労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  福岡県労委平成29年(不)第5号
北九州農業協同組合不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y農協(「農協」) 
命令年月日  平成30年7月12日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、被申立人農協が、①農協のヘルパーステーションにサービス提供責任者(サ責)として勤務していた申立人の組合員A2に対し、平成29年3月31日付けで雇止めを行ったこと、②組合による同年2月10日付けの団体交渉申入れに応じなかったこと、③同年3月15日に農協の地域生活部長であるB2が、組合員A3及びA4に対し、組合から脱退してほしい旨の発言をしたことが不当労働行為であるとして救済を申立てのあった事件で、福岡県労働委員会は、農協に対し、A2の契約が1年間更新されたものとしての取扱い、バックペイ及び①~③についての文書掲示を命じた。 
命令主文 
1 被申立人は、申立人の組合員であるA2の労働契約が平成29年4月1日付けで期間を1年間として更新されたものとして取り扱い、同人に対し、平成29年4月1日から同月30日までの間についてはこの間の賃金相当額を、同年5月1日から平成30年3月31日までの間についてはこの間の賃金相当額の6割を支払わなければならない。
2 被申立人は、本命令書写しの交付の日から10日以内に、A2判の大きさの白紙(縦約60センチメートル、横約42センチメートル)全面に下記内容を明瞭に記載し、被申立人本店の見やすい場所に14日間掲示しなければならない。

平成 年 月 日
 組合
  執行委員長 A1殿
農協
 代表理事 B1

 農協が行った下記の行為は、福岡県労働委員会によって労働組合法7条に該当する不当労働行為と認定されました。
 今後このような行為を行わないよう留意します。
                  記
1 貴組合員A2氏に対し、平成29年3月31日付けで雇止めを行ったこと。
2 貴組合による平成29年2月10日付けの団体交渉申入れに応じなかったこと。
3 平成29年3月15日に、農協の地域生活部長であったB2が、貴組合の組合員であったA3氏及びA4氏に対し、貴組合から脱退してほしい旨の発言をしたこと。 
判断の要旨  1 本件雇止めについて
(1) 不利益性につて
 A2の業務は、訪問介護事業所において、利用者に対し訪問介護サービスを提供するという業務で、季節的・臨時的なものではなく、継続が見込まれていたものと認められる。
 A2の労働契約に係る手続等に関して、労働契約の締結時に、10年近く勤務している者がいる旨説明されていること、労働契約の更新の際に面談等も実施されておらず、更新手続は形骸化していたことが認められる。
 これらの事情から、A2が自身の労働契約の更新を期待することには相当な理由があったと認められ、本件雇止めは、「不利益な取扱い」といえる。
(2) 本件雇止めの理由について
 被申立人は、本件雇止めは、介護福祉部門の経営状況の不振、サ責3名の業務状況等及びA2の勤務態度等を総合的に考慮して決定したものであって、A2の組合加入や組合活動を理由とするものではないと主張する。
ア 介護福祉事業の経営状況の不振
 農協の介護福祉事業については、24年度以降、赤字が続き、経営不振であったことが認められる。しかし、各職員の雇用について1年間の期間が経過する度に検討していたとする事実はなく、A2の本件雇止めの時点で、事業の休止の時期が具体的に決定されていたものでもなく、その際の人員整理の方法などの具体的な検討状況も明らかでない。仮に、サ責として採用された職員が1名過員となっており、人員削減を行う経営上の必要性が認められるとしても、A2のみを雇止めの対象として検討するのは不自然であるといわざるを得ない。
イ サ責3名の業務状況等
 農協がA2の雇止めを検討した時期において、サ責3名の中で、A2の業務の遂行が特に劣っていると考えた事情は当たらない。
ウ A2の勤務態度等
 28年4月1日から本件雇止めまでの間に、訪問カレンダーに病院名を誤記入したこと等が認められるが、業務に重大な支障が生じたとは認められない。
 28年4月1日の契約更新前に、ホームヘルパーに同行することを忘れたこと等が認められるが業務に重大な支障が生じたとは認められない。また、これらは、当該労働契約更新時に判明していたにもかかわらず、同契約は更新され、特に何も指摘されていないことからすると、農協は、重大な問題とは認識していなかったものと認められる。
エ その他の事情
 A2は、附随理由に記載された動務態度等について、始末書等の提出を求められたことはなく、また、A2の勤務態度等の改善を日的とする特段の指導や研修は行われていないこと等が認められる。
オ 上記の各事実からは、被申立人が主張する本件雇止めの理由が雇止めの理由として合理的なものとは認められない。
(3) 不当労働行為意思について
 農協は、A2がA3、A4とともに組合の分会を結成し、自らが分会長となって、団交等を通じて職場環境の改善等を積極的に主張してきたことについて、強い嫌悪感を抱いたと推認される。特に、農協が、本件雇止めを通知した後は組合からの団交申入れに応じず、本件雇止めの理由を組合に直に説明することを避ける姿勢を取ったこと、A2の契約期間終了直前になって他の組合員に対し組合からの脱退を強く勧めたことからは、農協が、本件雇止めを契機として事業所内における組合活動が弱まることを意図していたものと推認される。
(4) 結論
 本件雇止めは、A2が組合員であること又は同人が組合活動を行ったことを理由としてなされた不利益な取扱いと認められ、労組法7条1号に該当する。
 A2は組合の分会長であり、分会員は、A2、A3及びA4のわずか3名である。本件雇止めは、組合の分会長であるA2を農協から排除することによって、分会の組合活動を萎縮せしめ、組合の組織を弱体化させる行為であり、労組法7条3号に該当する。
2 本件団交申入れに対する農協の対応について
 回答書を送付するのみで団交に応じない対応に正当な理由は認められず、農協が本件団交申入れに応じなかったことは、労組法7条2号に該当する。
3 B2部長発言について
 地域生活部長の職位は、農協の役員に次ぐ地位で、部を続括する立場にあり、実際に、B2部長は介護福祉課を続括し、本件雇止めの稟議に直接に関わるなど同課の職員の人事に関して権限を行使していることから、同部長は使用者の利益を代表する者に該当する。
 B2部長の「組合を脱退して欲しい。」との発言は、使用者の行為と認められるものであり、しかも、その発言は、A3及びA4の有期労働契約の次回更新時期(29年4月1日)の直前になされたものである。
 B2部長は、A2に対する本件雇止め後も農協に残る中A3及びA4に対し、人事上の権限を背景にして組合からの脱退勧奨を行ったと認めるのが相当である。A2部長発言は、分会を壊減させようとする意図が強く推認されるものであり、労組法7条3号に該当する。
4 救済の方法
 申立人は、A2の原職への復帰を求めているが、同人の労働契約で、 同人が従事すべき業務内容はサービス提供責任者と指定されており、農協の訪問介護事業は、全て廃止されているから、同人を原職に復帰させることは不可能であって、原職に相当する職務も存在しない。 併せて、 同人の労働契約が雇用期間を1年とするものであったことに鑑みると、同人の労働契約が29年4月1日付けで期間を1年間として更新されたものとして取り扱うことを命じることが相当と思料する。また、申立人は、 賃金相当額の支払いも求めているが、A2が29年5月から他の訪問介護事業所の正規職員として就労し、従前と同程度の収入を得ていることに鑑み、主文第1項のとおり命じる。 
掲載文献   

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