労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  都労委平成28年(不)第8号
情報通信研究機構不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  平成30年2月20日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①法人が、平成28年4月1日以降、A2らを雇用しなかったこと、②組合が法人に申し入れた団体交渉における法人の対応、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、東京都労働委員会は、誠実団交応諾、②の一部について文書の交付・掲示、履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人法人は、申立人組合が、平成27年9月30日にB2マネージャーが組合員A2及び同A3に対して行った言動がパワーハラスメントに当たるか否かについて団体交渉を申し入れたときは、管理職以外の職員からも聞き取り調査を行うなど必要な調査を実施するとともに、調査方法及び調査結果を具体的に説明するなどして、誠実に応じなければならない。
2 被申立人法人は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートルX80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、法人内の従業員の見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。
               
                         
年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 殿                         
法人                  
理事長 B1

 当法人が、平成27年12月1日から平成28年5月30日までの6回の団体交渉において、管理職の職員に対する平成27年9月30日の言動がパワーハラスメントに当たらないとする理由について、十分な説明を尽くさなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
 (注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)
3 被申立人法人は、前項を履行したときは、当委員会に速やかに文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 法人が、平成28年4月1日以降、A2らを雇用しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか否か
 A2らと同じく平成27年度において法人で勤務していた一般職有期雇用職員のうち、平成28年度公募において雇用継続を希望した者の約1割が法人に採用されておらず、組合員以外にも平成28年度公募において不採用となった者が相当数存在する。それゆえ、法人での雇用実績があるA2らが平成28年度公募で不採用となっても、法人の一般職有期雇用職員に係る労務政策上、必ずしも不自然な取扱いであるとまではいえない。
 委託研究推進室においては、法人がA2らの組合加入を認識する以前から、平成28年度以降の業務体制の変更を検討しており、それまでA2らが担当してきた経理検査業務についても、ベテランである同人らの経験や実績のみに頼ることのない組織体制作りを模索していたことがうかがえる。
 法人は、A2らの組合加入を認識する以前から、平成28年度以降の経理検査の業務体制変更を検討し、平成28年度以降、A2らを含む委託研究推進室における一般職有期雇用職員の採用数を絞ろうとしていたことが認められるのであり、一方、法人が、A2らが組合員であることやその組合活動を理由として、同人らの公募不採用を決定するに至ったことをうかがわせる事情は、特段見当たらない。A2らの不採用が同人らの組合加入を理由とするものであるとみるのは困難であるといわざるを得ない。
 よって、法人が、平成28年4月1日以降、A2らを雇用しなかったことは、組合員であるが故の不利益取扱いには当たらない。
2 組合が法人に申し入れた団体交渉における法人の対応が、不誠実な団体交渉に当たるか否か
① B2MGによるパワハラについて
 本件行為におけるパワハラの加害者とされているB2MGを団体交渉に出席させれば、もめるおそれがあるとの法人の主張には一定の合理性が認められる。しかし、B2MGを団体交渉に出席させないのであれば、法人は、その代わりに、法人の認識する事実とその根拠を組合に説明できるよう、事実関係の調査を十分に行った上で団体交渉に臨む必要があったというべきである。
 本件行為は、管理職である上司から一般職員である部下に対しての業務指示に関する言動であるところ、一般職員を指導する立場にある他の管理職が、管理を受ける立場にある一般職員の感覚を理解することは難しく、同じ立場にあるB2MGの言動を安易に容認しかねないであろうことは容易に推認することができる。そのため、事実確認の手段としては、管理職3名のみの聞き取りでは不十分であり、現場にいた他の職員からも聞き取り調査を行うべきであるとの組合の主張には相応の理由があった。しかし、法人は、組合が再三、聞き取り調査が不十分であることを指摘しても、管理職3名以外の委託研究推進室所属の職員からの聞き取り調査を実施しておらず、そのような法人の対応に合理的な理由があるとは認め難い。
 加えて、法人は、本来のハラスメント対応窓口ではない総務部人事室に対応を委ねている。パワハラの事実の指摘が組合から法人に対する団体交渉申入れによりなされたことから、労働組合対応の窓口である総務部人事室が対応したことに労務政策上の必要性があったとしても、そのために、パワハラの申告があった際には通常対応窓口とされている総務部総務室に調査を委ねず、十分な調査の実施に努めていないのであれば、それ自体が組合及び団体交渉を軽視する姿勢であると見られてもやむを得ないものがある。
 組合は、平成27年11月13日の第1回団体交渉の申入れや12月23日付要求書により、組合の主張する事実を明らかにしており、聞き取り調査の実施が困難なほど、組合の主張する事実が曖昧であったとはいい難い。
 確かに、法人が指摘しているように、本件行為がパワハラに当たるか否かは、仮にB2MGがA3に対して大声を出したとしても、大声を発した状況、大声を出すに至った理由等諸事情を踏まえて判断することになる以上、組合に対し、上記諸事情につき釈明を求めたこと自体は理解できなくはない。
 しかし、上記の諸事情は十分な聞き取り調査を行うことで明らかになるものであるから、聞き取り調査を経て本件行為に関する基本的事実関係を明らかにした上で、前記諸事情を検討し、細かな主張の違いや事実の評価等についてすり合わせを行うべきである。組合に対してのみ事実関係の詳細な整理を求め、それがなされなければ話合いが前に進まないとする法人の姿勢には、合理性は認められない。
 以上のとおり、法人は、団体交渉において、十分な聞き取り調査を実施しないまま、B2MGが大声でどう喝・叱責した事実はないとの説明を繰り返し、組合から聞き取り調査が不十分であることを指摘されても、組合に対しては事実関係の詳細を明らかにするよう求める一方、自らは、通常パワハラの申告があった際には行っている、法人所定のハラスメント対応窓口である総務部総務室に調査を委ねることをしていなかったばかりか、調査の際、一般職員への聞き取りさえ行っていなかったのであるから、このような法人の対応は、不誠実な団体交渉に当たるといわざるを得ない。
② A2らが公募で不採用となった理由について
 これまで法人と全く雇用関係になかった平成28年度公募応募者の不採用について団体交渉申入れを受けた場合とは異なり、A2らには、平成28年度公募を経て雇用継続されることへの相応の期特があったのであるから、法人は、組合に対し、従前雇用関係にあったA2らが公募により採用されなかった理由について、相応の説明をしなければならない立場にあったというべきである。
 公募は、雇止めの場合とは異なり、特定の人物が更新基準を満たしたかを判断するのではなく、一定の採用基準の下で、応募者の中の上位の者から採用する採用選考であるところ、面接試験の評価基準や採点結果が明らかとなった場合、将来の応募者が様々な対策を講ずるなどすることにより、面接試験における応募者の人物評価を適切に行うことができなくなるおそれがある。本件においては、法人が公募要領以外の評価基準等を一般に開示しているとの事情はうかがわれないところ、法人における今後の公正・円滑な採用活動への影響を踏まえると、評価基準やA2らの採点結果そのものを説明することは困難であったといわざるを得ない。
 不採用理由を具体的に説明した場合、応募者の業務遂行能力や資質等の検証の対象項目や評価の在り方、そして面接試験の傾向ないし職員採用基準等について一定程度推知される結果となるため、今後の採用活動に影響を及ぼすおそれが認められる。本件においても、法人が公募応募者に対して不採用理由を具体的に説明している等の事情は特段見当たらないのであるから、組合がA2らが今後公募に応募しないことの確約や守秘義務の誓約を提案していることを踏まえても、法人における不採用理由の説明がある程度抽象的なものとなるのは無理からぬことである。
 法人は、委託研究推進室の業務体制変更自体がA2らを職場から排除する目的でなされたものであり、平成28年度公募は公正に行われなかったのではないかとの組合の疑念に対して、適宜できる限りの回答をすることにより説明を行っている。
 法人は、A2らの不採用に対する組合の疑念に正面から答えたとはいえなくても、組合の指摘や質問には可能な範囲で説明や回答を行っており、平成28年度公募では、募集内容や採用方針に照らして、A2らのこれまでの経理検査業務の経験が公募で必ずしも有利に働かなかったことや、委託研究推進室の公募人数が3名に減員となった理由など、A2らの不採用に係る事情について相応の説明はしている。これに対して、組合が具体的な理由を示してその説明が合理性を欠いていると反論していないことも考慮すれば、法人の対応が不誠実であるとまでいうことはできない。 
掲載文献   

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