事件番号・通称事件名 |
兵庫県労委平成29年(不)第10号 |
申立人 |
X組合(「組合」) |
被申立人 |
Y会社(「会社」) |
命令年月日 |
平成30年10月25日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社がB2営業所、同B3営業所又は同B4営業所におい
て、会社に別に存在するC1組合及びC2労組には掲示板(正確には掲示板の設置場所であるが、以下掲示板そのものを指すとき
も併せて単に「掲示板」という。)を貸与しているにもかかわらず、組合の申立人の分会(以下「申立人組合分会」という。)に
は掲示板を貸与しないことが、申立人組合に対する支配介入に当たるとして救済申立てがあった事件で、兵庫県労働委員会は、会
社に対し、掲示板の貸与を命じ、その余の申立てを棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人会社は、申立人組合分会に対し、本命令書交付の日から
3箇月以内に被申立人B3営業所内に、C2組合と同程度の大きさの掲示板を設置するための場所を貸与しなければならない。
2 その余の申立ては棄却する。 |
判断の要旨 |
1 C2組合に対する掲示板貸与に係る合理的理由の存否について
会社は、C2組合に対し、組合結成後半年余りでB3営業所内に1箇所、掲示板を貸与したが、掲示板貸与における条件ないし
取引上のメリットとして、C2組合の場合は、多くの組合要求事項のうち、掲示板貸与以外の要求事項を事実上撤回したのに対
し、申立人組合の場合は、全ての組合要求事項を撤回する旨の回答をしなかったので、貸与できないと主張する。
しかしながら、C2組合との間で掲示板貸与以外の要求事項の撒回の合意までは成立しておらず、C2組合との団体交渉におい
て、貸与当時も現時点においても、掲示板貸与以外の要求事項の協議が求められていないことを認めるに足りる証拠もないことか
らすると、会社がC2組合に対する掲示板貸与の条件ないし取引上のメリットとして主張する、掲示板貸与以外の要求事項の撤回
は、いまだなされていないものと推認される。
したがって、会社が付した、会社にとってメリットと評価できる何らかの具体的な条件を受け入れたことを考慮して、C2組合
対して掲示板を貸与したとの会社の主張を裏付けるに足りる事実は認められない。
また、会社は、申立人組合との団体交渉においても、C2組合の場合と同様に、掲示板の貸与以外の組合要求事項を撒回するの
であれば、掲示板の貸与を検討する旨の讓歩案を提案したと主張するが、申立人組合のA2分会長が本件審問において,会社から
当該提案があったことを否定していること等からすると、団体交渉において譲歩案を提案したにもかかわらず、申立人組合が受入
れを拒否したため、掲示板を貸与しなかったとの会社の主張は、にわかに措信し難い。
2 C1労組に対する掲示板貸与に係る合理的理由の存否について
会社は、C1労組と異なり、申立人組合分会の場合は、組合員数が少ない上、SNS等の多様な連絡手段が普及している状況の
下では、連絡手段として掲示板を貸与する必要性は低いと主張するが、連絡手段としての掲示板を貸与する必要性が低いという会
社の主張は認められない。
会社は、長い歴史の中で、会社の経営不振の折、賞与等の支給でC1労組が譲歩した経緯を踏まえて貸与を継続しているのに対
し、申立人組合は、結成後間がないので、C1労組と同列には扱えないと主張する。
会社は、C1労組に対しては、具体的条件を付さずに掲示板を貸与した以上、その後の会社とC1労組との関係は、現時点にお
ける申立人組合分会に対する貸与の是非を判断する上で無関係であると言わざるを得ないこと、また、会社は、結成後約1年が経
過し、その間に繰り返し掲示板貸与を求めて団体交渉を実施している申立人組合に対しては、掲示板貸与を拒否しておきながら、
C2組合に対しては、組合結成後半年余りで掲示板を貸与したことを併せ考慮すると、結成後の期間の長短をもって、掲示板の貸
与について、C1労組と異なる取扱いをする合理的な理由とすることはできない。
3 結論
会社は、併存組合に対しては、具体的条件を付さずに掲示板を貸与しながら、申立人組合分会に対しては、これを貸与せず、そ
の異なる取扱いについて合理的な理由は認められないので、会社が申立人組合分会に対して掲示板を貸与しないことは、労組法第
7条第3号の不当労働行為に該当する。 |
掲載文献 |
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