労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第56号 
申立人  X1組合、X2組合 
被申立人  法人Y 
命令年月日  平成30年10月9日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、被申立人が、①賃下げに関して、申立人に対して事前に説 明を行わず通告を行い、通告後、申立人との協議を打ち切って就業規則を改正し、賃下げを行ったこと、②申立人の委員長が労働 者代表に選出され、三六協定締結のための協議を開くよう、被申立人に求めたが、被申立人は、これに応じることなく、非組合員 に新労働者代表を選出させて、三六協定を締結したこと、③申立人が賃金改善等を求め、団体交渉の再開を申し入れたのに対し、 2か月間開催に応じず、開催された団体交渉においても、申立人の要求及び質問に対して次回以降に回答すると述べるなど、不誠 実な対応をとり、一方的に団体交渉を打ち切ったことが不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件で、大阪府労働委員会 は、被申立人に対し、③の一部について文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文 
1 被申立人は、申立人X1組合及び同X2組合に 対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。

年  月  日
 X1組合
  執行委員長 A1様
 X2働組合
  執行委員長 A2様

学校法人Y
 理事長 B1
 当法人が行った次の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為で あると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1) 平成27年8月20日付けの団体交渉申入れに対し速やかに応じなかったこと。
(2) 平成27年10月28日に開催された団体交渉において、いずれの議題についても具体的な回答を行わ ず誠実に対応しなかったこと。
2 申立人らのその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点1(本件賃下げに係る申立ては、申立期間を徒過していると いえるか。徒過していないとした場合、法人が、組合員に対し、本件賃下げを行ったことは、組合員であるが故の不利益取扱い及 び組合に対する支配介入に当たるか。)について
 本件申立ての申立日は、26.4.1改正補則の行から1年以上経過した後ではあるが、26.4.1改正補則の施行とこれ に基づいて減給されて支払われた向こう1年間の毎月の給与支払いは一体として継続する行為をなすものである。
 26.4.1改正補則に基づく平成26年度の給与の最後の支払いは平成27年3月であって、本件申立ては同年11月2日で あるから、本件申立ては、労働組合法第27条第2項に規定する期間を経過してなされたものには当たらない。
 X1組合の組合員は、本件賃下げにより、経済的不利益を受けているが、非組合員もまた、同様に不利益を受けていることは明 らかであり、法人が団交途中にX1組合の同意なく本件賃下げを強行していたとしても、本件賃下げにより、X1組合の組合員で あるが故にX1組合の組合員だけが不利益な取扱いを受けていると認めるに足る事実の疎明はない。本件賃下げは、労働組合法第 7条第1号の組合員故の不利益取扱いにも、同条3号の組合に対する支配介入にも当たるとはいえない
2 争点2(平成27年4月28日に、法人が27.4.28三六協定を締結したことは、組合に対する支配介入に当たるか。) について
ア 有志一同による27.3.26有志申入れから法人がC代表を三六協定の当事者として27.5.11協定届を届け出るに至 るまでの経緯において、労働基準監督署の指導と称して、法人が有志一同の活動を唆したり、援助したりしたと認めるに足る事実 について組合からの疎明はない。
イ 三六協定に係るやり取りは、A1委員長自ら、組合や組合活動とは区別して、労働者代表として振る舞ったものといわざるを 得ない。
 そうすると、A1委員長の労働者代表への選出の問題と組合の運営や活動の問題とが直接の関わりがあると認めるに足る事実の 疎明はなく、法人が、組合の弱体化を意図して、A1委員長が労働者代表に選出される機会を奪ったとの組合主張は採用できな い。
ウ したがって、法人が27.4.28三六協定を締結したことは組合に対する支配介入に当たるとはいえない。

3 争点3(27.8.20団交申入書に対する法人の対応は、不誠実団交に当たるか。)について
ア 27.8.20団交申入書に対する法人の対応について
 組合が、27.9.9回答書の前後を通じて、早期の団交開催を度々求めていたといえるのに対し、法人は、将来構想について 検討中である旨27.9.9回答書により回答したほかは見解の相違である旨主張し、具体的に早期に団交に応じられない理由を 特に明らかにしていない。
 このような法人の対応は、正当な理由なく団交を引き延ばしたといわれてもやむを得ない。
イ 27.10.28団交における法人の対応について
  法人自らが将来構想を検討中であるとして約2か月後の日程で団交を設定したにもかかわらず、27.l0.28団交におい て法人は、いずれの議題についても再度要望してほしい又は次回以降に回答する旨を繰り返している。
 法人は、交渉継続中の義務的団交事項に係る組合の要求事項に対し、具体的な回答を何ら用意することなく27.10.28団 交に臨んだものといわざるを得ず、実質的な交渉が行われたとはいい難い。
ウ 27.10.28団交の終了時の状況について
  法人が次回以降に回答する旨述べた状況の中で、組合は27.10.28団交の数日後に本件申立てを行っており、 27.l0.28団交後から本件申立ての間に組合が次回団交について日程を調整したにもかかわらず、法人がこれに応じなかっ たと認めるに足る事実の疎明はなく、法人が団交を打ち切ったとはいえない。
エ 結論
 法人が一方的に27.10.28団交を打ち切ったとまではいえないが、①合理的な理由もなく団交開催を2か月以上も引き延 ばしたこと、②組合の要求事項に対して回答を用意することなく27.10.28団交に臨み質問に答えなかったこと、は不誠実 団交に当たり、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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