労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成28年(不)第37号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  平成30年3月27日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、法人が、①団体交渉に理事長を出席させなかったこと、②団体交渉再開の申入れに応じなかったこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、会社に対し、②について文書の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
               
                         
年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様                         
法人                  
理事長 B1

 当法人が、貴組合からの平成28年5月13日付け及び同年6月1日付けの団体交渉申入れのうち、貴組合員A2氏の雇用契約解除の理由とそれに伴う解決金の問題について、団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
2 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 28.3.2団交に理事長を出席させなかったことについて
 団交の一方当事者である使用者側が、団交の交渉担当者として、誰を出席させ、労働組合からの要求事項に対し、回答ないし説明を行う者を誰にするか、については、いずれも使用者の判断に属するものであり、労働協約等でこれに関する団交ルールを定めている等の特段の事情のない限り、他方の当事者である労働組合が関与しうる事項ではない。
 そして、本件においては、組合と法人との間に労働協約等でこれに関する団交ルールが定められていた等の特段の事情があったと認めるに足る事実の疎明もないことからすると、法人が、組合との団交に関して、理事長を出席させずに、団交の交渉担当者として代理人弁護士や法人職員を出席させたことは、使用者の判断に属するものである。
 のみならず、組合は、法人が28.3.2団交に決定権限を有する理事長を出席させず、団交事項について常に持ち帰る回答しかしなかったと主張するが、28.3.2団交において、法人側の出席者は、組合の団交での要求事項に対し、法人としての見解を伝え、法人としての回答をしていることが明らかであるから、組合の主張は採用できない。
 以上のとおりであるから、法人が28.3.2団交に理事長を出席させなかったことは、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たるとはいえず、この点に係る組合の申立ては棄却する。
2 28.3.2団交を最後に、28.5.13団交申入れ及び28.6.1団交申入れに応じないことについて
 A2支部長の解雇撤回及び自主退職とする組合提案は、A2支部長の雇用契約解除の理由に関する事項であり、組合が示した解決金の問題はそれに伴う事項であり、いずれもA2支部長の雇用契約関係の終了に伴う事項であるといえる。
 もっとも、本件中労委命令において、法人がA2支部長との間の有期雇用契約を解除したことは、不利益取扱いに当たらないと判断され、同命令は確定しているが、そのことによって、組合が、A2支部長の有期雇用契約の解除を前提としながら、A2支部長の雇用契約関係の終了に伴う事項について、団交を求めることができなくなるとはいえない。
 そうすると、28.5.13団交申入れ及び28.6.1団交申入れに係る団交要求事項のうち、A2支部長の雇用契約解除の理由とそれに伴う解決金の問題については、雇用契約関係の終了に伴う事項とみることができるのであるから、義務的団交事項に該当するといえる。
 したがって、法人は28.5.13団交申入れ及び28.6.1団交申入れの要求事項のうち、A2支部長の雇用契約解除の理由とそれに伴う解決金の問題については団交に応じる義務がある。
 28.3.2団交終了時においても、A2支部長の雇用契約解除の理由とそれに伴う解決金の問題については、なお、協議が継続していたということができる。
 A2支部長の雇用契約解除の理由とそれに伴う解決金の問題については、28.3.2団交終了時も未だ交渉が継続中であったのであるから、法人は、団交の開催に応じて、団交の場で法人の考え方を誠意をもって説明すべき義務があると認めるのが相当であるのに、法人はそうすることなく、28.3.29法人回答書、28.5.23法人回答書及び28.6.10法人回答書により、解決金について交渉が妥結する見込みがないとして、A2支部長の雇用契約解除の理由の問題を含めて、これ以上の団交には応じない旨回答していることが明らかである。
 そうだとすれば、28.5.13団交申入れ及び28.6.1団交申入れに係る組合からの団交要求事項のうち、A2支部長の雇用契約解除の理由とそれに伴う解決金の問題について、法人が誠意をもって説明すべき義務を果たしたとはいえない。したがって、28.3.2団交を最後に、今後、法人が組合との間で団交を継続しても、妥結点が見出せない状況であったとの法人の主張は採用できない。
 以上のことからすると、法人が28.5.13団交申入れ及び28.6.1団交申入れのうち、A2支部長の雇用契約解除の理由とそれに伴う解決金の問題について、団交に応じないことに正当な理由があるとみることはできず、また、こうした法人の対応は、労使間の交渉を殊更軽視することによって組合員からの組合への信頼を損なわせ、組合の影響力を排除しようとするものとみるべきであるから、組合を弱体化させる支配介入にも当たるといわざるを得ない。
 以上のとおりであるから、法人が、28.5.13団交申入れ及び28.6.1団交申入れのうち、A2支部長の雇用契約解除の理由とそれに伴う解決金の問題について団交に応じないことは、労働組合法第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であるといわざるを得ない。 
掲載文献   

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