労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第41号・47号・49号・50号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社、Y2会社、Y3会社 
命令年月日  平成30年2月23日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、被申立人らは実態としては一つの会社であるところ、①組合員の業務を制限するとともに宿直回数を減らしたこと、②組合がこれらを議題とする団体交渉申入れを行ったところ、団体交渉の応諾を徒に引き延ばしたこと、③団体交渉で組合に対し書面で回答することを合意したにもかかわらず、回答期限までに何ら回答しなかったこと、④組合が当委員会に対し不当労働行為救済申立てを行ったところ、組合員2名に対し、合理的な理由なく雇用契約終了予告通知を交付したこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、被申立人3社に対し、業務指示を行うにあたり、同種の業務に従事する他の従業員との同等の取扱い、バックペイ、団交応諾、②の一部について文書の手交、Y1会社に対し、雇用契約が終了しなかったものとしての取扱い、バックペイを命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y1会社、同Y2会社及び同Y3会社は、申立人組合員A2及び同A3に業務指示を行うに当たり、同種の業務に従事している他の従業員と同等に取り扱わなければならない。
2 被申立人Y1会社、同Y2会社及び同Y3会社は、連帯して、申立人組合員A2、同A3及び同A4に対し、平成27年4月21日から下記の期間における担当者手当、当直・通夜等手当、請取手当及び寝台手当について、平成26年3月支払分から同27年2月支払分までの間の同人らの平均支給額を基礎に算出した額と既支払分との差額を支払わなければならない。
                
(1)A2については、平成27年9月15日まで
(2)A3及びA4については、平成27年9月30日まで
3 被申立人Y1会社は、申立人が平成27年7月21日付けで申し入れた団体交渉に応じなければならない。
4 被申立人Y2会社及び同Y3会社は、申立人が平成27年7月21日付けで申し入れた、業務指示及びB3の処遇に関する団体交渉に応じなければならない。
5 被申立人Y1会社は、申立人組合員A2との雇用契約が平成27年9月15日をもって終了しなかったものとして取り扱い、同人の雇用契約が更新されていれば得られたであろう賃金相当額を支払わなければならない。なお、当該期間における担当者手当、当直・通夜等手当、請取手当及び寝台手当については、平成26年3月支払分から同27年2月支払分までの間の同人の平均支給額を基礎に算出するものとする。
6 被申立人Y1会社は、申立人組合員A3との雇用契約が平成27年9月30日をもって終了しなかったものとして取り扱い、同人の雇用契約が更新されていれば得られたであろう賃金相当額を支払わなければならない。なお、当該期間における担当者手当、当直・通夜等手当、請取手当及び寝台手当については、平成26年3月支払分から同27年2月支払分までの間の同人の平均支給額を基礎に算出するものとする。
7 被申立人Y1会社は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
                
                         
年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
Y1会社                       
代表取締役 B1

 当社が、貴組合が平成27年7月21日付けで申し入れた団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
8 被申立人Y2会社は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
                
                         
年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
Y2会社                       
代表取締役 B2

 当社が、貴組合が平成27年7月21日付けで申し入れた、業務指示及びB3の処遇に関する団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
9 被申立人Y3会社は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
                
                         
年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
Y3会社                       
代表取締役 B2

 当社が、貴組合が平成27年7月21日付けで申し入れた、業務指示及びB3の処遇に関する団体交渉に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
10 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点1(Y2会社及びY3会社は、Y1会社とともに、本件組合員3名の労働組合法上の使用者に当たるか。)について
(1)業務指示について
 Y2会社及びY3会社は、本件組合員3名の業務指示に直接関与しているのであるから、業務指示に関しては、Y2会社及びY3会社は、Y1会社とともに、本件組合員3名の労働組合法上の使用者に当たる。
(2)給与面について
 本件組合員3名に支給されていた手当には、請取手当、担当者手当、当直・通夜等手当、寝台手当等があるところ、これらの手当は、当該業務に従事することにより支給される金員であって、業務指示の対価であるといえる。このことと、業務指示に関しては、Y2会社及びY3会社は、Y1会社とともに、労働組合法上の使用者に当たることを併せ考えると、業務指示の対価といえる手当についても、業務指示の態様に直接影響を受けるのであるから、Y2会社及びY3会社は、Y1会社とともに、労働組合法上の使用者に当たる。
 したがって、給与のうち、基本給や賞与など業務指示の態様に直接影響を受けることなく支払われる給与については、Y2会社及びY3会社は、本件組合員3名の労働組合法上の使用者には当たらないが、業務指示の対価といえる手当については、Y2会社及びY3会社は、Y1会社とともに、本件組合員3名の労働組合法上の使用者に当たる。
 以上のとおりであるから、雇用その他の労働条件に関しては、Y2会社及びY3会社は、本件組合員3名の労働組合法上の使用者には当たらないが、業務指示及び業務指示の対価といえる手当に関しては、Y2会社及びY3会社は、Y1会社とともに、本件組合員3名の労働組合法上の使用者に当たる。
2 争点2(本件組合員3名について、①36協定締結後の宿直業務回数、②組合加入後の請取業務回数が、それぞれ、同人らの組合加入前と比べて減少したことは、被申立人3社による、組合員であるが故の不利益取扱いに当たるか。)について
(1)36協定締結後の宿直業務回数の減少について
 本件組合員3名について、36協定締結後の宿直業務回数が、同人らの組合加入前と比べて減少したことに、合理的な理由があるとはいえず、27.3.20団交以降、組合と被申立人3社との間の労使関係が対立関係にあったことからすると、本件組合員3名の宿直業務回数が減少したことは、被申立人3社の組合嫌悪意思によるものとみざるを得ない。
 したがって、本件組合員3名について、36協定締結後の宿直業務回数が同人らの組合加入前と比べて減少したことは、被申立人3社による、組合員であるが故の不利益取扱いに当たる。
(2)組合加入後の請取業務回数の減少について
 本件組合員3名について組合加入後の請取業務回数が減少したのは、被申立人3社が、あえて、請取業務に従事させないようにしたことによるものとみざるを得ず、本件組合員3名は請取業務回数が減少したことにより、経済的不利益を被ったとみるのが相当である。
 組合と被申立人3社とは対立関係にあったことからすると、このような業務割当は、被申立人3社の組合嫌悪意思によるものとみざるを得ない。
 したがって、本件組合員3名について、組合加入後の請取業務回数が、同人らの組合加入前と比べて減少したことは、被申立人3社による、組合員であるが故の不利益取扱いに当たる。
(3)結論
 以上のとおりであるから、本件組合員3名について、①36協定締結後の宿直業務回数、②組合加入後の請取業務回数が、それぞれ、同人らの組合加入前と比べて減少したことは、いずれも、被申立人3社による、組合員であるが故の不利益取扱いであり、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為である。
3 争点3(27.6.20団交において、被申立人3社が、平成27年7月25日までに被申立人3社の見解を書面で回答する旨の合意があったか。あったとすれば、同日までに、被申立人3社が回答していないことは労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるか。)について
 Y2会社及びY3会社は、業務指示及び業務指示の対価といえる手当に関しては、本件組合員3名の労働組合法上の使用者に当たるが、その他の労働条件については、労働組合法上の使用者には当たらない。そして、労働契約は、専ら雇用主たるY1会社との関係であり、また、夏季賞与は、業務指示及び業務指示の対価といえる手当であるとはいえないのであるから、本争点で問題となっている事項について、Y2会社及びY3会社は、本件組合員3名の労働組合法上の使用者には当たらない。
 したがって、その余を判断するまでもなく、Y2会社及びY3会社に対する申立ては、棄却する。
 労働契約の適正化及び夏季賞与に関して、Y1会社の見解を書面で回答する旨の合意があったといえる。
 Y1会社は、団交における合意事項を、理由もなく履行していないのであるから、このようなY1会社の対応は、組合にとって団交の成果である合意を無視し、交渉を無意味にするもので不誠実であるといわざるを得ない。
 以上のとおりであるから、平成27年7月25日までに、Y1会社が組合に対し、労働契約の適正化及び夏季賞与に関して同社の見解を回答していないことは労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
4 争点4(組合の平成27年7月13日付け及び同月21日付け団交申入れに対する被申立人3社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるか。)について
 議題(iii)についてみると、「(2015年6月20日に継続協議となった労働契約見直し及び夏季賞与)」との記載があることからすると、27.6.20団交において、使用者側の見解を示すと約した事項であるとみるのが相当である。これは、労働条件に関する事項であって、義務的団交事項であるが、当該事項について、Y2会社及びY3会社は、本件組合員3名の労働組合法上の使用者には当たらない。
 したがって、当該議題については、その余を判断するまでもなく、Y2会社及びY3会社に対する申立ては棄却する。
 組合が回答期限としたのは、団交申入れから4日後であり、回答期限として十分な期間があったとまではいえない。また、回答期限から数時間遅れたものの、少なくとも、Y1会社は日時の連絡について猶予を求める旨のファックスを送信していることからすると、この時点では、被申立人3社が、徒に団交の開催を引き延ばしたとまではいえない。
 したがって、平成27年7月13日付け団交申入れについて、議題(i)及び議題(ii)についての被申立人3社の対応、議題(iii)についてのY1会社の対応に係る組合の申立てについては、棄却せざるを得ない。
 平成27年7月21日付け団交申入れに対し、議題(i)及び議題(ii)について被申立人3社が、議題(iii)についてY1会社が、団交に応じていないことについて、いずれも、正当な理由があったとはいえない。
 以上のとおりであるから、平成27年7月13日付け団交申入れに対する被申立人3社の対応に係る組合の申立ては全て棄却する。
 一方、平成27年7月21日付け団交申入れに対するY1会社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であり、また、同団交申入れのうち、議題(i)及び議題(ii)についてのY2会社及びY3会社の対応は、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為である。
5 争点5(A2組合員の雇用契約が終了したことは、被申立人3社による、組合員であるが故の不利益取扱い及び不当労働行為救済申立てを行ったことを理由とする不利益取扱いに当たるか。また、このことは、組合に対する支配介入に当たるか。)について
 A2組合員の雇用に関しては、Y2会社及びY3会社は、労働組合法上の使用者には当たらないので、その余を判断するまでもなく、Y2会社及びY3会社に対する申立ては棄却する。
 Y1会社がA2組合員との雇用契約を終了させたことに、合理的な理由があったとはいえない。
 組合との対立関係が深まり、組合活動がさらに活発となっていた最中に、Y1会社はA2組合員に対し、雇用契約を終了させたのであるから、このようなY1会社の対応は、組合の活発な組合活動を嫌悪したが故とみるのが相当である。
 以上のとおりであるから、A2組合員の雇用契約が終了したことは、Y1会社による、組合員であるが故の不利益取扱いであり、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であるとともに、組合に対する支配介入であって、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
 また、Y1会社が嫌悪した組合活動には、27-41事件及び27-47事件の申立てが含まれるとみるのが相当であるから、A2組合員の雇用契約が平成27年9月15日をもって終了したことは、Y1会社による、不当労働行為救済申立てを行ったことを理由になされた不利益取扱いであるとみるのが相当であって、労働組合法第7条第4号に該当する不当労働行為である。
6 争点6(A3組合員の雇用契約が終了したことは、被申立人3社による、組合員であるが故の不利益取扱い及び不当労働行為救済申立てを行ったことを理由とする不利益取扱いに当たるか。また、このことは、組合に対する支配介入に当たるか。)について
 A3組合員の雇用に関しては、Y2会社及びY3会社は、労働組合法上の使用者には当たらないので、その余を判断するまでもなく、Y2会社及びY3会社に対する申立ては棄却する。
 Y1会社がA3組合員との雇用契約を終了させたことに、合理的な理由があったとはいえない。
 組合との対立関係が深まっていた状況において、組合が、27-41事件及び27-47事件の申立てを行い、組合活動がさらに活発となっていたといえるところ、27-47事件の申立てから約1か月後の、平成27年8月28日に、Y1会社はA3組合員に対し、27.8.28通知を交付し、同年9月30日をもって雇用契約を終了させたのだから、Y1会社が、同日をもって雇用契約を終了させたのは、組合の活発な組合活動を嫌悪したが故とみるのが相当である。
 以上のとおりであるから、A3組合員の雇用契約が終了したことは、Y1会社による、組合員であるが故の不利益取扱いであり、労働組合法第7条第1号に該当する不当労働行為であるとともに、組合に対する支配介入であって、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
 また、Y1会社が嫌悪した組合活動には、27-41事件及び27-47事件の申立てが含まれるとみるのが相当であるから、A3組合員の雇用契約が平成27年9月30日をもって終了したことは、Y1会社による、不当労働行為救済申立てを行ったことを理由になされた不利益取扱いであるとみるのが相当であって、労働組合法第7条第4号に該当する不当労働行為である。 
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