労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成28年(不)第8号、第20号及び第50号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  会社Y(「会社」) 
命令年月日  平成30年7月13日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、申立人が、組合員らの労働組合への加入を公然化したところ、被申立人が①申立人組合員1名の月額給与を減額したこと、②元従業員らに、同人らに対する事実でない不適切言動を理由に刑事告訴する旨等を記載した通知書を、同組合員に対して送付させたこと、③同組合員に対し、当該不適切言動について懲戒処分を行うための弁明等を求める照会書を送付したこと、④同組合員の自宅待機命令解除後、料理長への復職を拒否し、清掃業務等への就労を提示したこと及びその後申立人が被申立人の前記提示に応じない旨通知したところ、同組合員に自宅待機命令解除以降の賃金を支払わなくなったこと、⑤その後、同組合員を解雇したこと、⑥団体交渉の開催を拒否したこと、がそれぞれ不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件である。
 大阪府労働委員会は、会社に対し、解雇の取消し及び上記④及び⑤に係るバックペイ並びに文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文 
1 被申立人は、申立人組合員A2に対し、平成28年3月1日から同年8月31日までの間、被申立人が運営するゴルフ場のレストランの料理長として従事していれば得られたであろう賃金相当額を支払わなければならない。
2 被申立人は、申人組合員A2に対する平成28年9月1日付けの解雇がなかったものとして取り扱い、同人を、被申立人が運営するゴルフ場のレストランの料理長の職に復職させるとともに、同人に対し、解雇の日から就労させるまでの間、同人が同職にあれば得られたであろう賃金相当額を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年  月  日
 組合
 執行委員長 A1様
会社
代表取締役 B1
 当社が、行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1) 貴組合組合員A2氏の平成27年12月分から同28年2月分までの給与を月額20万円減額したこと。
(2) 貴組合組合員A2氏.をレストラン料理長に復職させず、平成28年3月1日以降の担当業務として清掃作業及びマスタ一室勤務の業務を提示したこと。
(3) 貴組合組合員A2氏に対し、平成28年3月1日以降の賃金を支払わなかったこと。
(4) 貴組合組合員A2氏を平成28年9月1日付けで解雇したこと。
4 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点1(A2組合員の平成27年12月分以降の月額賃金が減額となったことは、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。)について、
 A2組合員の平成27年12月分以降の月額賃金の減額は,組合と会社の間に相当程度の対立関係がある中で行われ、しかも、その理由において合理性が認められず、手続においても不自然な点がみられるのであるから、組合を嫌悪して行われたものと推認することができる。
 A2組合員の平成27年12月分以降の月額賃金が減額となったことは、会社による組合員であるが故の不利益取扱いに当たるとともに、組合に打撃を与えるために行われた組合に対する支配介入にも当たり、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する。
2 争点2(元従業員ら3名が、A2組合員に対し、元従業員ら通知書を送付したことは、会社による組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。)について
 会社が元従業員ら通知書の作成又は送付に関与していることを組合が疑うのもあながち無理はないといえるとしても、いまだ会社がこれに確実に関与したとまで認めるに足る事実の疎明はない。
 元従業員ら3名がA2組合員に対し元従業員ら通知書を送付したことは、会社による組合員であるが故の不利益取扱いであるとまでいうことはできず、また、組合に対する支配介入であるともいうこともできない。
3 争点3(会社が、A2組合員に対し、28.1.21照会書を送付したことは組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。)について
 会社がA2組合員に対し28.1.21照会書を送付したことは、それによりA2組合員が精神的苦痛を受けたことは認められるが、それが直ちに組合員であるが故に行われた不利益取扱いであると認めることはできず、したがって、A2組合員の組合活動を萎縮させるものとも、職場の他の労働者に威嚇的効果をもたらすものともいえないから、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるとはいえない。
4 争点4(会社の以下の行為は、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。①A2組合員をレストラン料理長の職務に復帰させず、平成28年3月1日以降の担当業務として清掃作業及びマスター室勤務の業務を提示したこと。②A2組合員に対し、平成28年3月1日以降の賃金を支払わなかったこと。)について
 ①について
 会社にとって、必ずしも業務委託関係の解消が困難な状況であったとはいえず、調理部門は業務委託により運営しておりA2組合員を配置することが困難であったとの会社の提案理由は、合理性を欠くものと言わざるを得ない。
 B1社長が実際にホテルの共用部門の清掃業務に従事したのは4日間程度であり、その後、会社が同清掃業務を申立外清掃会社に業務委託したことが認められ、必ずしも共用部門の清掃業務をA2組合員が担当すべき必要があったとはいえない。
 会社は、自宅待機命令解除後のA2組合員の担当業務について、合理性を欠く理由で、調理業務と無関係で必ずしもA2組合員が担当する必要のない清掃業務を提案し、組合がこれを受け入れないと分かるや、今度は、組合及びA2組合員が拒否することを承知の上で、組合が既に要求として撤回したはずのマスター室勤務を提案しているのであるから、かかる会社の対応は、A2組合員のレストラン料理長としての復職をあくまでも求める組合の要求に応じないための対抗策としてなされたものとみざるを得ない。
 会社が、A2組合員をレストラン料理長の職務に復帰させず、平成28年3月1日以降の担当業務として清掃作業及びマスター室勤務の業務を提示したことは、組合員であるが故の不利益取扱いであると言わざるを得ず、労働組合法第7条第1号に該当するとともに、組合員を不利益に取り扱うことによって組合の活動を萎縮させるものであるから、組合に対する支配介入であり、労働組合法第7条第3号に該当する。
 ②について
 A2組合員が平成28年3月1日の自宅待機命令解除後も出社しなかったのは、会社の対応に原因があったとみるべきである等、会社がA2組合員に平成28年3月1日以降の賃金を支払わなかったことに、正当な理由があったとはいえない。
 平成28年3月1日以降、A2組合員が出社しなかったのは、会社自らの不当労働行為に起因し、それにもかかわらず会社がA2組合員に賃金を支払わなかったことは、不当労働行為意思に基づくものであり、組合の弱体化を企図したものであるとみざるを得ない。
 会社がA2組合員に対し平成28年3月1日以降の賃金を支払わなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いであり、また、組合に対する支配介入であって、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する。
5 争点5(平成28年8月30日が仮の日程とされ、同日に改めて組合が会社に対して開催を求めた団交に係る会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるか。)について
 平成28年8月30日が仮の日程とされ、同日に改めて組合が会社に対して開催を求めた団交に係る会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるとはいえない。
6 争点6(本件解雇は、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか。)について、
ア 自宅待機命令解除後の職場復帰をめぐって清掃業務及びマスタ一室勤務を提示するという不利益取扱いを受けたA2組合員が、調理部門への配置及び和食堂の料理長職への復帰という会社の提案をにわかには信用できず、職場復帰後の自らの立場について不安を抱くのももっともであり、これに対して、会社は、A2組合員のかかる不安を解消するための提案をすることなく、もっばら、会社の提案どおり会社に早期復帰することを求め続けていたのであるから、A2組合員が、平成28年5月19日に会社が調理部門に配置することを受諾して以降、出社していないことは、やむを得ないというべきであって、正当な理由がないとまではいえない。
 A2組合員は会社の不当な取扱いが原因で収入を絶たれたのであるから、収入を得るために会社以外に就業の場を求めるのはやむを得ぬことであり、A2組合員が、自宅待機命令解除後、会社に届出等をすることなくC社で勤務していたことも、やむを得ないというべきであって、正当な理由がないとまではいえない。
 A2組合員のこれら行為を根拠に平成28年3月1日以降の出社拒否に正当理由がないとする会社の判断は、合理性のないものであったと言わざるを得ない。
イ 会社が、謝罪のあり方をめくる組合との交渉において会社の提示した限界の案を組合が受け入れず、平成28年8月30日の団交開催が合意されていたか否かをめぐって組合との間で見解の違いが明らかになった直後に、本件解雇を決定し、直ちに通知したことに鑑みれば、会社は、本件解雇に関して、組合との交渉を回避するためにあえてこの時期に決定し、A2組合員に通知したものと言わざるを得ず、かかる会社の対応は、組合の存在を軽視するものであるといえる。
ウ A2組合員の自宅待機命令解除から本件解雇に至るまでの間、A2組合員の自宅待機命令解除後の処遇をめぐって、組合と会社との間で対立が生じていたものということができる。
エ 本件解雇は、組合を嫌悪してなされた組合員であるが故の不利益取扱いであると言わざるを得ず、労働組合法第7条第1号に該当する。
 また、本件解雇は、組合の存在を軽視する行為であることに加え、それによって、2名で構成する分会の分会長であるA2組合員が会社の職場からいなくなったのであるから、組合に打撃を与えるものであって、組合に対する支配介入にも当たり、労働組合法第7条第3号に該当する。 
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