労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神奈川県労委平成28年(不)第15号
ほうび等不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  会社Y1、会社Y2 
命令年月日  平成31年1月11日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、申立人組合が、被申立人会社Y1及び同会社Y2に対して、組合員A2の労働問題を交渉事項とする団体交渉申入れを行った後に、会社Y1らが、A2と直接交渉し、組合から脱退させようとしたこと、当該直接交渉を行った際に、組合を誹諾中傷するような発言をしたことが不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件で、神奈川県労働委員会は、会社Y1らに対し、A2と直接交渉を行うことによる組合からの脱退勧奨等を行わないこと及び文書手交を命じた。 
命令主文 
1 被申立人会社Y1は、申立人の組合員であるA2に対して同人と直接交渉を行うことにより申立人からの脱退勧奨を行ったり、申立人を誹諾中傷する発言を行ったりするなどして申立人の運営に対する支配介入を行ってはならない。

2 被申立人会社Y1は、本命令受領後、速やかに下記の文書を申立人に手交しなければならない。

 当社が、貴組合の組合員であるA2と直接交渉を行い、貴組合から脱退させようとしたこと及び直接交渉を行った際の発言は、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると神奈川県労働委員会において認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
  平成 年 月 日 
 組合 
  執行委員長 A1殿
会社Y1
 代表清算人 B1

3 被申立会社Y2は、申立人の組合員であるA2に対して同人と直接交渉を行うことにより申立人からの脱退勧奨を行ったり、申立人を誹謗中傷する発言を行ったりするなどして申立人の連営に対する支配介入を行ってはならない。

4 被申立人会社Y2は、本命令受領後、速やかに下記の文書を申立人に手交しなければならない。

 当社が、貴組合の組合員であるA2と直接交渉を行い、貴組合から脱退させようとしたこと及び直接交渉を行った際の発言は、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると神奈川県労働委員会において認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
  平成 年 月 日 
 組合 
  執行委員長 A1殿
会社Y2 
 代表取締役 B1 
判断の要旨  1 争点①(会社Y1が、組合から平成28年7月4日付けで申入れのあった団体交渉の開催を巡り、A2に対して直接交渉を行ったこと及び同交渉における会社Y1の発言内容等は、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。)
 使用者の利益代表者であったことが明らかなB1取締役が、C1からの電話の後、組合に対して何ら連絡することもなく、組合員であるA2に対して直接連絡を取り面談を2回実施し、A2に対し、C1における就労に関して同人が不利な状況に置かれることを示唆しながら、組合に加入していることを問題視し、組合からの脱退を勧奨する発言を行ったこと、組合に対する印象を述べたり、組合を批判する発言を行ったことは、組合の運営や組合活動を阻害するものであるから、組合の運営に対する支配介入に当たる。

2 争点②(会社Y2は、A2との関係において、労組法第7条の「使用者」に当たるか否か。また、会社Y2が労組法第7条の「使用者」に当たる場合、組合から平成28年7月4日付けで申入れのあった団体交渉の開催を巡り、A2に対して直接交渉を行ったこと及び同交渉における会社Y2の発言内容等は、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。)
ア 会社Y2の使用者性について
  労組法第7条にいう「使用者」とは、労働契約上の当事者である雇用主に限られるものではなく、労働者と労働契約にはない事業主であっても、労使関係という観点からは労働契約関係にある事業主と実質的に同一と認められる事業主や、労働契約関係にある事業主の地位を承継した事業主もまた、「使用者」に当たると解される。
 会社Y1及び会社Y2の代表取締役にはB1が就任していること、本社所在地は両社ともに同一の場所であること、両社の事業内容が会社Y1が特定労働者派遺事業で会社Y2は労働者派遣事業であることが認められる。
 次に、会社Y1と会社Y2の関係性についてみると会社Y2は、特定労働者派遣事業を行っていた会社Y1が、改正労働者派遺法に対応するために一般労働者派遣事業許可の申請を行ったところ、会社Y1で雇用している派遣労働者の社会保険への加入状況が労働者派遣事業の許可基準に適合していないとして一般労働者派遣事業許可を受けることができなかったことから、事業の継続を図るために設立されたものであること、会社Y2設立後、会社Y1で雇用されていた派遣従業員のうち社会保険に加入済みの従業員に関する派遣先との労働者派遺契約について、その派遣元事業主を会社Y1から会社Y2に切り替えていき、会社Y1は、解散し、清算が結了したことが認められる。
 そして、A2は会社Y1の解散に伴い、会社Y2からの働きかけにより、平成28年10月26日に同社との間で雇用契約を締結しており、その就労条件等は会社Y1におけるそれと概ね同じ内容のものである。
 さらに、会社Y2の設立までの経緯等をみると、B1取締役は、会社Y1の取締役という立場のみならず、会社Y2の意を体してA2に接していたとみることができる。
 以上から、会社Y2は、実質的に会社Y1と同一であり、労使関係においても会社Y1の地位を承継しているとみることができる。このことからすると、会社Y2は、A2との関係において、労組法第7条の「使用者」に当たる。
イ 直接交渉等について
 会社Y2は、B1取締役の発言は、B1取締役が会社Y1の立場として行ったものであって、会社Y2の立場で行ったものではないと主張する。しかし、B1取締役は、会社Y1及び会社Y2の両社の立場でA2と接していたとみることができること、会社Y2は、実質的に会社Y1との一体性を有するほか、労使関係においても会社Y1の地位を承継していることからすると、B1取締役がA2と直接交渉を行ったこと及び同交渉におけるB1取締役の発言内容等は、会社Y2による組合の運営に対する支配介入に当たる。 
掲載文献   

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