労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成28年(不)第9号
不当労働行為審査事件
申立人  X1組合(「組合」)、X2(個人) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  平成30年1月29日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、被申立人の学部長が、組合員1名を個別に呼び出し、長時間にわたり、組合批判の言動を繰り返し、同人を威嚇し、同人の組合活動を萎縮させるとともに、組合の活動を萎縮・妨害したこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、法人に対し、文書の手交を命じた。 
命令主文   被申立人は、申立人組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
               
               
年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
法人                
理事長 B1

 平成27年2月26日に、当法人が、文芸学部長B2をして、貴組合員X2氏に対し、貴組合を批判する内容の発言を行わしめたことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後このような行為を繰り返さないようにいたします。 
判断の要旨  争点(平成27年2月26日、B2学部長が、学部長室において、X2組合員に対して行った発言は、組合に対する支配介入に当たるか。)について
 組合に対する使用者側の発言が労働組合法第7条第3号の支配介入に当たるか否かは、使用者側の発言の内容、それが行われた状況等に照らして判断されるべきものである。
(1)本件2.26発言の内容について
① 2.26守秘義務発言について
 B2学部長は、教員会議の人事に関する情報が組合に伝わっていることを問題視し、それを前提に守秘義務の遵守を求めていることは明らかであり、「外」の表現が組合を指しているというのが相当である。
 また、B2学部長は、「これは前に別の人が漏らしたんです。」と述べ、組合に対しC1人事に関する情報を最初に伝えたのは、X2組合員以外であることを認めているにもかかわらず、X2組合員に対して組合への情報提供が問題である旨の発言を繰り返していることから、C1人事に関する守秘義務に係ることで組合を批判しているといわざるを得ない。
 以上のとおり、2.26守秘義務発言は、B2学部長が、組合に対する非難を行ったものであり、組合活動を批判した発言であるといえ、一般論として外部に口外することが好ましくないことを指摘したなどとする法人の主張は採用できない。
② 2.26組合ニュース発言について
 組合らは、「断れない人事」が円滑に進まなくなったことにB2学部長が苛立って組合に責任転嫁したもので、組合の正当な活動を中傷し、その名誉を毀損するものである旨主張する。
 一方、法人は、B2学部長が、教員会議を運営する文芸学部長という立場で表現したもので、支配介入に当たる要素を含んでいない旨主張する。
 B2学部長は、組合ニュース発行当時組合員ではなかったX2組合員に対し、組合ニュースの記載内容について、組合の行動を問題視する発言を行っているといえ、2.26組合ニュース発言は、B2学部長が組合活動を批判した発言であり、この点に係る法人の主張は採用できない。
③ 2.26人事権発言について
 組合らは、「人事を断る権利はない」というのは学則第56条に照らして虚偽であり、2.26人事権発言は、組合の正当な争議内容を不当に批判し、組合運動を抑止させる効果を有する旨主張する。
 学則第56条には、教授会における人事その他学部長が重要と認めた事項に関する決定手法が規定されていることは認められるものの、法人の人事権限が理事長ではなく教授会に属すると認めるに足る事実の疎明はない。したがって2.26人事権発言の内容自体は虚偽であるとまではいえず、2.26人事権発言は、私立大学の人事権は理事長にある旨、学部が人事を断る権利はない旨のB2学部長の認識若しくは見解が述べられたものとみるのが相当であり、この点に係る組合の主張は採用できない。
(2)本件2.26発言が行われた状況について
 呼出しは、X2組合員が12.12議事録の表現の修正を求めたことから、事前に本人に修正案の確認を求めるもので、前日にその旨の連絡もなされており、それ自体は不当、不自然とはいえない。しかしながら、本件2.26発言は、呼出しの用件であった12.12議事録の確認作業を終了した後になされており、B2学部長は、組合を批判する発言を、教員会議の用務としてその場に臨んでいたX2組合員に対しあえて行ったものといえる。
(3)本件2.26発言前後のB2学部長の地位、身分について
 教員会議でのB2学部長の立場は学部を代表する立場であり、学部の意向と法人の意向が反する場合も有り得るものといえる。
 一方、①大学職制第6条第3項によれば「学部長は、当該学部の教務を掌理し、所属職員を監督する。」と規定されており、B2学部長は、所属職員たるX2組合員を監督する立場にあったこと、②B2学部長は、組合と法人との間で行われた、(ⅰ)平成26年11月27日のC1人事に関する意見交換、(ⅱ)同27年3月25日の新規採用教員に係る分会交渉、(ⅲ)同年10月27日の本件協議でのB2学部長の発言内容に係る分会交渉に、いずれも法人側出席者として参加していたこと、が認められる。
 これらのことからすると、B2学部長は、X2組合員を監督する立場にあるとともに、組合との労使交渉において、法人側出席者として参加し、法人の意向を説明し、組合と対峙する側の立場にあったといえる。
 以上のことから、B2学部長は、必ずしも法人の利益代表者であるとはいえない側面も見受けられるものの、組合と法人との間で開催されたC1人事に関する意見交換や分会交渉等において、いずれも法人側として出席しており、本件2.26発言前後を通じて、C1人事に関する法人側の意向を熟知し、C1人事に関しては、教員会議の議長の立場を超えて法人の意を体し、法人側を代表して組合と対峙する立場の一員であったといえる。
(4)結論
 以上を総合して考えると、本件2.26発言のうち、2.26守秘義務発言及び2.26組合ニュース発言については、B2学部長が、教員会議の用務として協議に出席している組合員個人に対し、教員会議の議長の立場を超えて法人の意を体し、組合に対する批判を行ったものであって、組合員を威嚇し、組合活動に介入するものといえる。したがって、かかる発言は、法人がB2学部長をして行わしめた組合に対する支配介入であり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。 
掲載文献   

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