労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  奈良県労委平成28年(不)第2号・29年(不)第2号
奈良学園不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合、X2組合(X1組合と併せて「組合ら」)、X3~X9(個人) 
被申立人  法人Y(「法人」) 
命令年月日  平成31年1月24日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   法人は、法人の運営するB2大学ビジネス学部及び情報学部(以下「既存2学部」という。)の学生募集を停止し、教員を転退職させようとしたが、X1組合、X2組合は、B2大学教員としての雇用の継続を求めた。
 本件は、平成28年7月26日、X2組合の上部団体であるX1組合と法人の間で「組合員の雇用継続・転退職等の具体的な処遇について誠実に協議する。」とのあっせん案に合意(以下「あっせん合意」という。)した後の団体交渉における法人の対応、②法人が、平成29年3月31日、組合員5名を解雇し、定年退職後再雇用されていた組合員2名を雇止めしたことが不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
 奈良県労働委員会は、①の法人の対応の一部が不当労働行為であることを確認し、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人が、平成28年9月23日付けの申立人の団体交渉申入れにおける要求事項のうち、「教育・研究センター(仮称)」設置に関し、教学面について交渉を行うために学長の団体交渉出席を求めるとの要求に応じず、学長ないしその全権委任者など教学の責任者を団体交渉に出席させなかったことは、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であることを確認する。

2 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 法人が、X3ら5名の組合員を(平成)29年3月31日付けで解雇したことは、組合員であることの故をもってなされた不利益取扱いに該当するとともに、組合活動に対する支配介入に該当するか。(争点1)
 転退職の対象となったのはX2組合らに所属する組合員であるかどうかを問わず、既存2学部に所属した教員であること、法人の転退職方針自体はX2組合結成以前から法人内で検討され教職員らに説明されてきたものであること、また、法人が、申立人らを嫌悪してX2組合結成後に転退職方針の内容を特段に不利益に変更したということも認められないこと等から、法人の転退職方針の策定や実行自体は、申立人らを法人から排除する目的で行われたものとは認められない。
 法人が、本件解雇の対象者となったC1らが組合らに所属する組合員ないし組合に加入しようとする者であると認識していたと認めるにたる十分な疎明はなく、むしろ組合員でない者も本件解雇の対象となっていたことが認められる。
 (平成)29年度当初の既存2学部の在籍学生は、留年生6名程度であったこと等からすると、過員となる教員を正規教員として雇用する必要がないとする法人の判断は不合理なものとまではいえない。
 本件のように大学教員としての専門性を生かせる学部が廃止された場合には、法人が解雇回避措置を行うにあたって、雇用継続の各種施策が大学教員以外の職種に限られていたとしても、本件事情の下においては不合理なものとまではいえない。また、法人は、団体交渉やあっせんにおいて、本件解雇に関する自らの立場や方針については誠実に説明、協議を行っていたことが認められる。
 過去における法人の一連の言動から、法人に本件解雇に至る継続した組合嫌悪の意思があるとは認められない。
 したがって、本件解雇は、組合員ないし組合に加入しようとする者であることの故をもってなされたものとは認められず、不利益取扱いの不当労働行為にも、組合に対する支配介入にも該当しない。

2 法人が、X8ら2名の組合員を(平成)29年3月31日付けで雇止めしたことは、組合員であることの故をもってなされた不利益取扱いに該当するとともに、組合活動に対する支配介入に該当するか。(争点2)
 本件雇止めは、解雇と同様に不利益性が認められるが、組合らに所属する組合員ないし組合に加入しようとする者であることの故をもって行われたものとは認められず、不利益取扱いの不当労働行為にも、支配介入にも該当しない。

3 あっせん合意後の「組合員の雇用継続・転退職等の具合的な処遇」を議題とする団体交渉における法人の対応は、不誠実団交に該当するか。(争点3)
ア 法人が、あっせん合意後、団体交渉開催前に、組合らのセンター提案について拒否する内容の回答書を組合らに送付したこと等は団体交渉拒否に該当しない。また、組合らのセンター提案に関する団体交渉における法人の一連の説明等は、あっせんの合意に反する不誠実団交に該当しない。
イ 法人が学長の教学上の判断についても組合らのセンター提案を拒否する理由として説明している本件事情の下においては、法人は、求められれば学長ないしその全権委任者など教学上の判断について責任をもって回答できる者(以下「教学の責任者」という。)を団体交渉に出席させて説明を尽くす必要があるというべきであるから、法人が、組合らの要求にもかかわらず、教学の責任者を団体交渉に出席させて教学上の判断についての説明を行わなかったことは、不誠実団交に該当する。 
掲載文献   

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