労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  大阪府労委平成27年(不)第33号
不当労働行為審査事件 
申立人  X組合(「組合」) 
被申立人  Y法人(「法人」) 
命令年月日  平成29年11月24日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、①申立人が被申立人に対し、組合員1名の業務不利益変更に関する団体交渉を申し入れたところ、被申立人は、同人に対し、「勤務等改善指導書」を手交したこと、②同人の出身専門学校の教員と面談をさせたこと、③その後の団体交渉において、同人と当該専門学校の教員との面談の内容について事実確認の上文書で回答することを約したにもかかわらず回答しなかったこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、大阪府労働委員会は、会社に対し、①及び②について文書の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。

年 月 日
 組合
  執行委員長 A1様

法人         
理事長 B1   

 当法人が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。


(1)平成27年1月24日、当法人が、貴組合員A2氏に対し、「勤務等改善指導書」を手交したこと。
(2)平成27年2月17日、当法人が、貴組合員A2氏に、同人の出身専門学校の教員と面談をさせたこと。
2 申立人のその他の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 争点1-(1)(法人が、A2組合員に対し、27.1.24指導書を手交したことは、組合に対する支配介入に当たるか。)について
 27.1.24指導書には、仮にA2組合員が署名捺印した場合、法人が主張する本件シフト変更の理由に同人が納得したと認めたに等しい、ひいては本件シフト変更を承諾したものと理解されてもやむを得なくなるような記載が含まれていたといえる。
 ところで、27.1.24指導書が、法人からA2組合員に手交されたのは、本件団交申入れのわずか4日後のことであるから、このような時期に法人がA2組合員を呼び出し、A2組合員から同行を依頼されたA3書記長の同席を認めず、本件シフト変更に対する承諾書ともいえる内容を含んだ27.1.24指導書を手交したことは、法人が、本件シフト変更を維持するために、組合を排除してA2組合員と個別に交渉し、あるいは予め同人の承諸を得ることで団交を優位に進める材料を得ようとした行為とみられてもやむを得ないのであって、組合の交渉活動を阻害し、組合の団交権の形骸化をもたらす行為であるとみざるを得ない。
 また、法人が、A2組合員に対し27.1.24指導書を手交したことは、A2組合員に対すると同時に、構成員たる組合員に対し、組合を通じて使用者と対等な交渉ができなくなるとの懸念を惹起させる恐れがあるばかりか、組合員の組合に対する期待を喪失させ、ひいては組合の弱体化を招く恐れがあるといわざるを得ない。
 以上のとおり、27.1.24指導書の手交は、組合が本件団交申入れを行い、A2組合員の本件シフト変更に係る団交を控えていた段階で、法人が、組合の頭越しにA2組合員に行ったものであり、組合の団交権を軽視ないし無視し、組合の弱体化を招く恐れがある行為といわざるを得ないのであって、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
2 争点1-(2)(法人が、A2組合員に、教員と27.2.17面談をさせたことは、組合に対する支配介入に当たるか。)について
 法人が、新任入職者のことでその出身専門学校の教員に本件施設への来所を依頼した前例はない上、27.2.17面談に係る来所依頼について、組合に事前に伝えられていたとの事実の疎明はない。
 したがって、法人が、本件団交を控えた時期に組合に予告なく、A2組合員に、教員と27.2.17面談をさせたことは、A2組合員個人に対し事前に働きかけることで、団交を優位に進める材料を得ようとした行為とみられてもやむを得ない行為であり、組合の存在そのものを無視し、組合の団交権を形骸化させるものであるといわざるを得ない。
 また、本件団交を控えた時期に、法人がA2組合員に予告なく同人を呼び出して、同人の望まない面談をさせたことは、同人に対して精神的重圧感を与えたであろうことは否めず、このような行為自体が強い威嚇的効果を有していると考えられるのであり、組合員の組合に対する期待を喪失させ、ひいては組合の弱体化を招く恐れがあるといわざるを得ない。
 以上を総合すると、法人が、A2組合員に、教員と27.2.17面談をさせたことは、組合の存在そのものを無視し、A2組合員に対する強い威嚇的効果を有する行為であって、組合の団交権を形骸化させるとともに、組合の弱体化を招く恐れのある行為といわざるを得ないのであって、組合に対する支配介入に当たり、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為である。
3 争点2(本件団交において、法人が組合に対し、27.2.17面談の内容について確認した上で報告する旨述べた後の法人の対応は、不誠実団交に当たるか。)について
 法人は、27.2.17面談の場でどういうふうな会話があったのかということについて文書で回答せよという組合の要求に対し、本件回答書において一定回答を行っているといえる上、法人に思慮の足りない点があったとして謝罪していることが明らかである。
 そうすると、法人の本件回答書の内容自体を捉まえて不誠実な対応であるとまでいうことはできない。また、その他、27.2.17面談に係る法人の対応について、具体的に法人に不誠実な点があったと認めるに足る事実の疎明もない。
 以上のことからすれば、本件団交において、法人が組合に対し、27.2.17面談の内容について確認した上で報告する旨述べた後の法人の対応に、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為があったとは認めることはできないから、この点に関する組合の申立ては棄却する。 
掲載文献   

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