労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成28年(不)第36号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  平成30年5月11日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、自宅待機を命じられた保育園の園長が組合に加入し、組合が法人に対して団体交渉を申し入れ、自宅待機を命じた理由などについて協議を求めたところ、①1回目の団体交渉において、被申立人は、後日書面で回答すると約束しながら、その後この合意を反故にしたこと、②2回目の団体交渉において、被申立人は、自宅待機の理由について口頭での説明も拒否し、申立人が、自宅待機の理由について、再度書面回答を求めたところ、被申立人の回答文書は抽象的文言を羅列するばかりで、具体的事実の説明を拒んだこと、が不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件で、大阪府労働委員会は、法人に対し、団体交渉での合意事項についての書面回答を命じた。 
命令主文   被申人は、申立人に対し、平成28年6月24日に開催した団体交渉において書面回答することを合意した事項について、書面回答しなければならない。 
判断の要旨  1 争点1(A2組合員に対し28.6.6指示書で命じた自宅待機命令の理由を書面で回答しなかったことは、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるか。)について
(1) 28.6.24団交において、法人は、書面回答の約束をし、そのことを法人も認識していたといえる。そして、法人が、A2組合員が行ったとするパワーワーハラスメントに係る職員への事情聴取等の調査内容を組合に書面回答していないことについて、当事者双方に争いはない。
(2) 法人は、①28.6.24団交において自宅待機を命じた理由を説明した、②3回の面談のほか、運営委員による聴取を行っており、A2組合員自身、自宅待機を命じられた理由を十分認識できていたはずである、③組合が求める内容を書面で回答すれば、法人が聞き取りをした職員から情報元を明かさないことを求められていたことに反し、法人が当該職員の信頼を失うこととなり、また当該職員とA2組合員との対立を招くおそれもあることから誠実交渉義務に反するものではない、旨主張する。
ア 28.6.24団交において、組合が、法人として特に問題視する事例をいくつか挙げるように述べたところ、法人は、主任保育士2人が購入した園児のロッカーに入れて使う籠に多少問題があり、他の職員がいる前で指導とはいい難い罵声的な激しい口調で感情的に言われて、当該2人の職員の体調不良が続いた旨述べたことが認められる。
 そこで、組合は、この事例の説明を受けた上で、パワーハラスメントを訴えた職員やA2組合員への事情聴取の内容等について書面回答を求め、法人はこれに合意しているのであるから、法人がパワーハラスメントであると認識している具体例を団交の場で一例挙げたことが、合意した書面回答をしなくてもよい理由にならないことは明らかであり、法人主張①は失当であり、採用できない。
イ 法人は、A2組合員に対し、28.5.6面談、28.5.9面談等を実施したことが認められる。
 しかし、たとえ、A2組合員との間で面談や事情聴取を重ねていたとしても、その対応がその後の組合との団交において合意した書面回答に代替するものではないことは明らかであり、法人主張②は到底採用できない。
ウ 28.6.24団交の翌日、法人が、組合に、色々考えた末、書面回答はできない旨架電したのみで、回答できない事情や理由を具体的に説明したとの疎明はない。
 そして、組合は、文書回答を求める際に、個人名は不要である旨伝えており、法人と情報元との信頼関係にも一定配慮していたといえ、それでもなお、法人として危惧があり、文書回答できないとするなら、法人は、そのことを十分組合に説明して理解を求める努力をすべきであり、そのような対応を取ることなく、色々考えた末と述べただけでは、理由すら明らかにすることなく、28.6.24団交での合意を反故にしたといわざるを得ない。よって、法人主張③は採用できない。
(3) 以上のとおりであるから、28.6.24団交において、A2組合員に対して自宅待機を命じた理由について、法人が、A2組合員が行ったとするパワーハラスメントに係る職員への事情聴取等の調査内容について書面回答すると合意したにもかかわらず、これをしなかったことは、団交での合意事項を正当な理由なく履行しなかったもので、不誠実な対応であるといえ、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
2 争点2(28.7.14団交に係る法人の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるか)について
(1) 法人は、①28.7.14団交においても28.6.24団交での説明を踏まえて再度組合にA2組合員の自宅待機の理由を説明した、②28.7.22回答書は、28.6.24団交及び28.7.14団交での法人の説明を併せれば抽象的文言の羅列ではなく、組合としても自宅待機を命じた理由について具体的な理由を概ね把握することができる、旨主張する。
ア 28.6.24団交のやり取りから、籠の購入に際し、A2組合員と主任保育士らとの間で、何らかの問題が生じていることが説明されていることは認められるものの、問題の原因の所在等、自宅待機の理由と関連する事実関係は依然として不明、曖味なままであるといわざるを得ない。また、法人が自宅待機命令の理由としているA2組合員が行ったとするパワーハラスメントについて、法人が調査し認定した事実の真実性を組合にも納得させ、かつ、それを前提とする自宅待機命令の正当性を明らかにもしていない。
 そして、28.7.14団交において、法人が一つ一つ検証するつもりがない旨述べたことからすれば、籠の件以外にどのような問題があったのか一切明らかになっていないのであるから、28.6.24団交及び28.7.14団交において、法人が、自宅待機を命じた理由を説明したとは到底認められず、法人主張①は採用できない。
イ 法人は、組合に、A2組合員が保育園の運営に当たり、多くの場面で、職員に対し,適切な指示が出来ず、度重なる起伏の激しい感情的な言動によって、主任保育士をはじめ多くの職員の不信を招き、開園したばかりの保育園のスムーズな運営が不可能となったため、同人は園長として不適任であると判断した旨記載した28.7.22回答書をファクシミリで送信したことが認められるが、28.7.22回答書白体も具体性に乏しいといわざるを得ず、組合が具体的な理由を概ね把握できるものになっているとは認められない。よって、法人主張②も採用できない。
(2) 以上のとおりであるから、法人が、28.7.14団交で自宅待機を命じる理由について口頭での説明を拒否したこと及び28.7.22回答書で具体的事実の説明に応じなかったことは、自己の主張の根拠を説明しようとしない不誠実なものであって、28.7.14団交に係る法人の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。  
掲載文献   

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