労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  神労委平成27年(不)第5号及び第10号
中央医院/中央医院等不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y1(個人)、Y2会社(「会社」) 
命令年月日  平成30年1月29日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①組合による平成26年11月26日付け及び平成27年3月16日付けの団体交渉の申入れに対しY1院長が応じなかったこと、②組合による平成27年3月16日付けの団体交渉の申入れに対し会社が日程の変更を求めたこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、神奈川県労働委員会は、Y1院長に対し、誠実団交応諾、①について文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y1は、申立人による平成26年11月26日付け及び平成27年3月16日付けの団体交渉の申入れに誠実に応じなければならない。
2 被申立人Y1は、本命令受領後、速やかに下記の文書を申立人に手交しなければならない。
               

 私が、組合による平成26年11月26日付け及び平成27年3月16日付けの団体交渉の申入れに応じなかったことは、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると神奈川県労働委員会において認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
 
 平成 年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 殿
                           
Y1

3 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点①(Y1院長は、A2及びA3との関係で、労働組合法第7条の使用者に当たるか否か)。
 Y1院長と会社との間で看護補助者に係る有料職業紹介を内容とする契約が当初から文書で締結されることはなかったものの、B2医院において看護補助者が就労するに至った経緯、会社の作成する紹介状の記載内容やその提供の仕方、B2医院における面接の実施といった実態に照らすと、会社は職業紹介事業における紹介者であり、Y1院長は求人者であるとみるのが相当である。27-10号事件の救済申立て後に締結された有料職業紹介基本契約は、このような実態を反映したものとみることができる。そうすると、雇用関係はY1院長と看護補助者との間に成立することになるから、Y1院長はA2及びA3の使用者である。
 よって、Y1院長は、A2及びA3との関係で、労働組合法第7条の使用者に当たる。
2 争点②(Y1院長がA2を解雇したことは、組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たるか否か。)
 就労回数の減少や就労形態の変更は、会社がA2に平成26年11月の勤務表を提供し、同人が勤務日の減少に不満を持って組合に加入する前に実施されていることからすると、同人の就労態度によるものとみるのが相当である。また、A2は、組合加入後においても、看護師から注意を受けたり、B4事務長の事情聴取にも反省の姿勢を示していない。このように、組合加入の前後を通じてA2の就労態度に大きな変化が認められないことからすると、Y1院長による同人の解雇が組合員であることによるものとみることはできない。
 よって、Y1院長がA2を解雇したことは、組合員であることを理由とする不利益取扱いには当たらない。
3 争点③(Y1院長が組合による平成26年11月26日付け及び平成27年3月16日付けの団体交渉の申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるか否か。)
 Y1院長は、看護補助者とは雇用関係に立たないので、Y1院長には団体交渉に関する当事者適格がない旨主張する。しかし、Y1院長が使用者であり、上記の理由は正当なものとはいえない。
 よって、Y1院長が組合による平成26年11月26日付け及び平成27年3月16日付けの団体交渉の申入れに応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たる。
4 争点④(会社は、A3との関係で、労働組合法第7条の使用者に当たるか否か。)
 労働組合法第7条の使用者とは、一般に労働契約の一方当事者としての雇用主をいうものであるが、雇用主以外の事業主であっても、労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、そのような事項に関する限りにおいて、労働組合法第7条の使用者に当たるものと解するのが相当である。
 これを本件についてみると、会社は職業紹介を行っており、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんする地位にあることから、その限りにおいては雇用主には当たらない。
 しかし、会社は、B2医院において就労する看護補助者のため、日勤スケジュールや夜勤スケジュールを作成しただけでなく、各看護補助者の勤務の割振りを記載したシフト表や各看護補助者の勤務ごとの勤務日時を記載した勤務表をも毎月作成した上で、Y1院長に提供したり、各看護補助者に配付していた。また、会社は、各看護補助者に対する賃金の支払をY1院長に代わって行っており、Y1院長の支払が遅滞したときには立替払までしている。これらのことから、会社は、Y1院長と各看護補助者との間における雇用関係の成立をあっせんするという職業紹介の範囲を超えて、自らの紹介したA2やA3を含む看護補助者の勤務日やシフトの決定、賃金の支払等の基本的な労働条件ないしはそれに関連する事項について、部分的とはいえ雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配していたものと認められる。
 よって、会社は、A3との関係で、以上のような事項に関する限りにおいて、労働組合法第7条の使用者に当たる。
5 争点⑤(会社が組合による平成27年3月16日付けの団体交渉の申入れに対して日程の変更を求めたことは、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるか否か。)
 27.3.16要求書を受けた会社は、27.3.31文書において、組合の指定した日時には都合により応じられないものの、組合の指示に従い、組合の指定日の数日前から約1か月後にわたって多数の候補日を提示した上で、日程調整を求めている。このように、会社が団体交渉の実現に向けて真摯に対応しているにもかかわらず、組合は会社による日程調整の求めに何ら応えることもないまま27-10号事件の救済申立てを行っていることからすると、会社が団体交渉に応じなかったものということはできない。
 この点、組合は、27.3.16要求書で求めた文書回答をしなかった会社の対応を団体交渉の拒否に当たる旨主張する。
 しかし、使用者は団体交渉の前に組合の要求する文書を提出しなければならないという一般的な義務を負うものではないから、上記主張は採用できない。
 よって、会社が組合による平成27年3月16日付けの団体交渉の申入れに対して日程の変更を求めたことは、正当な理由のない団体交渉の拒否には当たらない。
掲載文献   

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