労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  新潟県労委平成28年(不)第2号
JR新潟鉄道サービスほか1者不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社、Y2会社 
命令年月日  平成31年1月16日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、Y1会社が、平成27年8月3日(以下「平成」の元号を省略する。)から臨時雇用員として、JR車両等の検査修繕業務に従事していた組合員A2を28年1月15日付けで解雇したこと、同年1月14日以降に行われたA2の解雇等に係る4回の団体交渉におけるY1会社の不誠実な対応が不当労働行為であるとして、また、Y2会社は、Y1会社の親会社として、A2の解雇について責任を負うとして不当労働行為救済申立てがあった事件で、新潟県労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 Y1会社による28年1月15日付けのA2の解雇は、労組法第7条第1号の組合員であることの故をもって労働者を解雇したことに該当するか。(争点1)
 27年10月16日、同月26日及び同年11月4日に、B4所長がB3総務部長に対して、A2の勤務態度等について報告しており、それらに基づいて、同月4日に、Y1会社はA2の解雇を決定したことが認められる。同年11月4日の時点では、Y1会社は、A2が組合員であると認識しておらず、A2を解雇する方針及び解雇の時期を決定した動機は、A2の勤務態度にあったことは明らかである。
 Y1会社は、団交の日程に対応して、A2の解雇の時期及び解雇予告の時期を決定しているものの、A2を解雇する方針については、11月4日に既に決定されていたと認められる。
 したがって、Y1会社によるA2の解雇は、A2が組合員であるが故のものとは認められないため、労組法第7条第1号の不当労働行為に該当しない。

2 Y1会社の28年1月l4日、同年3月29日、同年5月24日及び同年8月12日の団交への対応は、次の点からみて不誠実なもので労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するか。(争点2)
 ・ 団交期日の先延ばし
 ・ 団交の打切り
 ・ 書類の未提示
 ・ 団交出席者
(1) 団交期日の先延ばし
 組合は、27年12月末でのA2の解雇に伴う組合の団交申し入れに対して、会社の都合で2か月先の28年1月しか団交を開催できないとY1会社が主張したことが不当労働行為である旨等主張しているが、1回から第4回までの団交に係る期日の設定におけるY1会社の対応について不誠実であったとは認められず、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。
(2 )団交の打切り
 Y1会社が、A2に退職願を提出させようとした理由について組合が質問したことに対し一定の回答をしていることや、組合がその回答に納得せず、同様のやり取りが1時間30分程度継続していた状況を考慮すると、第1回団交において団交開始から約2時間経過した時点で、団交を終了させたY1会社の対応を直ちに不誠実であったと判断することは適切ではない。
 また、第1回団交以降も、Y1会社は、組合の申入れに応じていることからも、第1回団交におけるY1会社の対応をもって、団交を打ち切ったものとは認められない。
 したがって、第1回団交におけるY1会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。
(3) 書類の未提示
 第4回団交に至るまで本社の教育指導要領、新幹線営業所の初任者教育実施要領等を組合に提示しなかったY1会社の対応に問題がなかったとまでは言えないものの、Y1会社は、組合から具体的に要求された文書については、第4回団交で提示しており、それらについて交渉が行われているから、Y1会社の対応は不誠実であるとまでは認められない。
 したがって、第2回団交から第4回団交における書類の提示に関するY1会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。
(4) 団交出席者
 次長等、Y1会社の団交出席者は交渉権限を委任されていたと認められる。また、Y1会社の出席者に交渉能力がなかったとまでは言えない。
 したがって、Y1会社による団交出席者の選定については、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当しない。

3 Y2会社は、28年1月15日付けのA2の解雇について、労組法第7条第1号の「使用者」に該当するか。「使用者」である場合、A2の解雇は、同号の組合員であるが故をもって労働者を解雇したことに該当するか。(争点3)
 Y2会社は、資本関係、取締役及び業務委託等を通じて、Y1会社の経営について一定の支配力を有しているものと推忍されるが、臨時雇用員の解雇については、Y1会社が独自に決定する権限を有しており、A2の解雇についてもY1会社によって決定されたものと認められる。
 したがって、Y2会社は、A2の解雇についてY1会社と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるということは困難であり、労組法第7条第1号の使用者には該当しないことから、同号の不当労働行為に該当しない。

4 Y2会社は、労組法第7条第2号の「使用者」に該当するか。「使用者」である場合、団交に応じなかったことは不当労働行為に該当するか。(争点4)
 A2の解雇に関する交渉事項については、Y2会社は、労組法第7条第2号の使用者には該当しない。
 快速列車の廃止などの交渉事項については、Y2会社の経営等に関する事項であり、ダイヤ改正等により、現に働いている労働者の労働条件等に影響を及ぼす余地はあるとしても、組合の構成員となっている退職者の在職中の労働条件等と認めることは困難であり、組合が申し入れた当該交渉事項について、労組法第7条第2号に定める団交応諾義務がY2会社にあると言えないことから、同号の不当労働行為に該当しない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成31年(不再)第4号 棄却 令和2年11月18日
 
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