労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]
概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成28年(不)第64号・29年(不)第21号
不当労働行為審査事件 
申立人  X労働組合(組合) 
被申立人  Y1会社、Y2会社 
命令年月日  平成30年7月3日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、分会長の雇用主及びそのグループ会社を被申立人として、①分会長に対する出勤停止処分、②団体交渉における被申立人の対応、がそれぞれ不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件で、分会長に対する出勤停止処分の取消し、バックペイ及び文書手交を命じた 
命令主文 
1 被申立人Y1会社及び同Y2会社は、申立人組合員A2に対する平成28年7月4日から同月10日までの出勤停止処分がなかったものとして扱わなければならない。
2 被申立人Y2会社は、申立人組合員A2に対し、同人が平成28年7月4日から同月10日までの間、就労していれば得られたであろう賃金相当額と既支払額との差額を支払わなければならない。
3 被申立人Y1会社及び同Y2会社は、申立人に対し.下記の文書を速やかに手交しなければならない。
 組合
  執行委員長 A1様
年 月 日
Y1会社
代表取締役 B1
Y2会社
代表取締役 B2
 当社らが行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
              記
(1) 貴組合員A2氏に対し、7日間の出勤停止処分を行つたこと(1号、3号及び4号該当)。
(2) 貴組合との団体交渉において、賞罰委員会や貴組合員A2氏への処分についての協議に応じなかったこと(2号該当)。



判断の要旨  1 Y1会社の使用者性について
 ①Y1会社とY2会社とは同一の内容の就業規則と賃金規程を有していること、②27.6.10事故及び27.10.2事故に関しては、B3グループ各社コンプライアンス委員会名でA2分会長に対する懲戒処分が通知されていること、③B3グループ賞罰委員会規程が作成されていること、④賞罰委員会の開催通知はB3グループ賞罰委員会委員長名で作成され、A2分会長に対する賞罰委員会には、Y2会社の取締役ではないY1会社の代表取締役等が出席していること、⑤組合の団交申入れは、Y1会社3名あてで行われ、A2会長への懲戒処分についての団交が行われていること、⑥Y2会社による本件懲戒処分通知書には、A2分会長の賞罰委員会での言動や「B3グループ御中賞罰委員従業員側役員様」あての文書の内容を非難する記載が含まれていること、がそれぞれ認められる。
 これらのことからすると、B3グループに属するY1会社とY2会社は、A2分会長等従業員の人事管理を混然一体になって行っていたというべきであり、Y1会社は、Y2会社とともに、A2分会長に対する人事上の処遇を決定し得る地位にあるとみるのが相当であって、本件において、A2分会長の労働組合法上の使用者に該当すると判断される。
2 争点1(被申立人らのA2分会長に対する平成28年7月4日から同月10日の7日間の出勤停止処分は、労働組合法第7条第1号、第3号及び第4号の不当労働行為に当たるか。)について
(1) 本件懲戒処分の理由について
 被申立人らは、本件懲戒処分は、本件コンテナ乗り帰りと27.12.14事故を理由とするものと主張する。しかし、本件懲戒処分通知書をみると、本件懲戒処分の理由が明示されているとはいえない。しかも、同通知書には、詳細は追って通知する旨の記載があるが、本件審査手続において、被申立人は、別途文書を作成した事実はない旨認めており、本件懲戒処分は、その理由を明示しないまま行われたと判断される。
 A2分会長は、平成27年10月21日、翌日に納品予定のコンテナを牽引したまま自宅に車両を乗り帰ったが、賞罰委員会の開催通知は、本件コンテナ乗り帰りから2か月以上経過してからなされていること、会社は、A2分会長に対し、本件コンテナ乗り帰りについての事故報告書等の提出を求めなかったこと等、被申立人らにおいて当初から、コンテナの乗り帰りを懲戒処分の理由とする問題としていたかについては、疑問を感じざるを得ない。
 さらに、27.12.14事故については、コンテナ車に乗務したA2分会長が、誘導に従いバックで曲がって配達先に向かう際に縁石に乗り上げ、コンテナが傾き、角の住宅のカーポートの屋根に接触したというもので、重大な事故とはいうことはできない。
 また、A2分会長は、27.12.14事故以前に、物損事故である27.6.10事故及び27.10.2事故を起こし、それぞれ訓戒を受けたことが認められるが、このことを勘案しても、A2分会長に本件懲戒処分に相当する非違行為があったかについて、疑問を感じざるを得ない。
(2) 本件懲戒処分を決定する手続について
 A2分会長に対する賞罰委員会の開催及び運営については、数々の問題があり、被申立人らは、本件懲戒処分に際して、事実についての適切な調査を行い、公平を期そうとする態度を欠いたまま、恣意的に手続を行ったとみるのが相当である。
(3) 本件懲戒処分通知書について
 本件懲戒処分通知書についてみると、A2分会長が賞罰委員会の内容を他に漏らしたことは甚だ遺憾であるとか、平成28年5月1日及び同月2日付けで文書を提出したことは、懲罰委員会を無視し、正々堂々と意見を述べず、事故の責任を回避するものであるとの記載が認められる。
 懲戒処分の可能性を通告された労働者が労働組合に相談する権利は保証されるべきである。また、A2分会長の平成28年5月1日及び同月2日付け文書の提出は、懲罰委員会について疑問を呈し、回答を求めたものというべきで、非難されるべき行為には当たらない。
 そうすると、被申立人らが本件処分通知書にかかる記載をしたことは、著しく不適切であるとともに、A2分会長が組合に相談するなどしたことを嫌悪し、こうした行為を妨害しようとしたことを窺わせるものというべきである。
(4) 先行事件との関係について
 A2分会長が本件コンテナ乗り帰りや27.12.14事故を起こした時点で、先行事件が係属中であり、組合と被申立人側は敵対関係にあったこと、本件懲戒処分の直前にはA2分会長が証言をし、また、申立人側補佐人として尋問を行っていたことが認められる。
(5) 結論
 本件懲戒処分は、27.12.14事故を奇貨として、組合員であり、また、先行事件において証言や尋問を行ったA2分会長に対して、その組合活動を理由に、公平性を欠いた恣意的な手続を用い、行為に比して過重な処分を行ったものというのが相当であって、また、それによって組合活動の委縮を狙ったものといわざるを得ない。
 したがって、被申立人らが本件懲戒処分を行ったことは、労働組合法第7条第1号、第3号及び第4号の不当労働行為に該当する。
3 争点2(平成28年3月29日、同年6月14日、同年10月19日の3回の団交の賞罰委員会やA2分会長への処分についての協議における、被申立人らの対応は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。)について
 ①28.3.29団交において、B4顧問は、賞罰委員会等について協議を求める組合に対し、何もないのに処分するわけがないとし、この話は終わるよう述べたこと、②28.6.14団交において、会長は、賞罰委員会は内部の問題であり、まだ、処分も決まっていないので、これを議題にするのは内政干渉に当たり、議題にしない旨述べたこと、③28.10.19団交において、会長は、本日の団交議題は、会社の内部規定で決まっていることであって、賞罰委員会のことを組合がいうべきではない旨述べ、B4顧問は、本件懲戒処分が不服ならば賞罰委員会の場で発言すべきである、この問題は団交で話すべきことではない旨述べ、団交を終わろうと発言したこと、がそれぞれ認められる。
 会長やB4顧問の発言は、労働組合法についての理解を欠き、義務的団交事項に関する組合との団交での協議を正当な理由なく拒否したものと判断される。 
 したがって、本件団交の賞罰委員会やA2分会長への処分についての協議における被申立人らの対応は、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

[先頭に戻る]
 
[全文情報] この事件の全文情報は約750KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。