労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  埼労委平成29年(不)第1号
開智学園不当労働行為審査事件 
申立人  X1組合、X2組合 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  平成29年12月28日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   本件は、組合が非常勤講師の雇止め又は無期契約移行に関する「労働契約法の改正に対処する方針」(以下「本件方針」という。)の撤回等を議題とする団体交渉を申し入れたところ、法人が非常勤講師である組合員の氏名を一人でも明らかにするよう求めて、団体交渉に応じなかったこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、埼玉県労働委員会は、法人に対し、団交応諾、文書の手交及び履行報告を命じた。 
命令主文  1 被申立人法人は、申立人X1組合からの平成29年3月25日付け及び同年5月29日付けの各団体交渉申入れについて、申立人が非常勤講師である組合員の氏名を明らかにしないことを理由として、これを拒否してはならない。
2 被申立人法人は、本命令書受領の日から7日以内に、下記内容の文書を申立人X1組合及び同X2組合に手交しなければならない(下記文書の中の年月日は、手交する日を記載すること)。
               
                      
平成 年 月 日
 X1組合
  執行委員長 A1 様
 X2組合
  中央執行委員長 A2 様
法人                      
理事長 B1 印

 当学園が、X1組合からの平成29年3月25日付け及び同年5月29日付けの各団体交渉申入れを拒否したことは、埼玉県労働委員会において労働組合法第7条第2号の不当労働行為であると認定されました。
 今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
3 被申立人法人は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。 
判断の要旨  1 申立人組合に申立資格はあるか。(争点1)
 法人は、X1組合が労働組合法第5条第2項第7号に定める「職業的に資格がある会計監査人」の住所・氏名を明らかにし、同人による証明書を提出しない限り、却下は免れない、すなわち、X1組合に申立資格はない旨主張する。
 しかしながら、第5条第2項では、労働組合の規約には同項に掲げる規定を含まなければならないことを規定しているが、法人の主張するような会計監査人の住所・氏名の明示及び証明書の提出までは求めていない。そして、X1組合の規約は、同条第2項に適合する規定を具備しており、当委員会は労働組合資格審査において、この点を含め、X1組合を同法第2条及び第5条第2項に適合する労働組合であると認め、その旨を決定したところである。
 よって、法人の主張は認められない。
 平成29年3月25日付け及び同年5月29日付けの団体交渉申入書には、作成名義人としてX1組合だけの名称が記載されており、X2組合との連名にはなっていない。しかしながら、不当労働行為の救済申立てをなし得るかどうかは、救済を受けることについて正当な利益を有するかどうかが判断の基準となるべきである。そして、X1組合の上部団体であるX2組合は、下部組織であるX1組合の消長と団体交渉の経過に利害と責任を有するのであるから正当な利益を有するというべきである。したがって、X2組合には申立資格が認められる。
2 申立人が申し入れた団体交渉に対し、被申立人が、非常勤講師である組合員の氏名を一人でも明らかにするよう求めて、団体交渉に応じなかったことは、労働組合法第7条第2号で禁止している団体交渉拒否に当たるか。(争点2)
 非組合員である労働者の労働条件等に関する問題は、当然には義務的団交事項に当たるものではない。しかし、それが将来にわたり組合員の労働条件等に影響を及ぼす可能性が大きく、組合員の労働条件等との関わりが強い事項については、これを団交事項に該当しないとするのでは、労働組合法第7条第2号の趣旨を没却することになるから、義務的団交事項に当たると解すべきである。
 この点、法人は、非組合員の労働条件が組合員の労働条件・待遇に密接に関連し、重要な影響を及ぼす場合に限り義務的団交事項になる旨主張する。しかしながら、義務的団交事項は、上記のとおり「組合員の労働条件等に影響を及ぼす可能性が大きく、組合員の労働条件等との関わりが強い事項」であれば十分であり、「労働条件等に重要な影響を及ぼす」ことまでは求められていない。
 法人は本件方針により、5年を超える契約更新をする非常勤講師を選別しようとしているのであるから、現在結んでいる雇用契約を変更しないとしても、今後、5年を超える非常勤講師の契約更新者は限定されることが予測される。そして、これまで非常勤講師は自らの意思に反して雇止めされることはほとんどなく、長期にわたって勤務し続けてきたのであるから、本件方針の策定によって、非常勤講師の雇用が不安定になることが予測される。
 教諭は、新任の非常勤講師に対して、着任時だけではなく、時期ごとに法人独自の方針等を指導する必要が生じるし、その者が新卒者であれば、基本的な技能の指導も行うことになるといえる。また、非常勤講師が雇止めされる場合、転職先の都合に合わせて法人を急きょ退職することも想定される。その場合、法人が後任を採用できないときには、教諭のコマが増えることになる。
 教諭には所定の授業時間以外にも放課後の受験対策の授業、授業の準備、採点、生徒の生活指導、連絡、相談援助、各種会議、保護者対応、部活動など様々な業務がある。また、一般に学校には年間を通じて各種行事があって、教諭がそれを分担しているので、少なくともそれぞれの担当する行事の繁忙期には所定勤務時間を超えて勤務することがあることが十分予想される。よって、本件方針により、非常勤講師の雇止めが増えた場合、新任の非常勤講師への指導、あるいはコマ数の増加によって、教諭は所定勤務時間内の労働密度が高くなったり心理的なストレスが増したりするだけではなく、新たに時間外勤務をせざるを得なくなることも想定される。
 本件方針により、将来にわたり非常勤講師の入れ替えが増加することによる新任者への指導や援助業務の増加が想定され、教諭の労働強化につながる可能性が大きいため、本件方針は教諭の労働条件等との関わりが強いものと考える。よって、X1組合に教諭の組合員は存在するのであるから、本件方針の撤回を求める要求事項は義務的団交事項であるといえ、法人はX1組合の団体交渉申入れに応ずる義務がある。
 したがって、X1組合が平成29年3月25日付け及び同年5月29日付け団体交渉申入書において要求した事項は、義務的団交事項に該当するにもかかわらず、法人は非常勤講師である組合員の氏名を一人でも明らかにするよう求めて、団体交渉に応じなかったのであるから、正当な理由のない団体交渉拒否といえ、X1組合に非常勤講師が在籍するかどうかを判断するまでもなく、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に当たる。 
掲載文献   

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