)第71号 |
申立人 |
X1組合、X2組合(「組合」) |
被申立人 |
Y1会社(「会社」) |
命令年月日 |
平成31年2月5日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
A3は、平成元年7月に申立外C2会社C3支店に運転手として採
用されたが、平成26年10月、C3支店はC2会社の組織再編に伴い、会社の支店となり、A3らC3支店の従業員が会社に転
籍となった。C3支店で勤務する組合員らは申立外C1組合を結成し、A3が執行委員長に就任した。以降、C1組合と組合と
は、結束して組合活動を行い、C2会社からの給与天引協定締結の要求や、三六協定における時間外労働時間の上限を延長したい
とする申入れには、反対し続けた。
平成28年5月、C1組合は組合と統合し、A3は書記長に就任した。
同年9月1日、会社は、A3書記長に対し、C2会社への出向及び同社C5事業所勤務(以下「本件出向」という。)を命じ
た。
本件は、会社が、A3書記長に対し、本件出向を命じたことが、組合員であることを理由とした不利益取扱い及び組合の運営に
対する支配介入に当たるか否かが争われた事案であり、東京都労働委員会は、その申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件出向に至るまでの労使関係
会社の言動には、組合を嫌悪する態度が多くみられ、組合に対する使用者の対応として問題であるといわざるを得ない。そし
て、本件出向当時においても、
組合と会社との間に三六協定等を巡る意見の対立がみられるのであるから、本件出向が、組合を嫌悪する会社の不当労働行為意思の下に行われたと推認させる事情があったといえ
る。
2 本件出向に関わる諸事情の検討
① 業務上の必要性
A3書記長は、本件出向時まで7年半にわたり同一事業所で配車業務に従事しており、本件出向には、不正防止といった観点か
らも、 業務上の必要性があったといえる。
② 人事上・経済上の不利益性
A3書記長は、本件出向後も経験を生かせる配車業務に従事しており、会社の出向規程によれば、賃金、
賞与は会社の給与規程が適用され、退職金等において会社従業員と差別することはないとされており、そのほかに、本件出向によって同書記長が経済的不利益等を受けたとの事実
は何ら疎明されておらず、本件出向が同書記長に明らかな不利益を与えたとまではいえない。
③ 組合活動上の不利益性
本件出向後、A3書記長への負担が増していることは認められるものの、本件出向後も同書記長は組合活動を継続しており、三
六協定等における時間外労働時間の延長について、組合の姿勢に変化が生じているわけでもないから、本件出向により、組合活動
に大きな支障を来すほどの不利益が生じたとまではいえない。
3 結論
以上要するに、本件出向に至るまでの労使関係をみると、会社が組合を嫌悪していたことを推認させる事情が認められるもの
の、本件出向には、業務上の必要性があり、現に一定の成果も上がっていることに加え、本件出向により、A3書記長に人事上・
経済上の明らかな不利益があったとはいえず、組合活動に大きな支障を来すほどの不利益が生じたともいえない。
したがって、本件出向が組合員であることを理由とした不利益取扱い及び組合の運営に対する支配介入に当たるとまではいえな
い。 |
掲載文献 |
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