労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  新労委平成26年(不)第4号・平成27年(不)第2号
新潟県厚生農業協同組合連合会不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y連合会(「会」) 
命令年月日  平成30年1月17日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、会が①申立人組合の組合員に対し脱退勧奨等を行ったこと、②申立人組合を誹謗中傷する文書等の配布に協力したこと、③「人事に関する協定」に違反し、申立人組合の組合員勧誘活動を妨害したこと、④職員採用試験において、申立人組合及び申立外組合の組合活動に言及したこと、⑤新採用職員研修会において、申立人組合及び申立外組合の組合活動に言及したこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、新潟県労働委員会は、申立人からの脱退を勧奨する文書の配布が不当労働行為であることを確認するとともに、会に対し「人事に関する協定」に基づき従業員を採用する場合の採用日前の申立人組合への通知、①の一部及び③について文書の交付・掲示を命じ、その余の申立てを却下・棄却した。 
命令主文  1 被申立人のB2センターのリハビリテーション科技師長が、平成26年5月初旬に申立人の組合員に対して、申立人からの脱退を勧奨する文書を配布したことは、労働組合法第7条第3号に規定する不当労働行為であることを確認する。
2 被申立人は、申立人との間の「人事に関する協定」に基づき、従業員を採用する場合、当該従業員が配置される被申立人の施設を管轄する申立人の組合支部に対し、採用日前に当該採用を通知しなければならない。
3 被申立人は、以下の内容の文書を、本命令書受領の日から1週間以内に、申立人に交付するとともに、A2版の白紙に楷書で明瞭に黒い文字で同一内容を記載した文書を、被申立人の全ての事業所において従業員が見やすい場所に、10日間掲示しなければならない。
               
                         
年 月 日
 組合
  執行委員長 A1 様
会                         
代表理事理事長 B1

 本会のB2センターのリハビリテーション科技師長が平成26年5月初旬に貴組合の組合員に対し貴組合からの脱退を勧奨する文書を配布したこと及び本会が「人事に関する協定」に基づく採用予定者氏名の事前通知をしなかったことが、新潟県労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認定されましたので、今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
4 救済申立てのうち、被申立人が申立人を批判する文書等の配布に関与したとする部分については却下する。
5 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 会が、申立人組合の組合員に対して、同組合からの脱退を勧奨し、又は、同組合からの脱退届の提出に協力したことはあったか。仮にあった場合、当該行為は組合運営に対する支配介入に当たるか。(争点1)
(1)「B10病院栄養科におけるB11栄養科長の発言」等について
 いずれも、申立人組合から、会の職員の発言が具体の不当労働行為事実として主張されているところ、当該主張されている発言については、発言の事実を認定するに足る十分な立証があったとはいえず、認定することはできない。
 したがって、申立人組合の主張は認められず、不当労働行為は成立しない。
(2)B7病院での申立外組合説明会におけるB8の発言について
 リハビリテーション技師会は会の公式の組織ではなく、その副会長に人事異動に係る具体的な権限が与えられている事実も認められない。
 本件発言に関しては会から具体的な指示や要請があったとの立証はなされていないところ、リハビリテーション技師会の副会長たるB8の発言であるということをもって、本件発言に係る責任を会が負うべきとは認められない。したがって、この点において、申立人組合の主張は採用できない。
 他方、B8は、会の組織上リハビリテーション科技師長であるところ、リハビリテーション科技師長は、各病院の職員の採用等の立案を担当するとともに一般的指揮監督権を有する副院長を補佐する立場であり、必要に応じて主任又は科員を指揮監督するのであるから、使用者の利益代表者であるとはいえないものの、使用者の利益代表者に近接する職制上の地位にあると言うことができる。
 ところで、会と申立人組合の間には、継続的な労使紛争の発生が認められる。また、申立外組合の結成後においては、会が申立外組合とともに申立人組合の弱体化を画策しているとの認識のもと、申立人組合から会に対し、会が申立人組合からの脱退を勧奨しているとの抗議の申入れが行われるなどの状況があった。こうした状況の中で申立外組合は、労使紛争を繰り広げるよりも、労使で前向きな議論をすることを志向していたと評価できる。
 これらのこと及び審査の全趣旨を踏まえると、会は、少なくとも申立人組合と比して、申立外組合を好ましく思っていたことが推認される。
 このような状況の中で、会の利益代表者に近接する地位にある者による、一方の組合を勧奨し、又は否定するような行為が、上司としての立場で行ったとみられる要素を含んでいる場合には、使用者の意を体した行為と事実上推認されるのであって、使用者に不当労働行為の責任が帰属すると判定されるべきである。
 しかし、本件においてB8が発言をしたのは、申立外組合の説明会の場であり、その会場は、B8が所属しているB2センターではなく、B7病院であった。また、本件説明会においてB2センターリハビリテーション科技師長としてのB8の部下がいた等の事実については、立証されていない。
 これらのことを踏まえると、B8の本件発言内容の適否は別にして、本件発言が会の職名に基づき上司としての立場からなされたものと認めることは相当ではなく、本件発言に対して会に責任が帰属すべきとは認められない。
 以上より、申立人組合の主張は認められず、不当労働行為は成立しない。
(3)B8による申立外組合勧誘文書の配布
 B8は、使用者の利益代表者に近接した地位の者であると認められ、また、会は、少なくとも申立人組合と比して、申立外組合を好ましく思っていたことが推認される。
 B8による本件文書配布は、「リハビリテーション科技師長」との職制名を付して、部下を含むリハビリテーション科職員に対して行われたものであった。また、本件文書には「全員が同じC1組合に所属しているので、一括して均等に人事や待遇などをリハ科職場長が職制を通した中で検討できるようになるからです。」等の記載が含まれていた。
 このような記載は、文書を読む者に対して、B8に人事に影響を及ぼす権限があり、かつ、所属する労働組合と人事や待遇などが関連することを推測させ得る表現であり、上司としての立場で、申立人組合からの脱退を促し、申立外組合への勧誘を行ったものと言わざるを得ない。
 すなわち、B8は、当時申立外組合の副執行委員長であり、当該文書配布が申立外組合の組合活動として行われた側面を有することは否定できないとしても、本件文書の記載には職場長としての立場を前提とした記載が含まれているのであり、上司としての立場からされた記載と見ざるを得ないものが含まれているのである。
 したがって、B8による当該文書の配布は、上司としての立場で行ったとみられる要素を含んでおり、会の意を体した行為と事実上推認されるため、その行為に対しては、会が責任を負うべきである。よって、会による労働組合法第7条第3号の支配介入が成立する。
(4)B6センターにおけるB4総務課主任の発言等について
 本件において行為者として主張されているB4は、総務課主任であるところ、総務課主任は、直属上級役付の指令を受けて、その主任業務を処理するのであって、特段の権限が認められない。このような立場の職員の行為については、当該行為にあたり会の指示又は要請があった場合に、会が責任を負うべきである。しかし、B4総務課主任の行為に対して、会の指示又は関与があったことについて、具体的な事実の立証はされておらず、かかる事実は認定できない。
 したがって、不当労働行為は成立しない。
(5)申立人組合からの脱退届提出に対する会の関与について
 申立人組合の主張のうち、B6センター総務課における脱退届の管理及び脱退手続きへの関与については、これらを示す具体的な事実が立証されておらず、認められない。また、脱退届の提出にあたり、総務課がその管理する切手を貼って郵送したとの主張についても、事実を認定するに足る十分な立証があったとは認められない。
 他方、B14病院総務課において業務で使用するパソコンの中に脱退届が保存されていた事実及び脱退届の提出にあたり病院の封筒やゴム印が使用されていた事実は認められる。
 しかし、これらの行為が、会の利益を代表する者や会の関与のもとで行われていたとの点について、具体的な事実の立証はされておらず、認定した事実のみをもって、会が脱退届の提出に関与していたとの申立人組合の主張を採用することはできない。
 以上より、不当労働行為は成立しない。
2 会が、申立人組合を批判する文書などの同組合員への配布に関与したとの申立ては、労働組合法第27条第2項に規定する期間内に行われたといえるか。当該申立てに係る事実はあったか。仮にあった場合、当該行為は組合運営に対する支配介入に当たるか。(争点2)
 申立人組合は、平成25年10月30日の会による文書回答までの行為を一連の行為として、労働組合法第27条第2項の「継続する行為」に該当すると主張するが、本件において具体の不当労働行為として主張されている行為は、申立人組合を誹謗中傷する文書配布であり、これは、平成25年10月30日の会の回答とは、性質を異にするものである。したがって、当該回答までの事実を一連の「継続する行為」とはいえず、申立人組合の主張は採用できない。
 以上より、本件文書配布に係る救済申立ては、労働組合法第27条第2項の申立期間を徒過していることが明らかであり、申立人組合の主張する事実等その余を検討するまでもなく、却下するのが相当である。
3 会が、新規採用者への申立人組合の組合加入勧誘活動を妨害したことはあったか。仮にあった場合、当該行為は組合運営に対する支配介入に当たるか。(争点3)
 本件においては、会が、本件協約に係る疑義の解消に当たっては、労使間の協議が必要であると認識していたにもかかわらず、申立人組合と何ら協議を経ることなく、申立外組合の結成を前後して、本件協約に基づく新採用者に係る通知の時期を採用日前から採用日後に変更し、その変更を前提としてさらに通知の対象者を申立人組合の組合員に限定したといえる。これらは、会の解釈の適否にかかわらず、会が本件協約を無視又は軽視して一方的に行ったものと言わざるを得ず、労働組合法第7条第3号の支配介入が認められる。
4 会が、職員採用試験個人面接試験の実施前に、受験者に対して、申立外組合に加入するよう誘導したことはあったか。また、新採用職員研修会において、新採用職員に対して、申立外組合に加入するよう誘導したことはあったか。仮にあった場合、当該行為は組合運営に対する支配介入に当たるか。(争点4)
 いずれも、申立人組合から、会の職員の発言が具体の不当労働行為事実として主張されているところ、当該主張されている発言については、発言の事実を認定するに足る十分な立証があったとはいえず、認定することはできない。
 したがって、申立人組合の主張は認められず、不当労働行為は成立しない。 
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