労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成28年(不)第3号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社(会社)、Y1会社Y2事業所(「事業所」) 
命令年月日  平成30年8月7日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、被申立人会社及び被申立人事業所が、①B4支店へのセキュリテイシステム導入を強行し、申立人組合員の組合室利用を制限していること、②平成25年10月24日の団体交渉開催を拒否して以降、団体交渉に応じないことが不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、会社の承継会社に対し、②の一部について誠実団交応諾及び文書交付を命じ、その余の申立てを却下又は棄却した。 
命令主文 
1 被申立人事業所に対する申立てを却下する。
2 被申立人会社に対する、平成25年9月20日、同年12月5日、同月24日、同26年2月24日、同年3月24日、同年5月27日、同年7月3日、同年8月2l日、同年9月11日及び同年11月20日の各団体交渉申入れに係る申立てを却下する。
3 被申立人会社承継人B3会社は、申立人に対し、下記の文書を速やかに交付しなければならない。


年 月 日
 組合
 執行委員長 A1様.
Y1会社
代表取締役 B1
 当社が、貴組合から平成27年1月14日、同年2月26日、同年5月7日、同年6月11日、同年9月24日及び同年12月29日に申入れのあった事項のうち、「職場改善(1)避難グッズの補強(2)避難マニュアル(地震・火災)」及び「組合室使用妨害とそれによる組合活動の著しい妨害の件」に係る団体交渉申入れに応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。

4 申立人のその他の申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 会社及び事業所は、それぞれ労組法上の使用者に当たるかについて
ア 会社について
 会社は、A1委員長が平成21年9月30日付けで定年退職して以降、組合には会社が雇用する者は存在せず、(組合の本部である)C5組合に所属する組合員も同24年12月末日をもっていなくなり、現在まで、C5組合に所属する従業員を雇用していないことから、組合に会社が現に雇用する労働者が含まれていない以上、組合は「使用者が雇用する労働者の代表者」に該当せず、会社は被申立人としての適格を有さないため、本件申立ては却下されるべきである旨主張する。
 確かに、本件団交申入れ時から、組合には、会社が現に「雇用する労働者」がいないことが認められるが、平成29年4月1日の会社の組織変更により事業所が閉鎖されるまでは、組合が組合室を使用し続けていたことが認められることから、組合と会社との集団的労使関係はなお継続していたとみるべきであり、会社が現に雇用する労働者がいなくても、会社の対応が不当労働行為に当たるか否かについて、組合が判断を求めることができなくなると解すべきではない。
 また、会社は、組合員と会社との間の雇用関係が終了していることも確定していることから、会社は労組法上の使用者に該当せず、本件申立ては却下されるべきであるとも主張するが、前記判断のとおりであるから、会社の主張は採用できない。
 したがって、会社が被申立人適格を有さないため、本件申立ては却下されるべきであるとする会社の主張は採用できない。

イ 事業所について
 不当労働行為救済申立ての被申立人適格を有するものは、労組法第7条及び同第27条第1項にいう「使用者」でなければならない。そして、救済命令が発せられた場合、「使用者」は、救済命令に従って、不当労働行為の責任主体として不当労働行為によって生じた状態を回復すべき公法上の義務を負担し、確定した救済命令を履行しないときは過料の制裁を受けることが予定されている。よって、「使用者」は、法律上独立した権利義務の帰属主体であることを要すると考えられるところ、事業所は、会社が設置していた支店の一つであり、会社を構成する組織の一部に過ぎないものと認められることから、法律上独立した権利義務の帰属主体たり得ないものである
 したがって、事業所については、不当労働行為救済申立ての被申立人とはなり得ないというべきであるから、本件申立てにおける事業所の被申立人適格は認められず、事業所に対する申立ては却下する。

2 争点の1(平成25年7月1日のB4支店のセキュリティシステムの変更に伴う組合室の利用に関する対応は、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか。)について
 会社は、組合に対し、25.5.20会社文書において、①同24年12月末日をもって、組合員が全員退職していることから、会社の施設管理・機密保持等の必要から、組合員がB6支店内へ立ち入る場合には、組合室利用の事前通知、利用時間を会社の営業時間とすることなど外部訪問者と同様の一定のルールの順守を求める旨、②同25年7月から、B6支店にセキュリティカードによる入退館管理を行うセキュリティシステムを導入する旨、③これは会社の本社に導入しているものと同様で、会社施設の安全管理、機密保持等のセキュリティ強化が目的であり、労働組合の活動を不当に制限しようとするものではない旨記載されていたことが認められるところ、このような会社の申入れそれ自体には相応の合理性があるものということができる。
 組合は、平成25年7月1日のB6支店におけるセキュリティシステム変更により、組合員の組合室への出入りが制限され、地域の仲間は勿論、郵便物をはじめ銀行、業者などの支店の出入りを禁止し、組合活動に大きな妨害となっている旨主張し、不当な制限の具体的な事例であるとして、地方から組合員が来ても、受付において入構を拒否された旨主張する。
 この点について、組合は、平成25年7月5日の組合員2名の入館に際し、A1さんの組合に所属するならよいが、事前に名前を言わないと入館できないと受付で言われたことを受けて、A1委員長が、事前に名前を言わないと組合室に出入りできないなどとの確認を会社としていない旨述べ本社人事に確認するよう求め、その後、組合員名を伝えたものである旨を説明していることが認められるが、当該組合員が組合室を使用できなかったとの事実の疎明はない等、本事例を組合員に対する不当な制限であるとする組合の主張は採用できない。
 さらに、25.7.5要求書において、組合が、金融機関の職員が組合を訪ねてくるので取り計らうよう要請したことに対し、会社は、入館手続を取ってもらうことで許可することとし、今後も事前に言ってもらえれば基本的に許可する旨述べ、後日、これに係る金融機関の職員の組合室への立入りは、認められている。
 したがって、平成25年7月1日のB6支店におけるセキュリティシステム変更に伴う組合室の利用に関する会社の対応は、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認めることはできない。

3 争点の2(平成25年9月20日に、組合が同年10月24日の団交開催を申し入れて以降、組合の団交申入れに応じないことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。)について
 申立期間内に27.1.28会社文書で回答のあった27.1.14要求書による団交申入れ以降、27.l2.29要求書までの団交申入れに対する会社の対応は、組合の要求事項によっては不当労働行為とはいえないが、「職場改善(1)避難グッズの補強(2)避難マニュアル(地震・火災)」及び「組合室使用妨害とそれによる組合活動の著しい妨害の件」に係る団交申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団交拒否であって、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為である。 
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