労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  愛知県労委平成29年(不)第11号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y学院(「学院」) 
命令年月日  平成31年3月8日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、被申立人Y学院が、①申立人X組合に対して組合ニュースの教職員用メールボックス(以下「メールボックス」という。)への投函を禁止したこと及び②教育研究に係る活動(以下「教育研究活動」という。)以外の配布物のメールボックスへの投函には学院の許可が必要となると掲示により意見を明らかにしたことが労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第3号に、③組合の執行委員長であるA1及び副執行委員長であるA2に対して自宅待機命令を発したことが同条第1号及び第3号に、それぞれ該当する不当労働行為であるとして、平成29年10月20日に申立てがなされ、③に係る申立てについては平成30年1月16日に取り下げられた事件である。
 なお、請求する救済内容は、上記①に係る平成29年4月3日付け通知及び同年5月29日付け回答の撤回、上記②に係る掲示物の撤去並びに謝罪文の交付及び掲示である。
 愛知県労働委員会は、メールボックスの使用を妨げないことの文書交付を命じた。 
命令主文  1 被申立人は、申立人が郵便仕分けボックスを介して組合ニュースを配布することを妨げてはならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記内容の文書を本命令書交付の日から7日以内に交付しなければならない。


 当学院が、 貴組合に対して平成29年4月3日付けで組合ニュースの教職員用メールボックスへの投函を禁止したこと及び同年6月8日、教育研究に係る活動以外の配布物の教職員用メールボックスへの投函には当学院の許可が必要となると掲示により意見を明らかにしたことはいずれも労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である と愛知県労働委員会によって認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
平成 年 月 日

X組合
執行委員長 A1 様
Y学院     
理事長 B1
 
判断の要旨  1 学院が組合に対し、平成29年4月3日付けで組合ニュースのメールボックスへの投函を禁止したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか(争点1)について
ア 平成29年4月3日付けの通知について
 学院は組合ニュースを全面的に禁止したものではない旨主張するものの、当該通知の内容は、その文理上、組合による組合ニュースのメールボックスへの投函を施設管理規程に違反する行為に該当すると明言して例外なく禁止するものであると解するのが相当であるから、学院は、当該通知により組合ニュースのメールボックスへの投函を禁止したといえる。
イ 組合による組合ニュースのメールボックスへの投函に係る学院の従前の取扱いについて
 相当長期間にわたり、メールボックスへの投函という配布方法により組合ニュースを受け取っていた学院は、遅くとも組合による組合ニュースのメールボックスへの投函を禁止するまでには、労使慣行といえるかどうかは別にして、組合に対してその投函を許容し、容認してきたものと評価するのが相当である。
ウ 組合ニュースのメールボックスへの投函が禁止されたことによる組合の活動への影響について
 組合による組合ニュースの配布に当たり、メールボックスへの投函は組合にとって重要な情報伝達の手段であったといえるところ、組合ニュースのメールボックスへの投函が禁止されたことにより、従前と比較して、組合ニュースの配布に係る時間及び労力が大幅に増加したにもかかわらず、約半数の組合員にしか配布できなくなり、現に組合員への情報伝達に支障が生じていたのであるから、 組合の活動に大幅な不便や不利益が生じたといえる。
エ 組合ニュースのメールボックスへの投函の禁止に係る協議について
 学院は、組合ニュースのメールボックスへの投函を禁止することについて、当該禁止以前に組合と一切協議しなかったといえる。
 したがって、学院が組合と組合ニュースのメールボックスへの投函を禁止することについて協議を尽くしたということはできない。
オ 理由が正当であるとする主張の合理性について
 組合ニュースの内容は組合の組合員を含む教職員の労働条件及び処遇に直接関係するもの及び何らかの形で影響を与えると考えられるもの並びに一般的な組合活動に関するものであるといえ、組合ニュースの表現は個人及び学院の運営に関するひぼう中傷とまではいえず、また、A1執行委員長に対する中傷ビラがメールボックスに投函され、組合から調査を求められたことを施設管理規程ないし経理規則を厳格に適用するようになった契機ということもできないことから、施設管理規程ないし経理規則を厳格に適用したことに正当な理由がある旨の学院の主張には合理的な理由がなく採用できない。
カ 学院が組合による組合ニュースのメールボックスへの投函を禁止した時期の労使関係について
 学院が組合による組合ニュースのメールボックスへの投函を禁止した時期の労使関係は相当悪化していたといえる。
キ 結論
 以上よ り、学院が組合による組合ニュースのメールボックスへの投函を禁止したことは、長年にわたり許容し、容認してきた取扱いを大きく変更し、その取扱いに一方的な制限を加えようとするもので、組合活動に大幅な不便や不利益を生じさせるものであるにもかかわらず、学院は、事前にその取扱いの変更について組合と協議を尽くさず、また、合理的な理由もなく当該行為を行ったものであって、さらに、学院の当該行為が、組合と学院との関係が相当悪化していた時期に行われたことに鑑みれば、組合の組合活動を制限することを意図した支配介入であるというべきである。
 よって、学院が組合に対し、平成29年4月3日付けで組合ニュースのメールボックスへの投函を禁止したことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
2 学院が、平成29年6月8日、教育研究活動以外の配布物のメールボックスへの投函には学院の許可が必要となると掲示により意見を明らかにしたことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか(争点2)について
ア 学院が平成29年6月8日の掲示により教育研究活動以外の配布物のメールボックスへの投函には学院の許可が必要となると意見を明らかにしたことは、組合の活動に大幅な不便や不利益を生じさせることを可能にするものであるとともに、長年にわたる取扱いを大きく変更するものであるにもかかわらず、学院は、事前にその取扱いの変更について組合と協議を尽くさず、また、合理的な理由もなく当該行為を行ったものであって、さらに、学院の当該行為が、組合と学院との関係が相当悪化していた時期に行われたことに鑑みれば、組合の組合活動を制限することを意図した支配介入であるというべきである。
イ 学院は、組合の決算報告等重要な事項を報告する組合ニュースがメールボックスに投函されていないことから、組合はメールボックスを利用する場合と利用しない場合を適宜使い分けているとして、メールボックスの存在が必要不可欠ということもない旨主張するが、A1執行委員長が会計報告は組合の内部情報であるため組合ニュースには掲載しない旨及び平成29年4月3日以前は発行した組合ニュースを全てメールボックスに投函していた旨証言しているのに対し、これを覆すに足る疎明がないことからすれば、組合による組合ニュースの配布は全てメールボックスに投函する方法により行われていたと認められるのであるから、学院の当該主張はその前提を欠き、採用できない。
ウ よって、学院が、教育研究活動以外の配布物のメールボックスへの投函には学院の許可が必要となると掲示により意見を明らかにしたことは、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

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