労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  東京都労委平成29年(不)第52号
ハートコーポレイション不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成30年10月2日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社と期間1年の雇用契約を締結し、外国語指導助手(Assistant Language Teacher。以下「ALT」という。)として働いていたが、雇用契約の期間の途中に、会社から解雇を通知された後に組合に加入した組合員A2の解雇及び未払賃金の支払いを議題とする組合からの団体交渉申入れに対し、会社が、雇用契約書30条に基づき、団体交渉開催場所は、水戸市内であるとして応じなかったことが不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件である。
 東京都労働委員会は、会社に対し、団体交渉開催場所の合意に向けた誠実交渉を命じた。 
命令主文   被申立人会社は、申立人組合が、同組合の組合員A2の解雇及び未払賃金についての団体交渉を申し入れたときは、開催場所を会社の水戸本社とすることに固執することなく、団体交渉開催場所の合意に向けて誠実に交渉しなければならない。 
判断の要旨  1 判断
 会社は、会社とALTとの雇用契約書には、会社と社員との間の金銭的な訴訟や法律上の争議手続は、社員の居住地にかかわらず、水戸市において手続が行われることに同意するとの記載があると主張する。
 確かに、本件雇用契約書第30条にはそのような定めがあるが、A2と会社との紛争に関する条項は、A2が加入する労働組合を直接拘束するものではないし、まして、組合と会社との団体交渉をどこで行うかということの根拠となるものでもない。
 また、組合にとって、遠隔地である水戸市で団体交渉を行うことが、経済的にも時間的にも負担であるのは明らかであり、組合は、組合事務所所在地である東京都内に固執しているわけではない。組合がA2の勤務地である横浜支社での開催も含めて提案していたにもかかわらず、会社が紛争手続の合意地である水戸本社での開催を一切譲らないのは、正当な理由のない団体交渉の拒否であると判断せざるを得ない。
 さらに、会社は、組合からの団体交渉申入れに対し、水戸本社における団体交渉の日時を複数提示するなどして、団体交渉開催に協力的な対応をしていると主張する。
 確かに、29年3月から6月までの間、会社は、計5回、団体交渉開催日時を組合に提示している。
 しかしながら、本件労使間において団体交渉が一度も開催されていない原因は、開催日時が折り合わなかったことにはなく、本件開催場所が折り合わなかったことにあった。こうした状況にもかかわらず、組合が本件開催場所を検討するよう会社に要請するなどした後も、会社は、計4回の開催日時の提示に当たって、いずれも本件開催場所は水戸本社であるとしたのであるから、会社の対応が団体交渉開催に協力的な対応であったとみることはできない。
 以上のことから、A2の解雇及び未払賃金を議題とする組合の団体交渉申入れに対し、会社が、本件雇用契約書第30条に基づき本件開催場所は水戸本社であると主張して一切譲らず、団体交渉に応じていないことは、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たる。
2 救済方法
 本件労使間においては、今後も本件開催場所を巡る紛争が引き続き発生すおそれがあるため、開催場所に固執することなく、労使双方が本件開催場所の合意に向けて真摯に話し合う必要があるため、主文のとおり命令する。
 具体的には、本命令交付後、組合がA2の解雇及び未払賃金についての団体交渉を申し入れたときは、本件の経緯に鑑み、初回の団体交渉は会社の東京支社で行い、2回目以降の開催場所について協議すべきものとする。 
掲載文献   

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