労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成28年(不)第53号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  平成30年1月16日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   本件は、組合員が、以前の派遣先である会社でパワーハラスメントを受けたとして、これに係る会社の対応等について、組合が団体交渉を申し入れたところ、会社が応じなかったこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1)会社はA2組合員の労働組合法上の使用者に当たるか。
 会社におけるA2組合員の業務についてみると、A2組合員の業務は電話による会社の製品に関する顧客対応であり、会社の指導係であるマネージャーは当該電話対応の業務についてA2組合員に指導を行ったのであるから、A2組合員はその業務に関し、会社の従業員であるマネージャーの指揮監督下に置かれており、会社がA2組合員の労務提供の態様、作業環境等を決定していたといえるから、業務指示、指導に関する限りにおいて、労働組合法第7条の使用者に当たるものといえる。
 また、厚生労働省告示「派遣先が講ずべき措置に関する指針」において、派遣先が適切かつ迅速な処理を図るべき苦情に挙げられている事項には、パワハラに関する事項が含まれている。
 そうすると、会社は、A2組合員の派遣先であって、直接の雇用関係にはないものの、自ら決定することができる業務指示、指導に関する限り、A2組合員の労働組合法上の使用者に当たる。したがって、A2組合員の労働組合法上の「使用者」に該当しない旨の会社主張は、採用できない。
(2)本件協議事項が義務的団交事項に当たるか
 本件協議事項は、A2組合員が派遣先である会社で受けたとする本件パワハラに係る会社の対応と責任等についてであり、これは、労働条件に関する事項に当たるとともに、使用者に処分可能な事項であるから、義務的団交事項といえる。したがって、本件協議事項については、会社は正当な理由がない限り団交に応じなければならない。
(3)本件団交拒否の正当な理由について
 会社は、本件団交拒否の正当な理由として、①過去の権利義務に関する争いは過去の不法行為の有無にすぎず、むしろ司法手続により扱われるべき事項である旨、②仮にそうでないとしても、本件団交申入れは、A2組合員の勤務終了から長期間経過後になされ、これを正当化する事情もない旨主張するので、それそれについて、以下検討する。
 まず、会社主張①についてみる。
 A2組合員がパワハラと主張するマネージャーの指導は、派遣期間内である平成25年8月6日であるが、本件申立ての原因事実と対象は、平成25年8月6日の会社の不法行為の有無ではなく、本件団交拒否が不当労働行為の救済対象となるか否かであるから、会社主張①はその前提を欠き理由がない。
 次に、会社主張②についてみる。
 平成25年8月31日にA2組合員の派遣期間が終了し、組合は、同28年5月24日に、会社に対して本件団交申入れを行ったことが認められ、A2組合員の派遣期間終了後、本件団交申入れまでに約2年9か月が経過している。
 一般に労働契約関係にあった企業と労働者間において、労働契約関係が終了した場合であっても労働契約関係の終了そのものが争われていたり、退職後相当期間内に退職の条件について交渉を求められたりした場合には、当該企業は、近い過去に存在した労働契約関係の清算を求められているものとして、労働契約関係がすでに終了し、それゆえに使用者性がないことを理由として団交を拒否することはできないとされる一方、労働契約関係終了後、労働契約関係存続中に発生した問題について交渉の対象とされることなく長年月を経過してしまったような場合には、当該企業は、すでに使用者としての地位を有しなくなったと判断されることがあるとされているところ、この理は、本件のような直接の労働契約関係にない労働組合法上の使用者と労働者との間にも当てはまるというべきである。
 本件について、これをみると、A2組合員が、約2年9か月の間、会社に対して本件パワハラに関し、何らかの交渉を求めることが全くなかったことは組合も認めるところであり、このような事実経過に照らすと、本件団交申入れを行った時点において、会社は、既に労働組合法上の使用者の地位を喪失しているといえ、本件団交申入れは、時期を逸したものということができる。
(4)結論
 以上のとおりであるから、会社は、本件団交申入れに関して、A2組合員の労働組合法上の使用者に当たり、本件協議事項は義務的団交事項であるといえるものの、本件団交申入れ時点においては、既に労働組合法上の使用者性を喪失しており、本件団交申入れは時期を逸したものであるから、組合の本件団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否とはいえず、本件申立ては棄却する。 
掲載文献   

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