労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成29年(不)第11号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(会社) 
命令年月日  平成30年7月23日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、被申立人が、申立人からの団体交渉申入れについて義務的団体交渉事項ではない等として、団体交渉に応じなかったことが、不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件で、大阪府労働委員会は、会社に対し、団交応諾を命じた。 
命令主文   被申立人は、申立人が平成29年1月6日付けで申し入れた団体交渉に応じなければならない。 
判断の要旨  (争点) 29.1.6団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるか。

1 29.1.6団交申入れの協議事項が義務的団交事項に当たるかについて
 29.1.6団交申入書には、協議事項として、①28.12.26メールについてという記載と、同メールが精神的な攻撃でありパワハラに当たる旨の記載があったこと、②会社貸与の携帯電話についてという記載と、携帯電話の着信が休日で確認できなかったこと及び今後の就業時間外の携帯電話の取扱いについての記載があったこと、が認められる。
 28.12.26メールについてという協議事項は、組合が、会社に対し、28.12.26メールによりA2組合員が精神的な攻撃であるパワハラを受けたとして申し入れ、団交においてA2組合員の職場環境の整備や改善を求める事項であるといえる。そうであれば、上記①の協議事項は、労働者の待遇に関する事項であるというのが相当で、義務的団交事項に当たるといえる。
 この点、会社は、28.12.26メールは、内容からも送信先からもパワハラには該当せず、28.12.26メールをパワハラと位置付ける組合の主張は失当である旨主張する。しかし、28.12.26メールには、会社から見たA2組合員の行動、反省の色もうかがえず、責任感をもって仕事に取り組んでいるとは言い難い等のA2組合員の姿勢への評価、改善が見られない場合の会社の対応として業務・役割自体の見直しも考えざるを得ない旨の会社の見解、今後への要望等が記載されていることや、人事担当者を含む複数名に送付されていることが認められ、これらのことからすれば、同メールをA2組合員がパワハラと感じたとの主張が全く根拠のない主張であるとまではいえない。
 そうだとすれば、組合がそれをパワハラと位置付けて団交を求めている以上、会社は労働者の待遇に関する事項を協議事項とする団交申入れを受けたのであるから、本件申立てにおいて行った事実関係等の主張を、団交において組合に対して述べるべきであったといえる。
 また、上記②の会社貸与の携帯電話についてという協議事項についても、会社は「日常的な労務指揮や業務指導」であり、「労働者の労働条件その他の待遇に関するもの」ではない旨主張するが、A2組合員が会社貸与の携帯電話を就業時間外にどのように取り扱うのかについての事項であり、これは、労働者の労働条件に関する事項であるというのが相当で、義務的団交事項に当たる。
 以上のとおりであるから、29.1.6団交中入れの協議事項が義務的団交事項には当たらないとの会社主張は採用できない。
2 従前の交渉経緯からして労使双方の主張が平行線のままで既に膠着状態であり、これ以上団交を続けても無意味な状態にあった旨の会社の主張について
 組合と会社、C2又はC3との間では、確かに、パワハラに関して団交及び書面のやり取りがかなりの頻度で行われたとはいえるものの、これらで議題となっているパワハラの内容は、会社における訪問営業に係る発言、B2副所長によるA2組合員に対する日報提出や訪間営業の件数に係る指示、営業会議での会社の発言等であり、いずれにおいても、29.1.6団交申入書に記載されている①28.12.26メールがパワハラに当たること、②会社貸与の携帯電話の取扱いに係る協議事項についてのやり取りが行われたと認めることはできない。しかも、29.1.18対C3団交以外は、全て29.1.6団交申入れ以前に行われたものである。
 さらにいえば、当該やり取りをみても、そのほとんどが組合とC3又はC2との間で行われており、会社、C3及びC2が一体として組合との団交に対応するといった労使協定や双方の了解があるとの疎明もないのであるから、B2取締役が、C3との団交にも出席していたという事情を考慮しても、組合と会社との団交に関して、組合とC3又は組合とC2との当該やり取りの状態をもって、会社が組合との団交を拒否する理由にはできないというべきである。
 以上のことからすれば、組合と会社との間において、団交が平行線となり膠着状態で、団交を開催しても無意味な状態であった旨の会社の主張は採用できない。
3 29.1.16会社回答書で回答をしているところであり、29.1.6団交申入れを完全に無視しているのではなく、誠実な対応をしている旨の会社主張について
 29.1.6団交申入れの協議事項が、義務的団交事項である以上、会社は、組合に対し、団交において協議事項について説明しなければならず、書面で回答したことだけをもって、団交を開催しなくてもよいとする正当な理由とみることはできず、この会社の主張は採用できない。
4 結論
 会社が、29.1.6団交申入れに対し、29.1.16会社回答書で団交に応じない旨回答したことに、正当な理由があるとはいえず,29.l.6団交申入れに対する会社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である 
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