労働委員会命令データベース

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件番号・通称事件名  山口県労委平成29年(不)第2号
船木鉄道不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成30年10月25日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会社が、①平成29年4月24日に決定した貸切バス担当者変更により、自動車登録番号票の車番1100番の車両の貸切りバス及び770番の車両の貸切りバスについて、申立人組合の組合員に比して、会社内に併存するC1組合の組合員を優遇する「配車差別」を行ったこと、②同年3月14日の組合員であるA2氏と会社の代表取締役社長であるB1の社長面談における現社長の言動が不当労働行為に該当するとして救済申立てのあった事件である。
 山口県労働委員会は、会社に対し、①の車番の770番の貸切りバスの現行担当者の取扱いについての誠実協議及び、①の当該車番の貸切りバスの担当者の決定に関すること及び②の一部について文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文 
 1 被申立人は、本命令書受領後2週間以内に、自動車登録番号票の車番770の貸切バスの現行担当者の取り扱いについて、申立人組合と誠実に協議すること。
 なお、当該労使間協議に際しては下記事項を順守すること。
(1) 当該労使間協議には、代表取締役社長A1氏も出席すること。
(2) 被申立人は、当該労使間協議の場で申立人に下記内容の文書を手交すること。

平成 年 月 日
組合
執行委員長 A1様
会社
代表取締役社長 B1
  当社が行った下記行為は、山ロ県労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。
 当社がこのような行為をしたことについて深く謝罪し、今後、同様の対応を繰り返すことなく、当社内に併存する労働組合に等しく接することを誓います。

1 平成29年5月から運用開始した貸切バス(自動車登録番号票の車番770の車両)の担当者の変更決定に際し、貴組合よりC1組合を優遇したこと。
2 平成29年3月14日に実施した貴組合員A2氏と当社代表者との面談において、当社代表者がA2氏の貴組合への加入を捉え、これを非難する発言をしたこと。

2 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点1 本件担当者変更は不利益取扱いに当たるかについて
(1) 本件担当者変更に不利益が生じているか。
 「飛ばし」によって上位グレードバス担当者になれなかったことに起因する経済的不利益が発生しているかは定かでないが、会社が各運転手を担当車両制により乗務させ、その配車の決定変更に際し、入社歴を基礎としつつも事故歴、顧客からの苦情の有無等、その乗務実態に基づいて検討、判断の上、決定に至っている点を重視すべきである。
 各貸切バスは上位グレードであるほど高年式で装備などが整っており、心身両面に渡る負担が少ないこと、上位グレードバスの担当者は、会社から高い評価を受けたステータスを伴った憧れの対象であると同時に誰しも(各運転手個々の事情は除く)、より上位の車両の担当となることを期待しており、「飛ばし」により上位グレードバス担当に選定されない場合には、一定の不利益性がある。
(2) 会社の対応は、C1組合に比し、組合を差別したものであるか。
 本件担当者変更は、観光部長がその変更案の作成検討に着手する前の時期から決定に至る経過において、会社にC1組合を優先する意図があったこと、 また、それに伴って混乱が生じたことが明白であるから、会社(特に現社長)が組合に比し、C1組合を有利に取り扱う組合間差別を行っていると認めざるを得ない。
(3) 本件担当者変更に合理的理由はあるか
ア 車番1100担当者変更については、観光部長は、候補者をA2、C3の2人に絞り、両者の比較検討を経た上、C3とする観光部長案を作成したもので、その比較検討においては両組合の公平性を考慮の上、C3を選定したとしている。
 A2が前年の担当車変更で2名飛ばしで上位グレードの車番850担当に変更されたこと、一方C3は平成27年当時から平成22年製の車番770担当であった事実が認められ、また、車番1100担当者の変更決定に至る過程において、社長ら上司によるC1組合を有利に取り扱うことを企図した恣意的な指示等は認められないことから、当該担当者変更は 合理的理由に基づくものと認められる。
イ 車番770担当者の検討に際し、その対象候補者は、当時の車番770より下位グレードのバスを担当していた9名であり、観光部長はその考慮要素に照らした比較検討手法を7点に渡って証言した。
 会社の主張によれば「入社歴のみを重視しているわけではなく、事故歴や苦情の有無等を加味する」とされているが、平成18年入社のA4と平成17年入社のA3の比較では、A4は、入社歴が1年短いことのみを理由に選考対象から外され、A3は、看過できない苦情を2件有するがC4との最終選考対象に残されたことになっている等、その評価に不整合な点や不可解な点がみられる。
 また、観光部長は、車番1100担当の検討に際しては「両組合の公平性」を考慮したと認められるところ、車番770担当をC4とすることは、異例の6人飛ばしであると同時に、その中に組合の組合員が5名も含まれることを知りながらも、「両組合の公平性」を考慮した形跡が認められない。
 これらの不整合は上記の会社の主張にも、観光部長による「およそ入社歴を基礎とし、両組合への公平性も考慮する」配車案の作成実態とも乖離している。
 その他の対象候補者の比較検討をみても、およそ「6人飛ばしの大抜擢」を肯定するに足る際立った評価面での差異はなく、入社歴による選考という従来の慣行を排斥すべき特段の事情(車番1100の担当者変更のような両組合への配慮等を含む)も認められない。
 加えて、車番770の担当者変更に先立ち、現社長が観光部長に対して、車番554のC4の貢献を加味するようにと、担当者変更に際して具体的な指示を行っていること、観光部長は組合の抗議を受け、組合案に沿う形の第2案を作成したこと、現社長がC2委員長に第2案で再調整を行う旨の情報を提供したこと、その後、C2委員長が両組合の特定の組合員に対し利益誘導(C1組合員である(になる)ことを前提に、車番770担当に選定されるべく取り計らう旨の誘導)を行ったこと、等の諸事情に照らせば、会社には、当初よりC1組合を優先する姿勢が顕著であり、かつ、車番770の本件担当者変更は結果的にそれを具現化したものであることを強く推認させると言うほかない。
 したがって、車番770の担当者変更は、合理的な理由が認められないことから、不利益取扱いの不当労働行為に当たる。
2 争点2 会社の対応は支配介入にあたるかについて
ア 車番770の本件担当者変更は、組合に対する支配介入にもあたる。
イ 社長面談時の現社長のA2に対する「裏切った」旨の発言は、良い車を与えたのに組合に移籍したことを裏切りと捉えている旨の発言であると考えざるを得ない。
 組合を差別的に扱う現社長の発言は、組合への支配介入にあたる。
3 救済方法について
  組合は、本件担当者変更に際して会社に示した組合案を適正であると認めこれを実施することを求めているが、本件担当者変更は、既に運用されている上、当委員会では、組合案が適正であるとする判断もできず、会社の本件担当者変更に際する各運転手の業務実態等の評価を完全に否定することも相当でない。
 また、本命令によって現行の貸切バス担当者を変更することは、会社及び会社の従業員に無用な混乱をもたらし、新たな紛争となりかねないことが懸念される。
 したがって、その救済方法としては、会社に対し、組合との協議の場を設け、主文に記載の文面を記した書面を手交の上、車番770の現行担当者の取り扱いについて誠実に協議することを命じることとする。 
掲載文献   

[先頭に戻る]