労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  岡委平成28年(不)第1号
アサノ相互運輸外1社不当労働行為審査事件 
申立人  X1(個人)、X2組合(「組合」) 
被申立人  Y1会社、Y2会社 
命令年月日  平成29年11月9日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   本件は、被申立人Y1会社が、①申立人組合の組合員である申立人X1に対し、LPガスの配送業務の仕事量について差別的な配点をしたこと、②X1組合員に対し、Y1会社の親会社である被申立人Y2会社への出向を命じたこと、③X1組合員に関する要求事項について、組合がY1会社に申し入れた団体交渉に不誠実に対応したこと、④組合がY2会社に申し入れた団体交渉を拒否したこと、が不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件で、岡山県労働委員会は、Y1会社に対し、バックペイ、出向命令の撤回及び原職復帰、Y2会社に対し団交応諾及び④について文書の手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人Y1会社は、申立人X1に対し、平成26年8月分支給以降の同人の賃金について、組合員に対する不利益取扱いがなければ得られたであろう賃金相当額と既支払額との差額を支払わなければならない。
2 被申立人Y1会社は、申立人X1に対する平成27年12月29日付け出向命令を撤回し、同人に資格取得の機会を与えた上で、原職相当職に復帰させなければならない。
3 被申立人Y2会社は、申立人組合が申し入れた申立人X1の労働条件を議題とする団体交渉に応じなければならない。
4 被申立人Y2会社は、申立人組合に対し、次の文書を速やかに手交しなければならない。

年 月 日
 組合
  執行委員長 A2 殿

Y2会社           
代表取締役 B1   

 当社が、平成27年12月21日に貴組合から申し入れられた団体交渉に応じなかったことは、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると、岡山県労働委員会において認定されました。
 今後このような行為を繰り返さないようにいたします。
         (注:年月日は文書を手交した日を記載すること。)
5 申立人らのその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 Y2会社は、労働組合法第7条に規定する使用者に該当するか(争点1)。
 Y2会社がY1会社の親会社であることに争いはなく、Y2会社がY1会社の株式の相当割合を保有していること、Y1会社の役員が全てY2会社の役員であること、Y2会社とY1会社の本社所在地等は同一であること、Y1会社のLPガス配送にはY2会社からの委託が一定程度を占めていること、Y1会社従業員の賃金などの労務管理はY2会社が行っていること、Y1会社従業員の日々の業務の一部はY2会社従業員が指示していること等を総合的に判断すると、Y1会社がY2会社から独立性があるとみることは困難であり、Y1会社従業員の労働条件の決定についてもY2会社から全面的に独立しているものとはいえない。
 したがって、Y2会社はY1会社従業員の基本的な労働条件等について、Y1会社と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあるといえ、Y2会社はY1会社従業員との関係において、労働組合法第7条に規定する使用者に該当する。
2 別件和解後に、X1組合員の配点量に適切さを欠く状態にあるといえるか(争点2)。
  Y1会社及びY2会社による、X1組合員に対する配点量の変更及び出向命令は、労働組合法第7条第1号に規定する不利益取扱いといえるか(争点3)。
①B8センター長の配送分については、B4センターの廃止によりX1組合員の給与が減少している中で行われたものであり、X1組合員が配送できる仕事であるにもかかわらず、B8センター長が恒常的に配送を行ったことにより、X1組合員の給与を減少させたとしか考えられない。つまり、B8センター長の配送分については、配点量に適切さを欠く状態にあったといえる。
②X1組合員の出向後の業務は、一斗缶つぶしや倉庫の清掃、草むしりなどであり、X1組合員には他の従業員に対する「見せしめ」と感じられるところであり、精神的な不利益があるものといえる。
 また、出向後の月平均給与は別件和解時の平成26年7月支給分の給与232,638円を下回っており、出向後の給与が経済的に不利益なものではないとはいえない。
③LPガスをめぐる状況の変化への対応について会社にも正当の事由が同時に存在するとしても、組合に加入し労働条件の改善を求めて団体交渉を行うなどの正当な組合活動を行い、また、組合の支援を受けて未払い残業代の請求、労働基準監督署への申告、訴訟の提起を行ったことが、会社のX1組合員に対する嫌悪感情を増幅させ、これが決定的な動機となり不適切な配点すなわち配点差別や出向という不利益取扱いに結びついたとみるのが相当である。
 以上のとおり、本件出向前からB8センター長が配送することにより配点差別を行い、本件出向を命じ、給与を大幅に減額したことは不利益取扱いと評価せざるを得ない。また、本件出向に際し他の従業員に比して資格取得などを奨励せず、組合の求めた社内での配置転換を真摯に検討することなくX1組合員が同意してない出向を命じたことや本件出向後の業務と出向前の業務の差違を考慮すると、これら不利益取扱いは、会社が正当行為又は裁量行為に藉口して、不当労働行為意思を持って行ったものと推認せざるを得ない。
④別件和解後の平成26年7月11日から平成27年12月末までのX1組合員の給与の減額は、会社の管理監督者的立場にあったB8センター長が行った配送業務については、X1組合員に対する配点差別であったものというほかなく、不当労働行為意思を持って行われたものであり、労働組合法第7条第1号に規定する不利益取扱いにあたるものである。
 次に、平成28年1月からのX1組合員への出向命令は、卸部門の廃止によることよりもX1が組合員であることを決定的動機とするものであるから、労働組合法第7条第1号に規定する不利益取扱いに当たり、本件出向命令は撤回されなければならない。
3 平成27年12月17日に行われた団体交渉におけるY1会社の対応は不誠実であり、労働組合法第7条第2号に規定する団体交渉拒否であるといえるか(争点4)。
 平成27年12月17日に、X1組合員の出向を巡って第8回団体交渉が行われ、会社は卸部門の統廃合についての説明を行い、組合は配置転換は会社の説明が尽くされた後に行うべきだとする旨の発言を行っている。
 また、組合は、会社の説明は原資料に基づかず、不正確なものであるとするが、卸部門の廃止については、平成27年11月17日の第7回団体交渉で、会社は11月6日付けの回答書により卸部門の統廃合について説明し、平成27年12月28日の第9回団体交渉で会社は出向先の待遇について資料を作成して説明し、賃金について組合の要求額を求めている。
 そして、平成28年1月25日の第10回団体交渉でも、会社は卸部門の統廃合について資料を作成して説明し、X1組合員の出向後の給与等について具体的に協議したい旨を述べたが、組合は出向の不当労働行為性を主張して譲らず、双方合意の上で交渉が決裂したものである。
 これらの経緯から、第8回団体交渉が不誠実であり形骸化団交であったとまでは評価できず、第10回団体交渉において交渉は行き詰まったものと認められる。
 したがって、団体交渉におけるY1会社の対応は、労働組合法第7条第2号の不誠実団体交渉には該当しない。
4 平成27年12月21日に組合が申し入れた団体交渉にY2会社が応じなかったことに正当な理由はなく、労働組合法第7条第2号に規定する団体交渉拒否であるといえるか(争点5)。
 Y2会社は、X1組合員の労働組合法上の使用者に該当するものである。また、Y1会社はX1組合員にY2会社への出向について資料に沿って説明しているのであるから、平成27年10月5日の時点において、Y1会社とY2会社との間でX1組合員の出向の労働条件について合意が形成されていたといえる。以上から、団体交渉申入れの同年12月21日においてX1組合員の労働条件はY2会社にとって処分可能な事項と認められるものであり、当該申入れを拒否することに正当な理由はなく、労働組合法第7条第2号の団体交渉拒否に該当する。
5 X1組合員に対する不利益取扱いは、組合の弱体化を図り、労働組合法第7条第3号に規定する支配介入といえるか(争点6)。
 X1組合員に対する不利益取扱いがあったことは認められる。このことに対し、組合らは、特定の組合員を経済的に圧迫することにより、組合内部の動揺や組合員の脱退が図られたとするが、X1組合員は組合役員ではなくその影響は限定的でしかなく、X1組合員への不利益取扱いにより組合の運営に介入しようとの意図を持っていたとまでは評価できない。
 また、組合らは、他の組合員に対しても不利益取扱いが企図されたが実施されなかったとも主張するが、これを証明するに足りる証拠はなく、具体的に組合活動に影響した事実及び影響するおそれがあった事実は認められない。
 したがって、会社らの行為は、労働組合法第7条第3号に規定する支配介入とまではいえない。 
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